52話 進歩
「いや、普通に世界ヤバくない?」
【それで世界は運営されてるのでセーフでぇす!!!】
「おい、こっち見ろ。
視線を逸らすな!」
全力で違う方向を見てるカヒコに叫ぶが雑な口笛で誤魔化そうとしよる。
いや、そもそもこいつ前回の召喚者が作った存在だから世界の理とか何で知ってるんだ?
そう言うの知れる立場じゃないハズなのに・・・。
思わず、疑惑の目を向けるがカヒコは知らぬ存ぜぬだなぁ。
【まぁ、そんな事よりぃも!】
「そんな事って片付けられる情報じゃないかなぁ!?」
【ワタクシが出せる情報も規制されてますぅので諦めて☆】
「あ゛~!!!!このもやもやを抱えさせる感じクッソ腹立つ!!!」
メチャクチャ重要な情報ポロっとこぼしやがって!!!
あっ、しかもこいつこっちの反応見て愉悦してる!?愉悦部??
【ふひひっ!ワタクシィは創造主と似ておりますのでぇ?】
「うん、おもっくそ性格悪いな????」
イェーイ!とハイテンションのカヒコがクッソ腹立つ。
先に進まずにスキルのレベル上げが原因かこの野郎!?
【あなたが先に進まなければワタクシの仕事も終わらないのでぇす。】
「ナチュラルに心読むな!!!!」
真顔で言われた言葉にカヒコから距離を取りながら叫ぶ。
うん、表情の落差はひどすぎてこっわい!
温度差でグッピーが死ぬ現象では?
そう考えつつ自分のステータスをチェック。
魔力はほんの少しだけ回復した・・・が、スキルを使えるだけの回復はしていない。
魔力回復薬のレシピ知りたいわ。
それがあれば無限製造ループ出来た!?
手元にそのレシピが無いのが残念過ぎる!!
手元にっ、手元にさえあればスキルレベル上げるのがもっと効率よくなるはずっ!
「ねぇ、カヒコ。
魔力回復ポーションのレシピって知らない?」
【知ってますがぁ・・・・このエリアに素材ありませんよ?】
「どちくしょうっ!!」
とっても気の毒草な顔で言われたのがすんごく腹立つ!!
やれやれって反応はいりませんがねぇ?
何でこうカヒコは・・・言葉よりも動きで煽ってくるのさ?
腹立つわぁ。
【ワタクシはさっさと仕事を終えて仕事終わりの一杯を楽しみたいのでぇす!】
「すがすがしいほど我欲か己。」
【ワタクシにとって死活問題でぇす!!!今すぐぅ!!!今すぐにぃ!!先に進むのでぇえす!!!】
ビールジョッキを掲げるようなジェスチャーが様になってるな、オイ。
そもそもお前人形なのに飲むの?
え?人形が飲酒・・・?
いくらファンタジーでも意味が分からないよ。
知りたくもないカヒコの我欲に呆れつつも考える。
素材はまだあるし・・・自生してたところを見れば新しいのが生えてるから採取しても問題はない。
でも、今作れるこのレシピだけでも得られる経験値はゼロに近くなる。
スキルレベルが上がれば上がるだけ得られる経験値の量なんて雀の涙になるのがオチ。
そうなる前に新しいレシピを知り、調合出来る環境にしないとマズイ。
足元でダンジョンの奥に進む手足をじたばたと振り要求してくるその姿は子供が欲しいものを親に強請ってる奴です。
やだ、カヒコはショタだった・・・?
思わず現実逃避のような事を考えてしまうがそもそも、こいつは作った人物にそっくりなだけだから精神がショタはないなと考える。
むしろショタだったら怖い。
いや、悪夢かな?
「カヒコ、十層まではチュートリアルなの?」
【いいえ、本筋ですが?ここ、一層がチュートリアルになりまぁす。
後は各職業に関する知識、経験が得られやすいようにカスタマイズされてるだけなのぉで・・・チュートリアルとは言えませぇん。】
「マジか。」
チュートリアルと言えないだと・・・?
それはそれでマジかーって思いが強いわ。
【ぶっちゃければ一層以降はあれですぅ。
段階を踏むようなもんになりまぁすのでチュートリアルではないのでぇす。】
「あー・・・初期動作を覚えれば後は経験を積むのが重要みたいなものか・・・。」
【ですでぇす!】
大正解と旗を振り出すカヒコに呆れた視線をやりながら次の層を考える。
一層で基礎・・・初級の回復ポーション作成なら手順は同等で扱う素材が違って来るのだろうか?
いや、そもそもスキルレベルが低いからこそ扱えない素材があるんだろうなぁ。
よくある設定だね!
うん、ラノベ大好きな幼馴染が居てよかった。
こう言う情報は全部ツカサからだし?
って、そうだよ!
「他のメンバーの様子ってわかる?」
【無理ですねぇ。ワタクシは『生産職』専門でぇす!
よって、『戦闘職』の彼等の現状は分かりませんねぇ。】
まーじーかー。
他のメンツの現状知りたかったのにぃ!
十層で合流出来るみたいだからマジで知っときたい。
僕は多分かなり遅れると思うし?
正直このダンジョンでスキルレベル上げられる上限まで上げたいし。
正直戦闘は実家で習った武術がどこまで通じるかによる。
この世界で強くなるにはこの世界で得た力を使いこなさなきゃ強くはなれないだろう。
亀並の遅さだろうが・・・それでも使いこなす為の努力はしないと。