43話 残された者達
「一体どうなってるんだっ・・・!!」
生徒6人が消えた。
いや、それよりもヒジリが洗脳された事が問題でもある。
洗脳した相手が誰かわからない。
王国の連中が必死に捜索したがどこにも見当たらないらしい。
魔法的痕跡がない事からスキルや異能・・・魔眼によるものではないかと推測してるとの事。
とは言っても、痕跡を調べられるとなるレベルの技量を持つ魔法職はそうそういないらしいが・・・。
国仕えの魔法職なだけあって出来るらしい。
もっとも・・・それが真実かどおうか俺達には判断する事は出来ないがな。
「先生、私達これからどうすれば・・・。」
残った生徒達は不安になるのも仕方ないだろう。
だが、正直ここに居ても大丈夫なのかと心配になる気持ちもわかる。
ヒジリを洗脳したのが魔族の場合はレベルの低い俺達にろくな抵抗もできずに死んでしまう可能性が高いだろう。
「ふー・・・・一端、現状の確認をしよう。
その上で気づいた事を言ってくれ見落としていては大変だからな。」
現状打破をするには圧倒的に情報が少ない。
だからこそ・・・一度、状況の確認をするべきだ。
「まずヒジリの状態が洗脳である事について。」
「城の連中はそう言ってますけど・・・。」
「特徴として目の色が変わってたのを俺は見てるが・・・。
書庫で確認したが目の色が変わるのは魔眼と言う魔族特有の異能らしい。」
「目の色が変わる?」
「スキルの場合はレベルが高く無ければ人形のように無口、無表情になるらしい。
魔眼による洗脳の場合は使用した奴・・・魔族の目の色が浮かび上がる・・・実際にヒジリの目の色は赤くなっていた。」
「たしかに・・・。」
「えっと、それならシノブちゃんは?
口調とか変わっていたけど・・・。」
「『前回召喚された俺』」
「っ・・・!」
呟かれた言葉にそちらを見れば静かにこちらを見てるタヤマへと他の生徒達も見ていた。
「カザマの中に居た奴はそう言っていた。
多分・・・カザマの中にいるのはネクロマンサーの職業か死霊術のスキル持ちじゃないのか?
前回召喚された奴で。」
「確証はないが・・・勇者と聖女の名前はそうだな。」
カザマの体を操っていた誰かは確かに前回召喚されたうちの誰かと言うのはわかる。
ヒジリの姉であり前回召喚された聖女の名前を告げた事・・・。
前回召喚された勇者と比較した事・・・。
「・・・少なくとも前回召喚された者達は一部以外職業は開示されてない。」
「勇者と聖女の名前だけでしたね・・・。」
「あぁ、それに・・・あの風間流剣術と言っていた事からカザマの家の道場に通っていた生徒となる。
あそこに通ってるのは割といるからな・・・。」
俺の言葉に実際に通ってる生徒は頷いている。
護身術から本格的なものまで幅が広いからなあそこの道場・・・その上、門下生も多い。
礼儀作法にもうるさいから反抗期の性格修正の一環で親が通わせるのが多い。
「確定情報を上げれば・・・・。
1、ヒジリの洗脳は確実で魔族が施した。
2、カザマの体を使っていたのは前回召喚されたカザマの知り合いの可能性。」
「それは・・・。」
「道場通いなら多分そうだと思う・・・。
俺、護身術の方習ってるけどカザマも教える側の助手として動いてる時もあるから・・・。
剣術以外でも知り合える可能性は大きいけど・・・。」
「剣術以外にも習ってた可能性がある・・・と言う事か?」
「あぁ、警察官志望の奴だと剣術と体術か護身術のセットだな。
犯人確保の為の捕縛術にもなるらしい。」
「なるほど・・・。」
「候補が多すぎるし・・・前回のメンバーから探るとなると・・・。」
「あの・・・それなら従弟じゃないかな?
シノブちゃんの従弟があの行方不明事件の1人だから・・・。」
始めて聞いたその言葉に回りもざわめきが起きる。
それは知らなかったな・・・。
「・・・なら、その従弟がカザマの体を使ってたなら大丈夫だろう。
最低限、あいつらの命を優先してくれる・・・。」
どういった理由でかは知らないがカザマの安全を優先してるようだから一緒に連れて行った連中も無事だろう。
どちらかと言うと・・・俺達がどうなるかだ・・・。
城の連中はカザマをハメようとしたのがいる上にヒジリの洗脳・・・。
2人に仕掛けをしたのは同一人物の可能性はないだろうか?
カザマの件は国と俺達の不和を・・・ヒジリの洗脳は当代勇者を危険であると思わせ排除・・・そんなところだろうか?
魔族側からすれば戦力を削れるし前回の召喚で俺達を危険視してるだろう。
なら、こちらの世界に来て早々に潰したいと考えるな・・・。
弱いうちに叩く、そうすれば損害は少なくて済む。
「とりあえず個人行動は控えよう。3、4人で行動を心がけてくれ。」
「やっぱり・・・潜入されてると思うんですか?」
「誰にも築かれる事なくヒジリを洗脳したとなればその道のプロだろう?
兵士達も探してるが・・・見つかるかわからない。
それに・・・ヒジリ以外にも洗脳されてないと断言出来ない。
見つけやすい魔眼での洗脳ではなくスキルを使った洗脳の可能性もある。」
俺が指摘をすれば予想出来てた奴は顔をしかめ考えもつかなかったのは驚いている。
「俺達がまずすべきは自衛だ。
ヒジリや消えたカザマ達の事は気にするなとは言わない。
優先順位はそれぞれの自衛と考えてくれ。」
続けて当面の方針を口にすればやはりヒジリやカザマの事を気にする奴はいる。
「皆、一端先生の言う通りにしよう?
ヒジリ君の洗脳の解除方法もわからない・・・謁見の間の時にカザマさんを襲ったような事が洗脳されてる状態だと無いなんて言えない。
だからこそ、私達が今やれることは自衛だと思うの。」
「・・・まぁ、そうだな。洗脳の解除方法を俺等は知らないから手は出せない。
カザマ達はどこに居るかわかんねぇ以上・・・俺達がこの世界に来て得たスキルを磨く事で自衛能力は上げられる。
現状出来るのは自衛ぐらいだからな・・・。」
冷静に現状を見えてるのはそれぞれの考えを口にする事で考えの共有をしたが・・・。
ヒジリの存在は精神の支柱としてたのもいるからな・・・崩れなければいいが・・・。