表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤブローニャ 〜蟲愛でる鬼姫は穏やかに暮らしたい〜  作者: ふぐりり
走り出した者たち
18/29

ローニャは勝手に霧の中

サ◯スペはいいぞ

オオサ◯はいいぞ

 目指すべき場所は分かった。トルルマン魔法大学だ。そこで竜様の情報を調べなければ。

 でも、今すぐには行かない。行けない。


 ウチはこの人間の街を探索することにした。前からちょいちょい興味本位に探索していたけど、それを本格的にしてみることにした。”大学”っていうのは絶対に人間が沢山いるところだし、人間のことはよく知っておいたがいい。


 

 改めてみると、この”街”っていうのは不思議なところだ。この街は、実は壁に通り囲まれている。一部川に面していて、そこから汚れた水を垂れ流しているのだ(ウチはこの汚水を垂れ流してるところから忍び込んだ。)。

 街は真っ直ぐな大通りが5、6本あって、その間には「工場」なる毒煙を吐き出す”()”がある。そして「工場」の間には詰め込むように”()”が建てられていて、さらにその隙間を縫うように道が走っているのだ。どうやら”()”というものを自分勝手に作るのが人間らしい。餌場の取り合いとか考えないのだろうか?というか何でちょいちょい()を空っぽにするんだろう?何で()をしっかり作らないんだろう?


 街は常に姿を変えている。道と、特に大きい工場はいつも一緒だ。でも小さい工場は時々爆発し、小さい家はあちこちで倒れてる。毎日どこかで喧嘩が起きて、昼でも夜でも動き回る人間は動き回っていて、固い石の上で寝る人間も少なくない。ウチ1人が動き回っても、誰も特に気に留められなかった。

 

「非情な輩どもなのですね、人間とは。」

 毎日同行してるナビンは呟く。


「うーん、違うね。」

 その時、ウチはとある家の中に潜り込んでいた。本もある豪華な家だ。ウチはその家でフワフワとした布を幾つも、本を幾らか頂戴した。食糧に幾らか手を出したところで人間の気配がして、家を飛び出した。



「ここにいる人間はみんな、違う群れなんだよ。違う群れなのに同じ場所に無理やり住んでるんだよ。同じ群れの振りをして。」

 家を覗くと、ボロを纏った、痩せ細った人間が何人か入って来た。人間は宝石と、金属で出来た丸い石(硬貨)に我先にと手を伸ばした。何人かは殴り合ってまで奪い合ってる。


「.....。」

 ナビンには理解不能みたいだ。ウチだってわからない。


 殴り合いの側には、元々この家の主だったであろう人間の死体が転がっていた。持ち主がいなくなったものを奪い合う人間が集まってきたので、ウチはその場をそこを後にした。









「....ヤブローニャ様。その大学?とやらでは、どうなさるのですか?」


 また別の日。地上の路地裏を縫うように歩く。ここでのルールは、”魔力と刺激臭がする場所に近寄らないこと”。刺激臭ってのは、前に草原が焼き払われた時に臭ってきた奴だ。”火薬臭”っていうのか。


「竜様の場所を探る。」

「目的ではなく行動方法です。」


 ここには日々、さまざまな物が落ちている。鈍い輝きの丸石、人間体たちが「銃」と呼ぶ道具のパーツ、針金や尖った金属()、金属の紐、木材、布、紐、網、コップ、椅子、多種多様な道具...色々ある。


「人間のフリをする。」

「....私は反対します。」

「ツノがあるから?」

「それもありますが、人間が危険だからです。」


 それらを適当に拾い集める。そこで鍔の拾い、三角形の硬い帽子を見つけた。ラッキー。


「うん。じゃあどうする?」

「どこか、安全な場所を探します。もしくは人間を容易く退けられるよう、修行の旅に出ます。」

「竜の楽園を、諦めろってこと?」

「....はい。」

「却下。」


 それらを持って地下水道に帰る。帽子がウチのツノを隠せるほど大きいことを確認した。


「それほどに、竜の楽園に行きたいのですか?」

「うん。だって謳われるほど素晴らしい場所なんだよ?行きたいよ。」

「その過程で、死んだとしても、ですか?」


 帽子は大きいので、崩れないよう布が固められていた。天牛(ロングホーン)に命じてその硬い布を破らないよう、慎重に切り分けさせる。



「何で死ぬことが問題なの?」

「死んだらそこまでじゃないですか!」


 切り分けさせた布を、蜘蛛(スパイダー)の糸で繋ぎ止めていく。蜘蛛(スパイダー)の糸の接着力じゃ足りない時は、天牛(ロングホーン)に穴を開けさせて慧肢蚕(ヘルヴィレス)の糸を通して固定する。


「うん。でもウチはやるよ。竜様を探すよ。死んだら会えないじゃん?」

「だからって死ににいくようなことをしなくても!」

「今のウチ達はどっちに行っても死ににいくようなもんだよ。それにね。」


 うん。完成だ。森で大学の制服を着て完成した帽子を被り、盗んできた鏡に姿を写す。


 細い制服は体を締め上げ、キリリとした印象を抱かせた(汚れてるけど)。帽子は布を何枚も巻き上げた形をしていて、ウチのツノをなんとか隠してくれた。青系の制服に対し緑系の帽子だ。



「たとえ生きられてもこんな息の詰まるような、騒がしい場所は嫌。どうせ生きるなら竜の楽園のように、美しく爽やかで静かな場所でなきゃ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ