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第23話 幹部襲撃編②

 オンボロアパート『スミヤス荘』。今日も天気が良く、平和な時間が流れていた。魔王の刺客カルマは玄関をほうきで掃いて掃除をしていた。


『ピロリロリン♪ ピロリロリン♪』


「ま、魔王様からの通信……!」


 カルマはほうきを放り投げ、慌てて自室へと戻り、首からぶら下げている宝石から魔王の映像を投影する。


『カルマよ。勇者ナイナへ幹部が襲撃する日時が決まった』


 カルマは冷や汗を流す。ずっと心配でたまらなかったことがついに進展してしまったのである。


『明日の午後3時。勇者ナイナの行動次第だが、幹部がその場の判断で勇者に襲撃を仕掛ける』


『大体そのくらいの時間に勇者の尾行を開始しなさい。そして、戦いを観察するのだ』


「……は、はい。分かりました」


 煮え切らない気持ちを抱えるカルマの様子が気になったのか、魔王はひとつ付け加える。


『良いか? くれぐれも自分が魔族だということを、勇者に知られてはならぬぞ……?』


『もしバレたら、お前はもう、ここにはいられなくなる』


「そ、そんな……!?」


 以前は帰りたくてしょうがなかったカルマだが、今はこのアパートにかなり愛着が湧いてしまっている。そして、勇者ナイナのことが大好きになってしまった。アパートから去ることを想像したら悲しくてたまらなくなったのだ。


『迂闊な行動は慎みなさい。カルマはしっかりと自分の役目を果たせばそれで良いのだ』


 そう言い終えると、魔王はさっさと通信を切ってしまった。


「ま、魔王様……!! あ、あぁ……つ、通信切れちゃった……」


「ど、どうしよう……うぅっ……。ナ、ナイナさん……」


 カルマは不安に押し潰されそうになる中、魔王の言葉をよく思い出し、状況を整理しようとする


「魔王様は勇者は強いから心配するなって言ってた……。だからきっと大丈夫……」


 もうカルマは何がなんだか分からなくなっているが、とにかく思考をポジティブな方へ切り替えるしかなかった。


「ほうき片付けないと……」


 カルマはさっき投げ捨てたほうきのことを思い出し、それを回収しようと再び表へ出た。


「あ、カルマさん! こんにちは!」


「ナ、ナイナさん……!」


 偶然、ナイナが剣と盾を構えながら部屋から出て来た。以前より打ち解け、元気良く挨拶をしてきたナイナに、カルマは胸が締め付けられるような気持ちになった。


「こ、これからどこか行くんですか……? 」


「まぁ、いつものスライム狩りだよ……。

 私にはこれしかやることないから……」


 苦笑いを浮かべるナイナ。やっぱり笑顔が可愛いとナイナの姿に少し癒やされていた。


「じゃあね! カルマさん……!」


「は、はい。お気を付けて……」


 ナイナの背中を手を振りながら見送るカルマ。明日のことを考えると心配がぶり返してきてしまった。果たして、ナイナの背中を明日以降も無事に見ることが出来るのか……。そんな気持ちでいっぱいになった。


 カルマはほうきを回収すると、部屋の中へと戻っていった。


   ◇


 そして、運命の日が訪れた。


「……ここが勇者ナイナの住む

 ボロアパートか……。確かに

 とてもボロいな……」


 厳つい声で独り言を喋っているのは魔王が送り込んだ幹部の男だ。アパートの外観がかろうじて確認出来る場所で身を潜め、襲撃の時間が訪れるのを懐中時計で確認しながら待っていた。

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