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ヤブローニャ 〜蟲愛でる鬼姫は穏やかに暮らしたい〜  作者: ふぐりり
走り出した者たち
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ウチは1人で大丈夫

「うん...うん....そこはここに繋がるのか...」

「はい、そこはこうなっていて....ここで地上のここと繋がります。」

「なるほど...いやしかし便利ですね。蟻がここまで役に立つようになるとは。」

「気づかなくても無理はない。今までずっと地下にいたしな。」


 ディムだ。地下の様子は大分わかって来た。虫達とテレパスすることで、遠方の虫から速攻で情報が来るから思ってた以上に完成が早かった。

 地図は運蟻(ハコベ)が進化した、築蟻(キズベ)という魔物が作った巣で担当している。地下の構造が俺の手に負えなくなったので呼び寄せてやってみたが、見上げるほど巨大なジオラマが出来た(俺蚕だからかなり小さいけど)。

 出来上がったジオラマを、ナビンと見て回る。


「しかしこのジオラマ...地上部分はほとんど真っ新ですね。」

「.....〜♪」

「地下水道に籠もってしまうのは問題ではありませんか?」

「...地上に出たら人間に見つかるぞ?ここはどこか人間に見つからない森とかを見つけるまでの繋ぎだ。」

「でもいつまでも逃げてて宜しいのですか?」


 .....何とはなしに振り返る。そこにはヤブローニャがいた。何処かから持ってきた毛布に包まってて、暖かそうだ。


「ヤブローニャ様が求めておられるのは、逃げて逃げて逃げ続けることなのですか?」


 .....最近ヤブローニャは、俺に隠れてコッソリ地上に出ていってる。危険だと口酸っぱくして言ったが、まるで答えた様子はない。俺を無視して、何か探しているようだ。


「ヤブローニャ様は人間がお嫌いですが、恐れてはいません。必要とあらば普通に接触なさりますよ。」


 「またご用があればお呼びください」と告げて、ナビンはヤブローニャの側に戻っていった。

 

 その呆れたような顔に、俺は言葉を返すことが出来なかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「そういえばヤブローニャ様。ヤブローニャ様は、何か目的があるのですか?」

「あれ?ナビンに言ったことなかったっけ?」

「はい。意識がはっきりして来たのはここ数日のことですので....。」


 次の日。ナビンがウチにそんなことを聞いてきた。


「”竜の楽園”に行くことだよ。」

「”竜の楽園”?」

「竜様がたくさんいる、魔物達の楽園だよ。暖かくて、甘い蜜が沢山で、妖精達も沢山いる、素晴らしいところだよ。」

「なるほど。それは一体どこにあるものなのですか?」

「知らない。」

「え?」


 ナビンはギョッとしてこちらを向く。でも知らないもんは知らないよ。


「ではどうやっていくのですか?」

「考えてみて。何で楽園に竜様が沢山いると思う?」

「........竜の餌が沢山ある?」

「もう一歩。ナビンなら餌が沢山あるところで何したい?」

「...巣を作りたいですね。っは!?」

「そう!つまり竜様が沢山いるところが”竜の楽園”だよ!」


 得意げにナビンを見る。ナビンは呆気にとられた顔をしていた。


「つまり、竜が沢山いる土地を探せば良いと?」

「そう!」

「素晴らしいご推察です。ではどこに竜が?」

「.....知らない。」


 ナビンは空中でずっこけた。器用だな。


「で、ではどうするのですか?」

「それなんだけどね....」






 ウチは鼻を意識する。目指すのは沢山の臭いが詰まってる場所だ。ナビンには予め、沢山の蜂を率いてくるように言っておいた。ウチ自身もアシパルを抱えている。


「ここかな。」


 とある大きな建物の屋根に辿り着いた。油と煙と汗の臭いが酷く漂っている。

 透き通った壁(()()()()っていうんだっけ?)を幾つか覗き込む。その中に、中にいる人間は1人だけな部屋があった。ここだな。


 人間がいる場所を大方検討つけて、その真上の屋根にやって来る。ここからは時間勝負だ。


「アシパル、溶かして。」


 アシパルが操るのは、強力な酸と強力なアルカリだ。屋根を形作ってる石なんかあっという間に溶かせる。


「!?」


 屋根が崩れ落ちた。突然落ちてきたウチ達に、人間は酷く驚いた。口髭を生やした太ったハゲだ。悪いが何もさせない。


「....っあ!?っっくあっが.....!?」


 ナビンが人間に素早く針を刺す。ナビンの生み出す蜜は、実は毒だ。ウチらには毒を取り除いた甘い食べ物として出してくれるが、ウチらが相手じゃなければ容赦はしない。




「えぇと....これは違う...これでもない...これだ!」


 ウチはその間に家探しする。とりあえず必要なのは食べ物だ。運の良いことに、いくつかあった部屋の一つが食糧庫に繋がっていた。それを確認した上で、召喚する。


「ヤブローニャ様。人間を鎮圧しました。」

「了解、食べちゃっていいよ。でも叫び声は挙げさせないで。部屋の外に気づかせないで。」


 死体に群がる肉食の蜂を尻目にウチが召喚するのは、数匹の慧肢蚕(ヘルヴィレス)だ。


「いけ。この部屋の文字や絵を全て読み解け。」


 慧肢蚕(ヘルヴィレス)は「了解」の答えを返す。...あれ?動かない?動け!動いてよ!....あ。

子蜘蛛(チースパイダー)慧肢蚕(ヘルヴィレス)を運べ。」


 アイツら自分じゃ殆ど動けないの忘れてた。






 急速に沸いた飢餓感を食糧庫で癒しつつ、慧肢蚕(ヘルヴィレス)が読み取った情報をディムに横流しする。ディムから抗議の文句が来たが、知るもんか。


「ヤブローニャ様?それで一体何を...?」

「ちょっと待って...これだ。」


 1匹の慧肢蚕(ヘルヴィレス)が飛ばしてきた情報に着目する。その慧肢蚕(ヘルヴィレス)が読み解いていたのは、壁にある絵だった。


「これ、()()なんだって。これがあれば行きたい場所へどこでも行けるんだって。」

「なるほど。これで竜を...」

「でもどこにどんな魔物がいるかは書いてないっぽい。」


 

 ウチは地図の前の慧肢蚕(ヘルヴィレス)の言葉に従って、指を滑らせる。ここがウチ達のいる場所で.....ここがあの森で......ここか、見つけた。


「でも次に行くべき場所は分かる。」


 ウチが指を止めた場所には、大きな建物が描かれていた。その建物なら、竜様がどんなところに住んでいるかがよく分かるだろう。そう人間に教わったことがある。少なくとも魔物のことは分かるはずだ。

 なぜならそこは。


「トルルマン魔法大学....」


 この間会った、奇妙な人間:ズミヤが通っている場所だった。

ナビン改め琥珀蜂(アンブロイドワスプ)の毒は麻酔系というか、鎮静剤系です。


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