やり直さないか!?
一振りすると、ギガントメテオゴーレムの刀がバラバラに砕け散った。
「え……マジ!?」
黄金の光が嵐のように飛び、武器破壊を起こした。
もう片方の流星刀・アランヒルズも飛んでくるが、俺は同じように剣を強振する。
ブンッと振るだけで金の煌めきが敵の武器を完全消滅させた。
「うわぁ、アビスさん! めちゃくちゃ強くなっちゃいましたね!」
「ローザのおかげだよ!」
理屈は分からんけど、ローザがホーリークロスを俺の剣に当てて、ここまで変化した。
「その剣であのギガントメテオゴーレムをやっつけちゃって下さい!」
「おう、これなら余裕だぜ」
俺は全力で地面を駆けていく。
敵は単純なパンチを繰り出してくるが、今の俺にとってはそれが子供の動きにしか見えなかった。
ここまで見え方も変わるとはな。
『――!!』
「遅いッ!」
ギガントメテオゴーレムの右腕を叩き切った。ズシンと大きな腕が地面へ落ちる。
すかさず俺は斬撃を飛ばし、左腕も切断。次に右足、左足と全てを切り落とした。
なんてこった、この“覚醒エクスカリバー”という代物、反則級じゃないか……!
けど、おかげで助かったぞ。
手足を失ったギガントメテオゴーレムに対し、俺はトドメを刺した。
『ガァァァァ……』
胸の部分に覚醒エクスカリバーを突き刺すと、一撃でギガントメテオゴーレムを倒した。
【EXP:600,000】
【BONUS EXP:1,400,000】
【ITEM:エクサダイト×3】
【BONUS ITEM:SSS級アランヒルズ】
結果も出たし、これで討伐完了だ。
更に急いで俺は、オーガストの方を確認する。今だにミランダの猛攻スプラッシュを浴びたまま脱出不可能な状態だった。
「く、くそおおおおお!! よくもギガントメテオゴーレムを!!」
「オーガスト、これでお前も終わりだ!」
「ま、まてアビス!! お前がこれほどやるとは……やり直さないか!? 俺とお前は兄弟のようなもの。組めば最強だ!! この具象世界を支配できる!!」
「あ? 兄弟? ふざけんな! 支配とか興味ねえ! 俺は辺境の地でのびのびスローライフできればいいんだよ!」
ミランダに合図し、スプラッシュを止めて貰った。
その瞬間で俺は覚醒エクスカリバーを振り上げ、斬撃を飛ばした。
「くそ、くそがああああああああ!!」
オーガストは、ギリギリで俺の斬撃を回避。――だが、攻撃がダンジョンの壁を破壊。崩落がはじまった。
ドカドカと大岩が落ちてきて、それがオーガストの頭上へ。
「あっ、あの人……」
ローザが崩壊する壁を指さす。
その間にも岩がオーガストを埋もれさせた。
「うあ、うあああああああああああああああ!!」
そうか、俺のエクスカリバーは最強クラスだから、壁だって簡単に破壊するんだ。アイツが避けたところで意味はない。
完全に崩落に巻き込まれたオーガスト。起き上がる気配を感じないし――恐らくは死亡したのだろう。
遺体を確認しようにも、これではな。
「これでダンジョン攻略完了か」
ふぅと溜息を吐いていると、ローザとミランダが駆け寄ってきた。
「お疲れ様です、アビスさん」
「お疲れ様です、アビス様」
二人から労いの言葉を貰い、俺はようやくダンジョン攻略達成の実感を得た。
「ああ、そうだ。ローザ、ヴァナルガンドの人たちを蘇生できないかな?」
「多分、まだ原形があるので大丈夫かと! リザレクションしてきます!」
急いで向かうローザは、ヴァナルガンドの総勢九名を蘇生した。ヘルやその仲間たちが起き上がった。
「……わ、私はいったい」
「よう、ヘル。無事みたいだな」
「アビスさん! もしかして、あなたが?」
「いや、ローザのおかげだ。彼女にお礼を言ってやってくれ」
「そうでしたの。ありがとう、ローザさん」
ヴァナルガンド一同がローザに頭を下げていた。
「て、照れるのでやめてください。それより、アビスさんが見事、ギガントメテオゴーレムを撃破しました! メテオゴーレムダンジョンは攻略されたんです!」
と、ローザが情報を伝える。
すると――。
「おお! マジかよ!!」「アビスくんがクリアしたのか」「すげえ、マジすげえ!!」「超難易度なのになぁ」「ついに全滅したギルドの仇を取れたか」「これで辺境伯は間違いないな」「いいなあ、報酬もたんまりだろうな」「マジ、かっけえっす」
めちゃくちゃ賞賛され、俺はローザと一緒に照れた。
その後、ワープポータルの制限が解除されて帰還可能となった。ミランダにお願いし、ポータルを開いてもらった。
「皆さん、どうぞ!」
俺達は――ついに帰還を果たしたんだ。
▼△▼△▼△
ケイオス帝国の噴水広場へ到着。
ヴァナルガンドのギルドマスター、ヘルは改めて俺にお礼を言ってきた。
「本当にありがとうございました。無念を晴らしてくれて嬉しかったです」
「おいおい、生きているんだから無念ではないだろう」
「いいえ、無念でしたわ。我々はどうすることもできなかったですし……。そういえば、オーガストは?」
「ヤツは死んだ。もう現れることはない」
「そうですか。アビスさん、よければ我々と来ますか?」
「いや、俺はもうのんびり暮らす」
「そうでしたか。力になれることがあれば、いつでもなんでもおっしゃってくださいまし」
「分かった。その時は頼りにする」
がっちり握手を交わす。
ローザとミランダもヘルと最後の挨拶を交わし、ヴァナルガンドとは別れた。
「ああ、そうでした!」
「どうした、ミランダ」
「わたくし、一度、聖地アヴァロンへ帰らないと! 聖老様に怒られてしまいますから」
「そうか。一緒にいられると思ったのに」
「大丈夫です。パーティはそのままですから、追いかけますよっ」
「そうか。その手があったか」
一緒のパーティであれば、相手の位置情報は分かるんだった。なら、一旦別れてもいいわけか。
「ローザ様も申し訳ないです」
「いえいえ、ミランダさんにも事情はあるでしょうから」
「お二人は、これからどうするんです?」
改めて俺に視線が向けられる。
「俺たちは、まずケイオス帝国のギルドにギガントメテオゴーレムの討伐を報告する。そして、辺境伯の地位を拝領する。――で、人生をやり直すんだ。三度目の人生をな」
「三度目?」
「ああ、三度目さ」
「よく分からないですけど、わたくしもお手伝いさせて戴きますねっ」
「ああ、またな!」
「またです、ミランダさん」
ミランダは、ワープポータルを使い去っていく。
姿が消えるまで見送り、俺とローザは久しぶりに二人きりになった。
「「…………」」
お互い沈黙。
やっべ、なんか攻略が終わった途端、話すことがなくなったぞ。
う~ん……そうだ。
「ローザ」
「アビスさん」
「まずは飯にしよう」
「まずはご飯にしましょ!」
嬉しい事に意見が一致した。
「腹が減ってはなんとやらだ。決まりだな」
「ええ、久しぶりに『ギルド食堂』へ参りましょう!」
以前と違い、金ならたんまりある。
そう、第三の人生はまだ始まったばかりなのである――。




