表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/29

地を這うものども

この蜂、主人公より先に戦闘してるんだけど....

 岩巨人(トロール)は恐ろしい魔物です。1対1ではこの森の誰も勝てないでしょう。しかし群れば勝てます。目の前のボロボロの有り様が良い証拠です。


 ”ブブブブブ!ブブブブ!”


 岩巨人(トロール)の恐ろしさはその肌の厚さです。我らの攻撃など気にかけてすらいません。


”フゴぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!??!?”


 ならば肌を避けて攻撃すれば良いのです。大したダメージにこそならないでしょうが、痛そうな悲鳴には少し達成感を覚えます。

 岩巨人(トロール)は近くにあった棍棒を振り回し、ワタシ達に襲いかかります。当たれば問答無用で即死です。死ぬ気で避けます。


「クゥゥゥ!!!風圧で近づけない!」


 棍棒の風圧だけでも脅威です。今も1匹墜落させられました。

「集まるのです!肩を組んで岩巨人(トロール)に!」


 正面からの突破を目論みます。固まった事で、余計に棍棒の狙いが鋭くなりました。でもこれで良いのです。


”フゴぉぉッホぉぉぉぉぉ!?!??!?”


 墜落した魔蜂(マナンビー)がやりました!青くなった場所に貼りつき、果敢に攻撃しています!すぐ振り払われましたが、もはや岩巨人(トロール)は怒り心頭です。


「さぁ、早く崖に!」




 崖に急ぎます。岩巨人(トロール)はカンカンになって追いかけてきます。


 そして遂に崖に到達しました!岩巨人(トロール)は大きく重いので、少し手前から崩れおち、下にある川へと真っ逆さまです。崖は岩巨人(トロール)数頭分の高さがあります。生きてはいますまい。

 崖下は土煙で、岩巨人(トロール)()()は見えません。代わりに沢山の粘体(スライム)が逃げ出しているのが見えます。どうやら川に住んでいたようです。

 


「やりました!頭さえ働かせれば我々にも狩りが出来るのですよ!見ましたか!」


 誰かに見せつけたいです!生き残った僅かばかりの魔蜂(マナン・ビー)を連れて、下に降りて行きます。流石にこの巨体を運ぶ事は出来ないでしょうが、魔石を取るくらいなら何とかなるでしょう。

 さぁ、早速......












”フガぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!”


 突然の大咆哮に、思わず怯みました。そして上から大量の土が降ってきました!い、一体何が!?!?!!??!?!


 岩巨人(トロール)はまだ生きていました。足を挫いてるらしく、片足立ちで動き回りこそしません。頭も変に歪んでいて、血をダラダラ流しています。しかし奇跡的にまだ生きているようです。そして怒り狂い、棍棒を無茶苦茶に振り回して崖を砕いてしました。

 

 


「な、なんて、馬鹿力.......」

 森で最も強い魔物。これほどまでに恐ろしいのですか。


”フガぁぉ!”

「なっ!?いつ側ni....」


 ブオンっ!!


 よそ見をしている内に、殴り飛ばされました。風圧のお陰で直撃こそしていませんが、地面に叩きつけられました。

 周りを見れば魔蜂(マナン・ビー)はもう全滅。ワタシも目が少し潰れ、変なところから体液が漏れています。


「っく....ワタシはまだ死ねないのです!!!!」


 それがどうした!

 まだ飛べる!まだ噛める!まだ毒もある!あのような死にかけの岩巨人(トロール)1匹ぐらい、倒して見せます!!ひとまず距離を.....


ggggggggggggggg


 突然岩巨人(トロール)が手を止めます。辺りに低い”gggg"という音が鳴り響いています。


「もしかして揺れてる?まっまさかまた崖が......!?」






 ドッッガァァァァァァァァァァン!!!!!!!


「崖が爆発したっ!?」


 突然、崖があった場所から大量の岩石が飛んで来ます。その岩石は岩巨人(トロール)に余りダメージを与えなかったようですが、その轟音に、岩巨人(トロール)も振り向きます。ここからだと岩巨人(トロール)の体に隠れて何も見えません。

 しかし何が起きたかが見える前に、何かが土煙の中から飛び出しました!い、一体何がっ!?



”フガぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!”

「...............」



「はぁ!?なんで大螻蛄(フェイクドモール)がっ!?」

 


 土煙が晴れると、そこでなんと大螻蛄(フェイクドモール)が居たのです!大螻蛄(フェイクドモール)岩巨人(トロール)に乗って押さえ込んでいるのです!!!

 何故ここに!?というかこれは召喚主様の大螻蛄(フェイクドモール)なのですかっ!?というかこんなに強かったのですか!?



「...............」

「....よく分かりませんが、相乗りさせて頂きます!!」


 岩巨人(トロール)の動きは止まりました!今が好機!

 ジタバタと暴れられますが、無理やり顔を攻めます!弾かれたって構うものですかっ!!




「...これは....粘体(スライム)?...そうだ!ちょっと失礼します!!」

 何度目かに弾かれた時、運よく柔らかい粘体(スライム)の上に着地出来ました。そうだっ!これだ!


”っ!?!?ンンンンンン!?!?!?!?”

岩巨人(トロール)と言えど、()()()()()()()応えるでしょう!?」


 粘体(スライム)岩巨人(トロール)の顔に押し付けます。岩巨人(トロール)も抵抗しますが、それは大螻蛄(フェイクドモール)が許しません!!腕を抑え、前脚で腹に切りつけます!


「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!負けるものかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 


 永遠にも思える時間の後、遂に岩巨人(トロール)が腕を下ろしました。そのまま、動くことはありませんでした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 戦いが終わった後、大螻蛄(フェイクドモール)岩巨人(トロール)の死体を背負いました。


「ハァ....ハァ....ま、待って下さい。そ、それ....それをを渡すわけには.......」

「...........」


 心配無用でした。動き出した時は焦りましたが、大螻蛄(フェイクドモール)は土には潜らず、暫く彷徨いた後明確に森の浅い場所を目指し始めました。ヤブローニャ様の臭いを辿っています。明らかに、召喚主様達の大螻蛄(フェイクドモール)でした。

 

「アナタ....何故ワタシを....」

「.......」


 .....ワタシと慧肢蚕(ヘルヴィレス)の話を聞いていたのでしょうか。明らかに、ワタシ程度には賢いはずです。思いもよりませんでした。


「.......」

「.....あの、何か話して欲しいのですが.....」

「.........」

「どうしたのですか?え、ちょっと何脚あげて....」


 パァン!


 大螻蛄(フェイクドモール)に叩かれました。一瞬敵かとも思いましたが、ワタシは生きています。岩巨人(トロール)と渡り合ったパワーを考えれば、手加減をしたのは明確です。




「......そうですね。ワタシの仕事は蜜を作る事なのに、出しゃばって死にかけました。自分のことも獲物のことも何も知らないのに、過剰な仕事.....栄誉を求めてしまいました。わかりました......。大人しく|蜜集めに努めてまいります.....」

 ワタシは辛うじて生き残りましたが、配下は全滅です。これでは蜜を作ることもままなりません。召喚主様の役に立つどころか、逆にお手を煩わせる事となります。


「.....配下、失格です.......」




「..................................」ビュンッ

「うわぁっとと.......これは....魔石.....?いやこれはヤブローニャ様に......」

「.......」ブンブン

 

 魔石を投げ渡されました。粘体(スライム)の魔石です。


「いやでも.......」

「.............」グイ

「でも....でも、ならそれこそアナタが.....」

「..........」ブンブン


 魔石は受け取ってくれませんでした。そして潰れた目を指されました。


「.....よく分かりませんが、そこまで言うなら......」


 観念して魔石を食べます。




「クゥゥっ!?こ、これはぁぁ!?」


 変化はすぐでした。魔石に込められた凶暴な力。ワタシ自身の体を傷つけますが、同時に鋭くなってもいくようです。

 体が一回り大きくなって行きます。そして腹はもっと大きくなり、異物感が現れました。異物感はすぐに消えましたが、腹がなんだかチャプチャプします。翅も大きくなり、大きくなった腹を支えました。


「ワタシの、新しい種族。魔腐蜂(アスナン・ビー)(プリンセス)ですか......。」




 魔腐蜂(アスナン・ビー)。肉や草を腐らせる毒を操る蜂。毒の量自体は少ないが、決して侮る事は出来ない。希少種故、その細かい翅脈や紫混じりの体色を見ても、分かるものは少ない。




「.....」


 ワタシを確かめた後、大螻蛄()は無言で歩み始めました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「あぁ!!やっと来た!もうすっかり夕方になって....何これぇぇ!?!?」

「やれやれ。こっちに来るのにこうも時間がかかるんじゃあ哨戒役には.....ぬぁんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」


 召喚主様達の元に着く頃には、日もスッカリくれていました。召喚主様達はこっちで夜を明かすつもりなのか、小さな洞窟に隠れていました。護衛なのか、新たな眷属を幾らか召喚しています。



「ちょっと待ってなんでここに大螻蛄(フェイクドモール)!?それに蜂ちゃんもなんか姿変わってない!?え?え?え?何がどうなってるのぉ!?!?!?」

「おいおいおいこれ岩巨人(トロール)の死体じゃねぇか!?えこれ大螻蛄(お前)が狩ったの!?!?え、はぁぁっ!?!?!?」


 召喚主様達は大変混乱なされているようでした。無理もありません。ワタシだってまだ少し混乱しているぐらいです。


「.............」

「え、あ、これ岩巨人(トロール)の魔石?あ、ありがとう....」

「.............」ドゴぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!!!!!!!!!!!!




 大螻蛄()はヤブローニャ様に魔石を渡しました。そして新たに召喚された物共を確認すると、派手な音を立てて穴を掘り、帰って行きます。

 ワタシはその背中を、黙って見送りました。



「...........意外だったね。」

「いつも何も言わないから正直不気味だったんだが.....不思議な奴だ。」



 いつか。いつか彼に、恩を返せる日は来るのでしょうか。

岩巨人(トロール)に今回2人が勝てたのは、岩巨人(トロール)が重症だったからです。判る人だけ判る例えをすると「スクラップ寸前の弾切れ陸自アームスーツを思考戦車(タチコマ)と抑えながらバッテリー切れを待った」感じ


今回で連続投稿は終わりです。次回から隔日21:00投稿となります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ