ローニャは勝手に霧の中
サ◯スペはいいぞ
オオサ◯はいいぞ
目指すべき場所は分かった。トルルマン魔法大学だ。そこで竜様の情報を調べなければ。
でも、今すぐには行かない。行けない。
ウチはこの人間の街を探索することにした。前からちょいちょい興味本位に探索していたけど、それを本格的にしてみることにした。”大学”っていうのは絶対に人間が沢山いるところだし、人間のことはよく知っておいたがいい。
改めてみると、この”街”っていうのは不思議なところだ。この街は、実は壁に通り囲まれている。一部川に面していて、そこから汚れた水を垂れ流しているのだ(ウチはこの汚水を垂れ流してるところから忍び込んだ。)。
街は真っ直ぐな大通りが5、6本あって、その間には「工場」なる毒煙を吐き出す”巣”がある。そして「工場」の間には詰め込むように”巣”が建てられていて、さらにその隙間を縫うように道が走っているのだ。どうやら”巣”というものを自分勝手に作るのが人間らしい。餌場の取り合いとか考えないのだろうか?というか何でちょいちょい巣を空っぽにするんだろう?何で巣をしっかり作らないんだろう?
街は常に姿を変えている。道と、特に大きい工場はいつも一緒だ。でも小さい工場は時々爆発し、小さい家はあちこちで倒れてる。毎日どこかで喧嘩が起きて、昼でも夜でも動き回る人間は動き回っていて、固い石の上で寝る人間も少なくない。ウチ1人が動き回っても、誰も特に気に留められなかった。
「非情な輩どもなのですね、人間とは。」
毎日同行してるナビンは呟く。
「うーん、違うね。」
その時、ウチはとある家の中に潜り込んでいた。本もある豪華な家だ。ウチはその家でフワフワとした布を幾つも、本を幾らか頂戴した。食糧に幾らか手を出したところで人間の気配がして、家を飛び出した。
「ここにいる人間はみんな、違う群れなんだよ。違う群れなのに同じ場所に無理やり住んでるんだよ。同じ群れの振りをして。」
家を覗くと、ボロを纏った、痩せ細った人間が何人か入って来た。人間は宝石と、金属で出来た丸い石に我先にと手を伸ばした。何人かは殴り合ってまで奪い合ってる。
「.....。」
ナビンには理解不能みたいだ。ウチだってわからない。
殴り合いの側には、元々この家の主だったであろう人間の死体が転がっていた。持ち主がいなくなったものを奪い合う人間が集まってきたので、ウチはその場をそこを後にした。
「....ヤブローニャ様。その大学?とやらでは、どうなさるのですか?」
また別の日。地上の路地裏を縫うように歩く。ここでのルールは、”魔力と刺激臭がする場所に近寄らないこと”。刺激臭ってのは、前に草原が焼き払われた時に臭ってきた奴だ。”火薬臭”っていうのか。
「竜様の場所を探る。」
「目的ではなく行動方法です。」
ここには日々、さまざまな物が落ちている。鈍い輝きの丸石、人間体たちが「銃」と呼ぶ道具のパーツ、針金や尖った金属、金属の紐、木材、布、紐、網、コップ、椅子、多種多様な道具...色々ある。
「人間のフリをする。」
「....私は反対します。」
「ツノがあるから?」
「それもありますが、人間が危険だからです。」
それらを適当に拾い集める。そこで鍔の拾い、三角形の硬い帽子を見つけた。ラッキー。
「うん。じゃあどうする?」
「どこか、安全な場所を探します。もしくは人間を容易く退けられるよう、修行の旅に出ます。」
「竜の楽園を、諦めろってこと?」
「....はい。」
「却下。」
それらを持って地下水道に帰る。帽子がウチのツノを隠せるほど大きいことを確認した。
「それほどに、竜の楽園に行きたいのですか?」
「うん。だって謳われるほど素晴らしい場所なんだよ?行きたいよ。」
「その過程で、死んだとしても、ですか?」
帽子は大きいので、崩れないよう布が固められていた。天牛に命じてその硬い布を破らないよう、慎重に切り分けさせる。
「何で死ぬことが問題なの?」
「死んだらそこまでじゃないですか!」
切り分けさせた布を、蜘蛛の糸で繋ぎ止めていく。蜘蛛の糸の接着力じゃ足りない時は、天牛に穴を開けさせて慧肢蚕の糸を通して固定する。
「うん。でもウチはやるよ。竜様を探すよ。死んだら会えないじゃん?」
「だからって死ににいくようなことをしなくても!」
「今のウチ達はどっちに行っても死ににいくようなもんだよ。それにね。」
うん。完成だ。森で大学の制服を着て完成した帽子を被り、盗んできた鏡に姿を写す。
細い制服は体を締め上げ、キリリとした印象を抱かせた(汚れてるけど)。帽子は布を何枚も巻き上げた形をしていて、ウチのツノをなんとか隠してくれた。青系の制服に対し緑系の帽子だ。
「たとえ生きられてもこんな息の詰まるような、騒がしい場所は嫌。どうせ生きるなら竜の楽園のように、美しく爽やかで静かな場所でなきゃ。」