表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/40

第22話 幹部襲撃編①

 スミヤス荘102号室で、魔王の命令により、勇者の観察を続ける魔族のカルマ。今日も今日とて、魔王はカルマと通信の真っ最中であった。


「カルマよ。最近どうだ。元気か? ちゃんとご飯は食べているか? 魔王様からの仕送りは足りているか?」


『は、はい。魔王様。お陰様で。アパートの人達ともどんどん仲良くなれて嬉しいです。えへへ……』


「そうかそうか。うんうん偉いぞ。ちゃんとご近所さんと仲良く出来て。さすが我が精鋭部隊の一員だ」


 アパートで真面目に一人暮らしをするカルマ。そんなカルマを実の娘のように褒める魔王。実際に魔王はカルマのことを偉いと思って褒めてはいるのだが、それはちゃんとやって欲しいことがあるからである……。


「あの、それで、どうだ? 勇者は? 何か情報は分かったのか?」


『そうですね……。そういえば、最近分かったことがあります』


「ほ、本当か!? よ、よし! では何が分かったのか魔王様にしっかりと伝えてください」


 魔王はとにかく勇者が怖い。いつ誰に自分の世界征服の邪魔をされるか恐れているのだ。そんな勇者の新しい情報。それはもう気になってしょうがなかった。


『勇者ナイナさん。彼女は貧乏で、いつもこの世に絶望したような言葉を繰り返し呟いていますが……』


『以前、ワタシがこのアパートが事故物件になったと思って怯えていた時があったことを、魔王様は覚えていますでしょうか……?』


「あ、あぁ。あの時か。よく覚えてるぞ。お家に帰られちゃうのかと思って、本気で心配していたからな……」


『それで、その時、魔王様の助言通り、勇者に相談しに行ったのですが……』


 魔王は一体どんな情報が飛び出してくるのかと、身を乗り出しながらカルマの話に耳を傾けている。


『普段暗くて頼りなさそうなんですが、でも、いざとなると凄く優しくて。困ってる人のために何が出来るのか、いつも全力で考えてくれています』


『以前、通信機能付きのこの宝石を落とした時も、親切に拾ってくれて届けてくれました……!』


『ネガティブですが、私と話す時はいつも笑顔になってくれて……。笑顔がとても素敵で可愛いです。私はナイナさんのことが大好きです』


『以上です』


「…………え?」


 カルマから得られた情報。それは、勇者は凄く優しくて、笑顔が素敵な可愛い人で、カルマは彼女のことが大好き。ということであった……。


「オ、オホン。そ、そうか……。え、えっと、カルマよ……。もうちょっと弱点みたいなこととか、どんな技を持っているかとか……。そういうことは分からないですか?」


『うーん……』


 しばらく考え始めるカルマ。全く心当たりがなく困っている様子であった。


『私、ナイナさんが戦ってるところあんまり見てなくて……。だから全然分かんないですね……』


「そ、そうか……。なるほど……」


 魔王は少し考え、監視体制に少し変化を与えようとしていた。


「では、今度、魔王様直属の部隊の幹部の中から適当な者を、勇者ナイナの元へ送り付けます」


「そして、彼女の戦いを観察して、弱点や必殺技などを探りなさい」


『……えっ!?』


『か、幹部の人をナイナさんの元に送っちゃうんですか……!?』


「まぁ、カルマよ。落ち着きなさい。勇者は強い。幹部の1人や2人ではそう簡単にやられるような存在ではないのだ。だから大丈夫だ」


『そ、そうなんですか……?』


「幹部の予定を調整し、日程が決まり次第、ナイナの元に襲撃専門の刺客を送ります」


「事前にカルマに知らせるので、その時は勇者の戦いがしっかりと観察出来る場所でスタンバイし、幹部との戦いを見届け、それを私に伝えてください」


「……ということだ。分かったか?」


『は、はい……分かりました……』


「よし。良い子だ。では頼んだぞ」


 カルマとの通信を切ると、魔王は大きな溜め息をついた。


「大丈夫かな、カルマ……。あの子は本当にいろいろと世話が焼けるからな……」


   ◇


「うぅ……幹部がここに来るなんて……ど、どうしよう……」


 予想外の話の流れに動揺するカルマ。幹部といえばもちろん強い。そんな相手と大好きな勇者ナイナが戦う。カルマの心の中は一気に不安でいっぱいになっていた。


「ナ、ナイナさん……本当に大丈夫なのかな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ