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第12話 事故物件編④

 スミヤス荘103号室。そこに住む魔女っ子アイリスは、爆発が起きた後、散らかった部屋を片付けていた。


「ふぅ……まぁ、こんなもんかしら」


 部屋が片付いたのは良しとして、真っ黒焦げになった台所はどうにもならないと罪悪感を抱いていた。


「ちょっと焦っていろいろ入れすぎたわね……。勢いで上手くいくと思ったのに……」


 溜め息をつくと、そろそろ夕食の買い出しにでも行こうと、支度を済ませ、玄関から外に出ようとした。


「うん……?」


 ドアノブをガチャガチャと何度か捻る。しかしドアが開かない。鍵を開けたのは確認したので、当然鍵は掛かっていない。


「えっ!? 嘘!? な、なんで……!? ド、ドアが開かない……!」


「か、鍵も掛かってないのに……。ば、爆発の衝撃で建て付けが悪くなっちゃったのかしら……」


 ドアが開かなくなり、アイリスは仕方なく窓から出ようとした。


「えっ……?」


 窓も開かない。鍵はやはり掛かっていない。窓まで壊れてしまったのかと、アイリスは半ばパニックになっていた。


「ど、どうしようどうしよう……! そ、そうだ……! お、お隣さんに助けてもらおう……!」


 アイリスは自分の状況に気付いてもらおうと、必死で壁を叩き始めた。


「すみませーん! なんかドアとか窓が壊れてしまったみたいで……! 外に出られなくなって……!」


「カ、カルマさーん! お願いしますっ! どなたか助けを呼んでもらえませんか!?」


 アイリスはしばらく壁を叩いて隣に呼び掛け、それから隣の反応を待ったが、誰かが自分の元に駆け付ける様子はなかった。


「え……? な、なんで……? ど、どうしよう……」


 アイリスは部屋に閉じ込められ、誰も助けに来ない状況に悲しくなり、涙が出そうになってしまった。


「ず、ずっと音を出し続けたら誰か気付いてくれるかも……」


 アイリスは隣に呼び掛けながら、ひたすら壁を叩き続けた。しかし、相変わらず誰からも反応は帰って来なかった……。


 諦めずに助けを求め続けるうちに、日が暮れ、部屋の中は真っ暗になっていた。結局、アイリスの元に誰か助けが来ることはなかった。


「ぐすっ……あ、あたしがいつも変な実験で臭いとか爆発とか近所に迷惑掛けてたせいで、き、きっと嫌われちゃったんだ……」


 真っ暗い部屋でついにアイリスは泣き出してしまった……。ひとり悲しく、現状を噛み締めるように、めそめそと泣き続けた。


「うぅ……出して……。ここから出してよぉ……」


「助けて……誰か助けてぇ……!」


 アイリスは誰かが気付いてくれるまで、ずっとずっと泣き続けていた。そして、いつの間にか朝日が昇り、部屋は明るくなっていた。


「ぐす……あ、朝になっちゃった……」


 アイリスは部屋が明るくなると少し気持ちが落ち着き、疲弊した心と身体を休めようと、しばらく目を閉じ休息していた……。


 そこで、アイリスは嫌な想像をしていた。


「なんだかまるで……。あたし、死んじゃったみたい……」

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