42話 待つ者
「行った、行った。
さて、これからどうなるやら・・・。」
6つある地面に出来た扉が消えていくのを眺めつつ呟く。
『ようやくか・・・。』
どこからともなく響く声に声を出す事無く笑う。
「あぁ、お前のところについてようやくスタートだ。
それまで最弱たる様子を見てればいいさ。」
『1人ほど・・・弱者とは言えん気配がするが?』
「モンスターハウスで1人だけで抜きんでたからな・・・。
レベルだけ上がってる状態だからどこまで通じるかわからん。」
『なるほど、なればそれも仕方のない事。
しかし少なすぎでは?』
「多くっても意見が割れるから数人。
俺から見て精神的に強いのと職業的バランスで見た。
まぁ、向こうに残すべきなのとかもいるし・・・。」
俺の答えに声は沈黙するのを聞きつつ関節人形から抜け出す。
そうすれば、がしゃりと音を立てて関節人形がその場で倒れるのを見ながらやるべき事をする為に動き出す。
『今度こそ・・・終幕となるか?』
「さぁな、あっちの手元に勇者と聖女が2人ずついるなんて頭の痛い話だろうが。」
『それは・・・まぁ、そうだが対策は一応してあろう。
それが作動するのを願うまでだが・・・何か懸念事項でも?』
「当代勇者が愚物・・・いや、能力としては及第点だが精神面がダメだ。
芯が無さ過ぎる。」
俺の言葉に声も沈黙してしまった。
まぁ、勇者と呼ばれる存在が芯が無いなんて最悪だろうなぁ。
「環境的なものもあると思う。
全部知ってる訳じゃないけど・・・あいつが正しいとして行動した後は表向きにはちゃんとただされてる。
隠れてより悪質になった部分をあいつは見た事無い。
表面的に奴が信じた正義を行いその成果が出たのしかない。」
『・・・表面的には成功しかない上にそれしか見ておらんか。
考えが甘いと言うかなんというか・・・苦労を知らん小僧か。』
「だな、親もこっちで言う治安維持部隊みたいな法を守る側の奴だから余計にそれを見続けたからこその憧れや考えもあるだろう。」
『・・・?
見ていたとしても間違った時もあるのであろう?
常に完璧、完全であり続ける事など不可能。』
「推測としては組織の情報規制で開示できる内容は全て完璧であった・・・。
結果論だけを提示すれば完璧だろう?」
『なるほど・・・過程を知らぬ故の暴挙と言う事か・・・。
いや・・・想像力の乏しい故かのぅ。』
「対策、予想、推測・・・未来予想がてんで出来てねークソガキだな。
為政者だったら先見が乏しすぎて家が潰れるタイプ。」
『なるほど、その手か・・・それはちと困るのぅ。
能力だけあって先見に乏しいとなれば・・・勇者に最適じゃろう。』
あー・・・、頭の痛い未来しか見えないわー。
簡単に洗脳されてた当代勇者はマジでハズレだな。
精神が強ければ洗脳なんて掛からないハズだが・・・あいつを使われたらかかるか?
前に召喚されたメンツとの縁が誰にでもあるからネックって言えばネックだし・・・。
『ワシのところに来るまで時間はどれほど掛かるかのぅ。』
「ダンジョン出る時に時間差なくせるよう仕込んどいて正解っしょ?
あんたんとこにたどり着いても・・・あんたを倒せるか・・・8割無理だなー。」
『ふぉふぉっ、ワシを倒せなくとも認めさせれば良い。
お主等がそうだったようにのぅ・・・それで?あの一人だけ気配の違うのがお前さんの従妹か?』
「ん?あぁ・・・筋は良いぞ。」
『そろって生産職とはのぅ・・・どう化けるか楽しみよ。
ふふっ、あの時はお前さんにはさんざん驚かされたもんじゃわ。』
楽しそうなじーさんだなぁ。
さて、俺も動くかな・・・。
「とりあえずじーさんに任せるわ。
俺は出て情報収集やらしてくる。」
『ふむ?時の流れは・・・あぁ、出るのは夢か?』
「あぁ、連絡だな。そっちに探り頼むさ。
俺は俺で勘を取り戻したい。」
俺の言葉に声が沈黙するのに首を傾げる。
別段不思議ではないハズだが・・・。
実戦から離れて随分と時間がたつから真面目に必要なんだよなぁ。
「一応、ダンジョン用で器を用意してあるからそっちを使うさ。」
『お前の力が必要か?』
「勇者と聖女奪還には必要じゃねーの?
どんだけの戦力か想像つかんし。」
『ふぅむ・・・ワシの予知でもそこはあいまいじゃからのぅ・・・。
布石は多いに越した事は無かろう。』
「だろ?
とにかく、俺はそっちにあいつ等がたどり着くまでは鍛え直しだ。
まぁ、長くかかるだろうからこそ時空魔法をぶっこんだんだし。」
『そうよな。ワシも甘い採点ではなく厳しい採点がよいじゃろう。』
「心は折らないようにしてくれよ。」
さすがに精神が折れて立ち直り出来なくなるとかだと困るし。
ここを出た後を考えればメンタル鋼ならぬ超合金とかになって欲しいけど・・・それは、高望みかなぁ?