ケイオス帝国追放
※物語上必要なシーンなのでこの章で追放を入れております。次話で副タイトル回収です
北にある騎士団まで歩いて向かう。
ようやく服も新調し、身も心も変わった気分だ。
ローザとの距離感も手を繋ぐほど近くなったし、嬉しいな。
「あそこがログレス騎士団のようですね」
「なんだ、お城の隣じゃないか」
ケイオス帝国最大の『キャメロット城』が見えていたが、すぐ傍にあったとはね。
俺は門番に話しかけた。
「どうも、門番さん。ログレス騎士団の聖騎士ガラハッドに会いたいんだけど」
「これは貴族様。ガラハッド卿にご用件ですか」
「ああ、ダンジョン攻略達成証明書ならある」
アイテムボックスから取り出し、証明書を見せた。すると門番は顔色を変えて愕然としていた。
「メ、メテオゴーレムダンジョンを攻略!? あのルーカン辺境伯が成しえなかったという……」
「そう、それ。噂に聞いたが、ギガントメテオゴーレムを倒せばその褒美に辺境伯にしてくれるって聞いた。本当なのか?」
「ええ、間違いありません。では、少々お待ちください」
門番は騎士団内へ向かっていく。
どうやら、聖騎士ガラハッドを呼んで来てくれるらしいな。
しばらくすると、それらしい人物が現れた。
「なっ……」
聖騎士ガラハッドは“女性”だった。
赤い薔薇のような髪、これまた黒い薔薇のような鎧を身に纏う――エレガントな女性が鋭い目つきを向けてきた。
「あの最強のボスモンスターを討伐したという少年は其方なのだな」
「そうだ。俺とこの銀髪の女の子。あと不在だけどエルフの子もいる。それがパーティだ」
「なるほど。実に素晴らしい。で、名は何と?」
「俺はアビス。こっちの銀髪は――」
「ローザです。よろしくお願いします、ガラハッド様」
と、ローザは丁寧に挨拶をした。
「そうだったか。貴女が……いえ、それよりこの吉報を皇帝陛下に伝えねば。アビスさん、ローザさん、こちらへ」
背を向けるガラハッドの後ろ姿を追っていく。なんだ、良い人じゃないか。
▼△▼△▼△
キャメロット城の城内へ。
もちろん、外も中も厳重な警備。
これは普通には会えないわけだと納得する。
「アビスさん、騎士の数が凄いですね」
「五十、百は余裕でいるな。しかも、聖騎士クラスばかり」
ただの騎士ではなく、剣聖と呼ばれる者、ドラゴンナイトやパラディン、剣豪までいた。どうなっているんだ、この城。
剣士系の男がやたら集められているな。
「なんか変ですね。聖騎士だけではなく、多くの剣士の方々を集めているようです」
「凄腕を集めてみましたって感じかね」
よく分からないけど、無駄に広い通路を進む。やがて、大きな扉の前に辿り着いた。皇帝のいる玉座の間ってところかな。
しばらくして扉が重苦しそうに開く。
「……ついに皇帝陛下とご対面か」
「わ、わたし……緊張してきました」
「俺もチビりそうだよ」
ガラハッドを追いかけていく。
玉座の前でひざまずくと、皇帝陛下が静かに歩いてきた。靴音を響かせ、玉座の前に姿を現したんだ。
だが、ベールらしきもので顔を隠していた。素顔が見えない。
「陛下、件のメテオゴーレムダンジョンを攻略したという二人組を連れて参りました」
「――ほう、ついに現れたか。いつかギガントメテオゴーレムを倒す者が現れると信じていたぞ。そうであろう、アビス」
どこかで聞き覚えのある声が、俺の名を呼ぶ。
……まて。
まてまて、この声は……まさか。
焦っていると、皇帝陛下はベールを脱ぐ。その顔は間違いなかった。
「親父……! どうして!!」
「驚いたか、アビス」
「驚いたも何もねえよ! 親父はオーガストに記憶を消されて……それで無気力な毎日を送っていて……最近は姿も消していたから心配したんだぞ!」
親父は、関心を示すことなく無表情のまま。まるで俺のことなんて気に留めてなかった。
……そんな。
どうしちまったんだ、親父のヤツ。
「そんなことより、ギガントメテオゴーレムを倒したのだな?」
「ああ、ダンジョン攻略達成証明書がある! 親父が皇帝っていうなら、俺を辺境伯にしてくれ」
「それは無理だ」
「なん……だと」
「いや、あるいは条件次第かもしれん。
まあ、聞け――アビス、お前は我が息子同然だった。だが、今は違う。お前は覚醒させたはずだ。聖剣エクスカリバーをな!!」
「な、なんでそれを!」
「知っているとも。そうであろう、ボールス」
衛兵の中から騎士が現れ、俺たちの前に現れた。コイツ、どこかで見覚えがある。
「その通りです。アビスは、聖剣エクスカリバーを手にしておりました」
「そうか……分かったぞ。お前、ヴァナルガンドに所属していたパラディンだな」
「今更気づいたのか、アビス。そうさ、私はヴァナルガンドに潜伏し、貴様たちの監視をしていた。ずっと遠くから見ていたのさ」
「なんだと?」
どうなっているんだ。
どうして俺を監視なんか……?
疑問に思っていると、親父が答えた。
「アビス、今こそ真実を明してやろう」
「真実?」
「この余は、ウィンザー伯爵ではない。あれは偽りの姿だ。本当はこのケイオス帝国の皇帝なのだ」
「でも、記憶は!」
「オーガストか。ヤツは優秀なダークエルフだったが、詰めが甘かった。あの時点で、余は『無敵の肉体』を得ていたのだよ。
かつて古代の神器だったエインヘリャルの系譜。それがアヴァロン。奇跡の力によれば記憶消去などというスキルは簡単に無効化できる」
「そんなのどうやって……」
「お前が連れ歩いている“大聖女”さ」
「ローザ!? ローザになんの関係がある!!」
「そやつは、元々は『ゲームマスター代理』という任を負って、世界の誰よりも権限を有していた。何故かは知らんがな。だが、余はその権限を奪うことに成功した。
アビス、お前の力を使ってな!!」
俺の力を使って……?
意味が分からなかった。
それじゃあ、俺は……。
「親父、俺は特別じゃなかったのか」
「ああ、お前は特別さ。唯一“カオス”に触れられる存在なのだからな」
「なにを言っているんだ、親父!」
「アビス、お前は見事に『聖剣エクスカリバー』をこの世に生み出した。その功績くらいは讃えよう。だから武器を差し出すのだ、そうすれば無駄な争いはせずに済む」
……聖剣エクスカリバーを差し出す?
それはSSS級武器『インビジブルスクエア』を捨てろと言っているのと同義。そんなのダメだ。これがこれからも必要だ。
ローザとミランダを守る為に。
「断る」
「ほう?」
「親父、俺には守るべきものが出来てしまった」
「そのくだらぬ存在か。やめておけ、そやつは大聖女にあらず。大魔女なのだ。関われば不幸になろう。
最後の通告だ……アビス。お前には幸せになる権利がある。この余に聖剣を献上し、辺境伯になれ」
「言っただろ。断るってな!!」
俺は、即座に『インビジブルスクエア』の“剣”にした。
……あれ、インビジブルソードのままだ。
ギガントメテオゴーレム戦では、確かに黄金の剣だったのに。
「そうか、それが貴様の答えか――アビス。ならば少し頭を冷やすといい」
「なに!?」
親父は、右手に禍々しい魔力を込めた。
黒々とした魔力が収束し、それは剣の形となった。……なんだ、黒い剣?
「これは『混沌剣アロンダイト』。一振りすれば、貴様を塵にするなど容易いだろう。だが、しばらくは生かしてやる。世界を知り、改めて余の前にひざまずけ」
「ふざけるなああああああ!!」
一瞬で親父の前に立ち、インビジブルソードを振り上げた。
だが、親父は混沌剣アロンダイトを構えずに魔力だけを放ち、俺とローザだけを吹き飛ばした。
「――――なッ!!」
「きゃああああっ!」
「アビス、ローザ……お前たちをケイオス帝国から追放する!」
「親父、なぜだ、なぜ!!」
「聖地アヴァロンへ行け。それが貴様の唯一の道筋なのだから」
――そうして俺とローザは、いつの間にか背後に設置されていたワープポータルの中へ強制的に押し込まれ……ケイオス帝国から追放されたんだ。




