明空デイズ
「イィぃヤッホォォォォォォォ!!!」
「ハンドルミスるなよぉ!?」
「わかってるぅーー!!」
風景画飛ぶように過ぎ去っていく。割れた窓ガラスから爽やかな風がビュンビュンに吹き込んでくる。なんて爽快なんだ!!前にはひたすら草原と朝日が延々と広がっていく。今までが鬱蒼として圧迫感があった街の中だったから、とても気分が上がる。
窓から乗り出し振り返れば、高い壁に囲まれた街がある。街は見えないところで山の斜面と繋がっていいた。多分、街の後の山がウチが生まれた森だ。
「そういえばさぁ!」
「何だぁ!?」
「いい加減この子たちのこと教えてよ!」
「あぁ悪ぃ!こいつらはな....」
ウチたちのトラックの周りは、人間を運べそうな虫たちがガッチリ固めていた。
トラックの上に乗っていたのは刀裁蟷螂、畳んだり伸ばしたり出来る肘で敵群を捌く人間大カマキリだ。森に置いてきた断切螂を地下から呼び寄せて進化させている。
トラックの上を3匹で飛んでいるのは牙彩蜻蛉、色とりどりのブレスを放つ蜻蛉で、ディムが勝手に外に派遣してた奴が進化したそうだ。それがウチがなんか人間の工場で暴れ出したから、慌てて呼び戻したんだって。
そして今は地下にいて見えないが、トラックの真下には岩食蚯蚓が2匹控えている。この子達は今まで森と街を散々往復して虫や物を運んでくれていたのだ。この子達に関しては地上の魔石貯蔵庫を強襲したので、そのお零れに預かったみたい。
そう、魔石貯蔵庫だ。
「すごい進化じゃない!」
「確かに!人間の工場襲えるくらいいだからな!」
「しかもこれからこんな虫たちがもっと増やせるね!」
「あぁ、何せこんなに魔石があるからな!」
頭をトラックに戻し、後ろを見る。そこにはこれでもかという程詰め込まれた魔石の山があった。格でいえば全部小鬼程度だけど、こんなに数があれば何だって出来そうだ!そう、例えば...
「ねぇ!大螻蛄どこ!?そろそろ合流したいんだけど!」
「奴なら今は地下水道だぞ!」
「なんで!?先陣切ってくれたんだから魔石あげたいのに!」
「竜の肉が劇薬だったらしい!今は地下でゆっくりしたいんだと!それと魔石はいらないって!」
「えぇ!?」
そうは言ったが、何となく納得出来た。念話を大螻蛄に向けると、凄まじいエネルギーが渦巻いているのが見えた。これは大螻蛄の体を壊すばかりで、進化させそうな気配はない。大螻蛄自身はこれにじっと耐えているがなるほど、確かにこれを魔石の魔力で鎮めようとしたら魔石の山でも足りるかどうか....
(大丈夫か?)
大螻蛄がフルフルと顔を振るのが見えた。その姿は暴風に耐えているかのようで、辛そうではあるが命の危険は感じない。というかウチが下手に近づく方がヤバそうだった。
(危なかったらすぐに言ってね。)
「ナビン。体が治ったら、栄養のある蜜をたっぷり作って。」
「かしこまりました。大螻蛄様の分ですね?」
「魔石はあげるから、落ち着いたらすぐにもお願いね。」
「畏まりました。」
ナビンはアシパリが抱えてる。2人は魔石を齧って、少しずつ体を治していた。2人はすぐにでも回復するだろう。
「それよりヤブローニャ様!ディム様!」
「何だぁ!?」「何!?」
「どこに行くのですか!?」
「怪鳥の巣!」
「どこですかそれ!?」
「俺が説明してやる!怪鳥の巣ってのはだな....」
ウチの調べとディムの分析によると、ウチたちがいるこの国は「エドマンズ王国」というらしい。王国は広い広い草原となだらかな丘陵にある国だが、そこかしこに山や森がある(人間たちが切り開いたから一つの草原として繋がっているらしい)。それらは全部ウチたちが生まれた森みたいな魔物の巣だが、その中には王国1高い山がある。それが怪鳥の巣だ。怪鳥たちが沢山いて、人間が帰らないこともある危険な土地だそうだ。
「鳥って我々の天敵では!?」
「考えてみろナビン!鳥どもは空を飛んでる!」
「そしてウチたちは基本的に洞窟で暮らしいてる!」
「なるほど!地面の下なら鳥もいないということですね!」
「おまけに怪鳥の巣からそう遠くない場所には別の街がある!”大学”へ行くための下準備が出来るってわけだぁ!」
ウチは草の少ない街道をそれ、草原のど真ん中へとハンドルを切る。ひどく揺れるので、上に乗ってる刀裁蟷螂にバックドアを抑えて貰う。
「怪鳥の巣でいい洞穴見つけたら、まずは魔石を調べるぞ!」
「いや、まずは人間の街や動きを観ておきたい!」
「俺たちの出来ることを増やす方が先だ!」
「人間のことをよく知る方が先だって!」
「人間に襲われたら終わりだぞ!」
「人間に襲われることを先に知れる方が大切!」
「お二人とも!」
ディムとデコを突きつけ合うけど、すぐにナビンが嗜めた。
「.....オッケー。ディムは魔石を調べて。何か大きくやるときはウチを呼んで。」
「りょーかい。ヤブこそ、人間を調べるときは俺に一言断れよ。」
ディムに向かって拳を突き出す。ディムが頭突きで答えた。
朝日が、初めて見るぐらい輝いて見えた。
アクセル踏んでるのは平蠍っていう蠍
次回更新は少し遅れ、3/21の予定です