表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~  作者: 桜井正宗
帝国追放

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/38

辺境伯と辺境領地ヴァーリ

 俺には何か“足りないもの”がある。

 それが何か、答えは聖地アヴァロンへ行けば分かるのだろうか。


「ローザ、ここはどこだ?」

「帝国の外ですが、まだギリギリ領地内ですね。この先にはリディア共和国に属する『ミーミル』という街があります。そこを経由しないと『聖地アヴァロン』へ行けないんです」


 ミーミル……聞き覚えがあるな。

 親父がその街の名を口にしていた気がする。


「とりあえず、そこへ行くしかなさそうかな」

「聖地アヴァロンへ行かれるのですね」


「いや、それは先の話だな。しばらくは“辺境の地”で療養する」

「へ……アビスさん、なにをおっしゃるんです? ケイオス帝国は追放されちゃったじゃないですか」


 その通り。

 たった今、俺とローザは『追放処分』を受けて放り出されてしまった。


 だが、俺は気づいてしまった。


 聖騎士ガラハッドから返して貰った『ダンジョン攻略達成証明書』の裏面には文字が書かれていたんだ。



『よくぞ気づいた、アビス。

 この手紙は“魔法スキル”によって(つづ)らせてもらっている。

 さて本件だが、騙してすまなかった。

 実は、ログレス騎士団内部に裏切者のダークエルフがいてね。奴らに聖剣の存在を示すと同時にアビス、君を追放しなければならなかったのだ。皇帝陛下は、君の力がダークエルフに奪われないかと危惧(きぐ)していらっしゃったのだ。


 相手は、非常に厄介で強力な魔力を持つダークエルフ。

 姿を偽装し、君の“大いなる力”を奪おうとしているんだ。君という存在がダークエルフに奪われたら、世界の終わりなんだ。だから、分かってくれ。


 その代わりといってはなんだが、君に『辺境伯』の地位をこっそりとだが授けた。それと領地も与えた。ミーミルという街の直ぐ傍にある辺境の地・ヴァーリだ。


 ――ああ、そうそう。余談だが、この私もそのうち向かう。


 また会おう、少年』



 しばらくして文字が消えた。

 どうやら、読むと自動的に消去されるようだった。



「え、今の手紙って……」

「聖騎士ガラハッドのものだ。きっと、ケイオス帝国では何かあるんだ」

「何かって……」


「分からん。けどな――」



【アビス・ウィンザー】

 種族:人間

 年齢:15歳

 性別:男性

 職業:なし

 爵位:辺境伯

 領地:ヴァーリ

 冒険者ランク:88位(SS級)



 自分のスペックを確認すると、そこには『辺境伯』の文字が記載されていた。



「わ! アビスさん、いつの間にか辺境伯になっているじゃないですか!」

「わははは! なんと領地もばっちりだ!」


「わー! わー! 念願の『辺境伯』じゃないですかー! 素敵!!」



 飛び跳ねて抱きついてくるローザを俺は受け止めて、ぎゅぅぅぅっと抱きしめた。この時がやっとやって来たんだ……!!



 親父のヤツ、あんな厳しいことを言っていたけれど、きちんと分かってくれていたんだな。


 それに、内部に裏切者がいたんだ。

 そりゃ慎重になるよな。



「ローザ、俺やっと貴族に戻れたよ」

「はいっ。アビスさんが辺境伯に……あぁ、ただでさえカッコイイのに、わたし、わたし……」


 ぶわっと泣き、ボロボロ涙を零すローザ。そんなに泣いてくれると、俺も泣けてきた。


「今こそ勝利を得た! ローザ、俺たちはメテオゴーレムダンジョンを踏破し、攻略し、見事に成り上がった。これも全てお前のおかげだ、心から感謝する。ありがとう」


「……ッッ。アビスさん、わたし……嬉しいっ」



 花のような笑顔。

 宝石のような大粒の涙。


 爵位や領地を獲得した以上に嬉しかった。なによりもこの笑顔が見れて――俺は幸せ。


 この為に頑張ってきたようなものだ。



「ミランダも直ぐ報告してやらないとな」

「はい、三人で暮らしましょう」


「――そうですね!! わたくしも混ぜてくださいませえ~!!」


 と、叫んで号泣するミランダ。


「うわ、ビックリした! ニョキニョキっと生えてくるな! 心臓に悪いぞ、ミランダ! いつの間にいたんだ!」


「えへへ……さっきワープポータルを開いて戻って来たんです。というか、ここどこです? いえ、でもそんなことは今はどうでもいいですよね。アビス様ぁぁぁ!」



 突然沸いたミランダも加わり、強く抱き合った。

 今までの苦労、努力、喜び、悲しみ、全てを織り交ぜて俺たちは互いに(たた)え合った。



 ▼△▼△▼△



 マップの案内(ナビ)を使い、辺境の地・ヴァーリを目指した。

 徒歩三十分ほどを歩き、その領地が見えてきた。



「あれか! まさに辺境の地って感じの田舎――じゃない! なんだこりゃあ?」



 標高のある丘から見下すと、ヴァーリは中々に栄えていた。のどかな農場や畑、ゆったりとしている牛系モンスターやスライム。


 小さな街だけど、大きな屋敷があちらこちらにあった。



「素敵ですね、アビスさん」

「あ、ああ……そうだな、ローザ。俺は、もっと村みたいな集落をイメージしていたんだがな」



 村っぽくはあるものの、どちらかといえば街だった。



「ここって人が住んでいるのでしょうか」


 興奮気味のミランダが周囲を見渡す。

 俺も同じように目を動かすが、これといって気配はなかった。無人なのか?


 とにもかくにも、領地内へ入った。



【ケイオス帝国領・ヴァーリ】

【領主:アビス】



「なんか出た!」

「本当にアビスさんのものなんですねっ」

「そうらしい。よし、下りてみるか」



 丘を下り、屋敷の方へ向かう。

 広い通路に出て先を歩くと、人の気配を感じた。……誰だ?



「お待ちしておりました、アビス様」

「眼帯の執事……?」



 通路の中央には、執事服に身を包み、眼帯をつける白髪の老人執事がいた。背筋をピンと伸ばし、綺麗な姿勢だ。それに眼力も凄い。強そうだな。



「私は『アルフレッド』と申します。突然で失礼ですが、アビス様……お力を拝見ッ!!」



 アルフレッドとかいう執事は、いきなりレイピアを抜いて襲い掛かってきた。ので、俺はインビジブルスクエアの“(ソード)”で応戦した。



「――あっぶねえッ」

「ほう、透明な武器ですか」


「!? ……分かるのか」


「分かりますとも。その武器、SSS級のインビジブルスクエアとお見受けしますが」



 何故分かったんだ。

 この執事、何者なんだ!?



「ちょっと待って。ルーカン辺境伯の元執事ってことか」

「……む。ご存知でありましたか」


「当然だ。だが、これからは俺の領地になる。矛を収めろ」

「これは大変なご無礼を。切腹でもなんでも致しましょう」

「自殺は却下だ。それよりアルフレッド、お前以外の住人はいないのか?」


「おります。ご案内いたしましょう」



 くるっと背を向けるアルフレッド。

 俺は、ローザとミランダに耳打ちした。


「なんか怪しいよな」


「はい、人の気配があまりにも少ないです。ちょっと心配ですね」

「わたくしも嫌な感じがするような、しないような」


 う~ん、釈然としないというか、なんかこう……引っ掛かるものがある。俺はまだ、親父の掌で踊らされているのだろうか?


 腕を組んで考えていると、ローザがこう言った。



「でも、自然豊かで良い場所ですし、これからアビスさんのものなんです。堂々と構えていきましょ」


「そうだな。これからは俺が辺境伯であり領主。この辺境の地を守っていかないとな」



 だが、聖地アヴァロンへ行ったり、ダークエルフに関する情報を集めたりなど……中々忙しい。けれど、今は忘れよう。


 なぁに、焦る必要はないさ。

 時間はたっぷりあるはずだから。


 ローザが俺の手を握る。

 ミランダも同じように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ