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ラズーン 6  作者: segakiyui
8.夜襲

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70/88

1

 星は『狩人の山』(オムニド)の上にも輝き始めていた。 

 人の世界、人の命を遥かに超えた時の流れの中、じっと主を待ち続けた高峰、白く雪を頂いた峰々を飾るかのように、暮れ始めた紫の空に色とりどりの炎を光らせる。

「ユーノ様」

 振り返るとジノがひっそりと影のように控えていた。

「『泉の狩人』(オーミノ)の方々がお呼びです。物見がお帰りとのことでした」

「わかった」

 答えてなお天空の星に見入るユーノに、ジノはそっと近寄ってきた。同じように空を見上げながら、

「美しゅうございますね」

「ああ…綺麗だ」

 低く応じてユーノはことばを継いだ。

「昔、旅をしている時にアシャに聞いたことがある。あの星々の1つ1つに、私達の住むような世界を持っているものがあるかも知れないって」

「私供のような…でございますか」

 訝しげなジノの声に苦笑する。

「…」

「あの星々の1つ1つにこんな世界があるのなら、その世界の人もこうして星を見上げているんだろうか。いや、ラズーンを創ったと言う『星』は、今でもやはりこの世界を見ているんだろうか………見ているならどう思っているだろうね、こんな風に戦だけを繰り返す私達を」

「………」

 ジノはユーノの顔に視線を移したが、何も言わずに再び天空を見上げた。

 星は瞬いている。

 瞬時も止まることなく、ただきらきらと瞬いている。

 それは遥か昔、ラズーンが始まった頃にも瞬いていただろう。この戦ののち、地上に生ある者が1人もいなくなっても瞬き続けることだろう。

 その長い長い年月の中、ユーノ一人、何をすればいいのだろう。何ができると言うのだろう。

 真実は一体何なのだろう。それはどうすれば手に入れられるのだろう。

(アシャ…)

 ユーノは心で呟いた。

 その名前は見る間に張り詰めた心を緩め、柔らかくしなやかに、甘い温もりを持って四肢の隅々まで広がった。

(アシャが……笑う)

 旅の空の下、日の光に金褐色の髪を輝かせてアシャが笑う。

(それでいいではないか)

 不意に心が答えた。

 アシャが笑う、それだけでは十分ではないか。得られるものは全てまやかしかも知れない。真実などありはしないのかも知れない。

 けれど、アシャが笑う、楽しげに、嬉しげに。

 それが、どれほど胸を温めることか。

 そうだ、アシャの幸福を願うこの想いこそは、一片の嘘も含んでいない。

(ならば、それでいいではないか)

「ジノ」

「はい?」

「この戦、荒れるぞ」

 くすりとジノが笑った気配があった。

「荒れるも何も、一度は死のうとしたこの命、今更惜しくもありますまい」

「上等」

 ユーノは少し息を吸い込んで、向きを変えた。


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