いざカマタイ
リアルデスマーチのせいで遅れました
”鎌倉”の語源にアイヌ語の「越える/カマ 山を/クラン」っていう説があるらしいですね
よく晴れた昼。森外周の草原には多数の人間が居た。
彼らはハンターではない。寧ろ見習いとでもいうべきか。”魔産革命”を迎えた今、魔物は万金を生み出す宝石となり、他国を圧倒するための火薬となり、新しき魔術を発明するための術式となった。魔物を扱う「魔物学」の発生であり、急激に発展を遂げる分野であった。聡い国々はこうして魔物を囲い込み、魔物に携わる人々を育てる。いわゆる先行投資である。
そして彼らは、魔物を調べる”魔物学者”....の卵である。魔石は生前の魔物の生態の影響を大いに受けるからである。故に学生である彼らは森のイロハを学び、斥候としての能力を学び、極々弱い魔物の調査を行うのである。
本日は森から遠く離れた場所で、野宿の訓練だ。
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「作戦、決行。」
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Vooooooooo!!!!!!!
それは、突然やってきた。
なんてことのない、いつもと同じ校外学習の筈だった。だが突然、森から轟音が鳴り響く。足元から、尋常でない揺れが伝わってくる。引率の先生が生徒を集合させた。
それは悪手だった。
Fullllllllllll......!!!!
Carrrrrrrrrrrr.......!!!!!!!
gyahahahahahahahahahhahhaahha!!!!!!
森から魔物達が溢れてくる。小鬼、大鬼、石竜子、黒蛇、粘体、魔樹....森の魔物の多くが飛び出してきた。その数は到底数え切れない。
魔物達は時に木々をへし折りながら、がむしゃらに突進してくる。その目は白く剥かれ、仲間が傷つくことも厭わない。滅茶苦茶に叫びながら、こちらへ向けて突進してきた。
「.......う、うわぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!」
誰かが叫び声を上げる。恐怖の悲鳴だ。前兆もなく突然もたらされた非現実的な恐怖に、心が耐えられなかった。
恐怖は集団に波及し、そして誰からともなく壁の砦に向けて駆け出していく。集団が各々勝手に逃げ出したのだ。アチコチで生徒が倒れ、踏まれ、叫び、またパニックが起こる。まさしく阿鼻叫喚である。
「おい!大丈夫か!さぁ捕まって.....」
これに対する引率の動きは驚くほどに早かった。倒れた生徒を庇いつつ、逃走を始めたのである。腰が抜けた者や、踏まれて挫いた者を支えて、引率は走り出す。まだ魔物達の本隊まで距離はあった。それは幸運であった。
しかしその足取りを逃すほど、獲物を逃す程、魔物達は甘くない。足の速い小鬼や黒蛇が生徒達に襲い掛かる。大鬼がその手の枝を投げつけてくる。
kyakyaaaaaaa....gyaa!?!?
「させないぞ!この魔物風情が!」
「大丈夫か!?」
「ここは自分達が!」
だが、魔物の攻撃は通らない。手の空いてる引率や、勇敢な生徒は振り返り、助太刀に入った。
「じっちゃんの技だ!喰らえ、ガランストラッシュ!!」
「薙ぎ風よ、エアリール・インパクト!」
「この剣技を目に焼きつけよ!紫薔薇の舞!」
人には武器があった。眩い斬撃を放ち、突風を放ち、荊を纏いながら突進する。大鬼は大きな切り傷を作り、小鬼や黒蛇は十把一絡げに吹井飛ばされ、魔樹は枝や蔓を切り払われる。
これこそが魔道具だ。人間は魔物と比べ、多くが劣る。だが人々は魔石を使うことでそれらを退けた。人の叡智だ。
そしてその叡智は、これだけではない。
「全員攻撃辞め!合図だ、退くぞ!」
引率の者の声を聞いて、全員が退く。そこには旗が並んでいて、旗のラインより向こうに人が誰もいないことを確認すると、壁...崖の中の砦に向かって合図した。
『民間人の退避確認。レベル2兵装解禁。発射!」
数秒後、アナウンスに続いて、魔物達は業火に包まれた。
これもまた、魔石の恩恵である。魔法の火球は火薬と魔石の力によって増幅され、さながら近代の爆撃の如き武装を齎した。この世界の戦争の概念は、書き換えられつつあった。
業火は旗のラインから距離を置いて、魔物達を焼き尽くす。繰り返し放火して、生き残りがいないよう念入りに焼き尽くす。時たま業火をくぐり抜けてくる魔物もいるが、それは引率と有志の生徒達で着実に処理していく。
「う、うぉぉ!?!?!?スッゲェ揺れる!」
「キャアァ!?!?」
「おい掴むな!」
兵装の中には増幅された投石魔術も含まれていて、着弾の衝撃波が飛んでくる。攻撃エリアは旗のラインから少し離れているとはいえ、煤や石ころ程度は飛んでくるし地面も軽く捲れる。大多数の生徒は砦....崖を掘り抜いて作られた砦の中に避難する。
「おい君、大丈夫か?」
「.......」コクン
そんな中、1人の男子学生が倒れてる者を見つけた。服の丈の割に体は小さいのか、顔がよく見えない。彼はかの者を助けた。
「君、災難だったな。ここまで来ればもう大丈夫だろう。さぁ、僕が医務室まで連れて行こう。」
「.......」
外は今や大惨事で、オマケに凄まじい悪臭に満ちていた。
だからだろう、男子学生は砦に入った時、大きく息を吸って、吐いた。
「........よし」
レベル1兵装:逸れ大鬼や岩巨人への対策。魔術砲台による質量攻撃。
レベル2兵装:魔物の大量発生への対策。草原エリアの指定領域への爆撃。指定領域外への砲撃は出来ないよう、魔術砲台の可動域には限界ある。旗のラインはその可動域外から少し離れた場所。
レベル3兵装:森の完全焼却。貯蓄の魔石と火薬、魔術師と魔道具を総動員して徹底的に森を焼き払う。実は魔樹を連れて来れば森の再生自体は容易




