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そのゴブリン、臨体につき

最初なので連続投稿、こちらは第二話です。

もしかしたらアウトの方もおられるかもしれませんのでその時は申し訳ありません。

”アイツ、また虫なんか眺めてるぜ”

”あんな物、ちっとも腹の足しにゃならねぇってのに”

”こっちこいお前ら。人の飯盗りに行くぞ。もう腹がぺったんこダァ”


 またアイツら、ウチの事馬鹿にしてる。ご飯行くなら誘ってくれれば良いのに。ねー。

 洞窟の入り口にあるゴブリンの巣。私は膨らんだ腹の上、小さな跳ね虫を撫でながらブツクサ言う。


 ウチはゴブリンだ。名前は特に無い。今は子供を孕んで、群の中でジッとしてる。旦那は知らない。ゴブリンは群れないとすぐ死ぬから、余裕がある雌は常に子供を作らされる。群れてもすぐ死ぬから、それはもう必死になって子供を作る。私も何回か出産した。

 妊娠は嫌いだ。お腹が減るし、体が重くて苦しい。仕方がないけど、やらないで良いならそっちが良い。


 木の実(りんご)を齧る。赤くて酸っぱくて、美味しい。これはやっぱり美味しいねー。


 白い跳ね虫を撫でる。こいつは指のように小さいけど、とても強く跳ねる。当たれば人間でも血が出る。だからゴブリンはコイツを森中から集めてる。中でもコイツは一際大きく、白いのになんだか綺麗だ。コイツはウチだけのもんだ。


 

 このまま、跳ね虫とのんびりしてたい。妊娠は嫌だけど、巣でコイツを撫でてられるなら喜んで孕むや。

 私の願いはそれだけだった。




”人間が来たぞー!!!!”

”起きろ!戦え!!”

「Гоблины! !!」

「Я нашел его! Победите его! 」


 でも、そんな夢はかなわない。ゴブリンはいつだって、みじなもんだよ。

 突然、人間が攻めてきた。人間は私たちを殺す。痛いのは嫌だ。怖い。逃げなきゃ!


「Огненный удар!!」


 突然、火が飛んでくる。周りは土なのに、何故か火が消えない。熱い!怖い!


”ぎゃーー!!”

”畜生、死ねぇ!!”

「Умереть!」

「Дай мне волшебный камень!」


 周りから悲鳴が聞こえる人間は”白く輝く棒”を振り回す。すると仲間の体から血が吹き出る。人間の不思議な力だ!


「Эй, эта женщина беременна!」

「зубы?」

「Бедный! Убить до родов!!」

「Не увеличивайте!!」


 重い腹を抱えてるから、どうしても足が進まない。そうしてるうちに、囲まれてしまった。やめて!お願い、殺さないで!


「Уооооо!!!!」


 重い声と同時に棒がお腹に飛んで来て、私の目の前は真っ暗になった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「Хорошо! Есть 6 волшебных камней. Лучшая запись!」


 う、うーん...やめてぇ.....殺さないで....


「Дай вытащить, мне 7! Повышение ранга не за горами!」


 やめてぇ...痛いよぉ....やめてぇ...あれえ?....あれ?


 何故か目の前が見える。腹が痛いけど、どこかフワフワしてる。まるで私が私じゃ無いみたいだ。

 重い目蓋を開け、なんとか目の前を見る。


「Ха-ха-ха! Это потому, что это идет против людей! Укради мою еду! !! Это оно! !!」


 少し離れたところで、私の跳ね虫が虐められてた。赤い木の実に釣られている跳ね虫を、みんなが手で叩こうとしている。酷い!許せない!

 

 なんとか体を起こす。だがとても重い。水の中にいるみたいだ。いや、重いと言うより......

 お腹を触って気づいた。無い!あんなに膨れてたお腹がない!何度探っても、伝わってくるのは気持ち悪い熱い感触だけ。なのに、なんだかとても寒い。大事な物がなくなったような気がする。なんで、私は生きているのだろう。


 いや、今は良い。死ぬ前に、私の跳ね虫を取り返したい!!あんな奴らに渡さない!!


”うぅわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!”

「「「!?!?!?!?!?!?」」」


 出てきた声は恐ろしくか細かった。でも、人間は驚いたみたいだ。手を止めて、持ち物を皆落としちゃった。


 頭から飛び込んで、なんとか跳ね虫を拾い上げる。一緒に、跳ね虫を釣ってた木の実をむんずと掴む。


「а! Мое яблоко(ヤブローニャ)!」


 みんなが呆気にとられている間、ウチは必死に逃げた。闇雲に逃げた。


「Теми! Верни мое яблоко(ヤブローニャ)!」

「Откажитесь от яблоко(ヤブローニャ)


 なんだか物凄く疲れる。どんどん崩れていっている。気のせい?いや違う!


「Забудь об этом」

「Ты все равно скоро умрешь. Дать яблоко(ヤブローニャ).」


 何故か人間は追ってこなかった。あんなに声をかけてきてるのに。




 外に飛び出すと、夜だった。体が一気に冷え始める。洞窟が明るかったから、気づかなかった。

 

”大丈夫....?痛くない.....?”


 跳ね虫を撫でながら呼びかける。でも手が震え、撫でることが出来ない。というか、目が回り出した。足元がふらつく。


”きゃあ!?”


 しまいに転んで、茂みの中に転げ落ちてしまった。そこで初めて気づいた。足はもうぐずぐずで、血塗れ。なのに痛くない。いつの間にか、足からは何も伝わらなくなっていた。



 顔を上げる。目の前に、放り出した跳ね虫と木の実(りんご)が転がっていた。跳ね虫は、呑気に()の方に向かってる。

 ()は綺麗だった。白い、葉っぱもない一つだけの花だったけど、綺麗で、とても目立った。


”助けて...誰か助けてよぉ....”


 気づけば泣いていた。痛くて、怖くて、堪らなかった。



 誰でも良い、助けて欲しかった。

主人公が生きてたのはマジでただの偶然で、あそこでじっとしてればすぐ死んでうました

後今作は基本これ以上のエログロはやらないつもりです。


次の投稿は12:00です

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