一寸あれば火種にはなる
稲妻が直撃した。
痛い!焼けてる?痺れてる!動けない......
「....系譜の工場から襲撃があったとの知らせを受けておったが、こんな子供が...子供か?」
地面に打つかる。その痛みに身動きすることすら出来なかった。首が切り離されてるみたいだ。ナビンは、アシパリはどうなったの!?
「リーダー!コイツ人間じゃありません!魔物です!」
身包みを剥がされた。大したものは何も持っていないが、角を見られた。その時に身体が動かされて、周りをみる事が出来た。
周りを、黒い服を着た人間に囲まれてた。全員大人の雄だ。「リーダー」と呼ばれる人間は帽子を被っていて、杖をウチに向けている。その先には魔石があった。
(や、ヤブローニャ様....)
.......(気だるそうな気配)
ナビンは叩き落とされていた。周りで人間たちが他の魔腐蜂をはたき落として回ってる。アシパリは足で踏み蹴散らされてた。ショックで動けないらしい。でも耳の裏側に隠してた翻訳担当慧肢蚕は見つかってないらしい。
「....ウィルック家の奴らめ、魔物使いを雇ったとでもいうのか?」
「しかし今の時期に動くでしょうか?」
「....肌の模様は魔術陣か?どうやら使役系のようだが.....」
人間が髪を掴んで持ち上げ、肌の模様をなぞる。その度に焼けるような痛みが体を走った。止めろ!触るな!
「外の警備員が目覚めました。どうやら即効性の睡眠薬のようです。」
「よし、お前たちはそのまま全員叩き起こしてこい。俺がその魔物を地下牢に連れていく。残りのものは系譜の工場を調べろ!痕迹をかき集めて俺に通信だ!」
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ナビンは腑が煮え繰り返りそうであった。人間の攻撃などほっとけば治す。しかし主を危険に晒しておきながら、何も出来ない自分が情けなくて仕方なかった。
ナビンは1人の人間に捕まれ、別の場所に連れて行かれた。木の板に乗せられると、針で体を貫かれ、磔にされる。
人間はそのようなナビンに一瞥くれると、何やら書物へ向かった。
(おのれ人間...主様を傷つけるばかりで飽き足らず、私を辱めてなお踏み躙るというのか....!!!私の誇りを...!?!?)
必死に足掻く。しかし針は深かった。人間は煩わしそうな一瞥を寄越しただけで、それがなおさらナビンの誇りを傷つけた。
(くそう....私に力があれば....くそう...くそう....)
必死に足掻く。抵抗は無益どころか、傷を広げるだけだった。傷口から体液が溢れる。
(....これは?)
ふと甘い匂いがする。その源は己の体液であった。
(そうだ!なんて間抜け!私には力があるじゃないですか!)
力を振り絞る。こぼれ落ちた体液は指なき腕となり、私の体を引き裂いた。目の前が、白くなる。
(っく....気を失ってなるものかぁ!!!)
傷口を体液で塞ぎ、飛び立つ。羽ばたくたびに蜜が飛び散った。
(蜜が作れない....あまり長くは持たない!)
体を引き裂く音には流石に人間も気づいたようで、その目を驚愕に開かせていた。丁度良い、目に焼き付けよ!これが私の忠誠である!!!
人間の手袋から、異臭がした。私はそれを知っている。あの毒を嗅いで、私は力が抜けたのだ。捕まってはいけない!
人間の手が飛んでくる。変幻自在の私の軌道を捉えて、叩き潰さんと迫ってくる。
(コイツ...なんて正確さっ!?)
しまった!捕まれた!必死に指に噛み付くが、手袋の異臭が私の視界を揺らめかせる。
「mkgai!mvgiaa!!!!!」
何やら人間が叫ぶ。目線の先は扉だ。仲間か!?許してはならない!
(こうなれば!)
溢れた体液で、人間の腕をしっかり掴む。それを支えに自分を引っ張ることで、視界が白けながらも脱出する事が出来た。下半身などくれてやる!
人間は腕を掴まれてパニックを起こし、暴れふためいた。その隙に喉に噛みつき、肉を食い破る。
(風穴開けてやる!虫を舐めるなよ人間!!)
人間の大絶叫が聞こえた。しかしそれは次第に小さくなっていく。