18話 変貌
「(あれはなんだ?)」
モンスター共の隙間を縫うように人影が縦横無尽に広間を横切る。
「シノブ・・・・?」
一瞬の事だった。
ミノタウロスと呼ばれたモンスター(元の世界だと割と有名な奴)の雷を纏った突進がシノブに迫った時・・・。
壁に叩きつけられて吐血してたあいつは笑った。
吐血するほどダメージをおったのにそれでもあいつは笑っていた。
次の瞬間には雷を纏った首と胴体の二つになっていて何が起きたのかもわからない様子できょとんとした顔のミノタウロスの首と目が合っていた。
ミノタウロスの首が落ち、その胴体が倒れ伏す音と同時に血が舞う。
シノブの姿がブレ続けモンスター共の横を通りすぎたと思えばモンスターの血飛沫が飛び交う。
「カザマ・・・なのか・・・・?」
「なんだ、あれは・・・・。」
「まさか・・・狂化スキル・・・?」
「それにしては理性があるようだぞ・・・・?」
俺達だけではなく軍の連中も困惑の様子が見て取れる。
いや、そもそも動きが違いすぎる。
いくら道場でしごかれてると言ってもあんな玄人のように流れるように首を斬り落とし、心臓を穿ち、核を穿つなんて・・・。
あまりにも力量が変化しすぎてる。
さっきまでモンスターを殺すのに嫌悪してた様子がもう一切ない状態で縦横無尽に広間にいるモンスターを駆逐して行っている。
移動する音なんてほとんど聞こえず、ただ血飛沫と死体となったモンスターの躯が倒れ伏す音と俺達の困惑の言葉だけが響く。
モンスター共を殺すその様子はまさに・・・・・。
【サイレントアサシン】
音もなく敵を屠る様子はまさにそれだ。
でも、オカシイ。
そんな技術をシノブはどこで身に着けた?
あいつの家は先祖が忍者なんて噂あるがそれが本当で血筋だけにその技術が受け継がれていたとか・・・?
次々と地に伏すモンスター共という理解の追い付かない現状・・・。
いや、死んだのが一目瞭然だからわかるけど・・・・。
それを俺等と一緒に召喚された幼馴染が行ってるというのが理解できない。
この世界に来てから手合わせした時だって力量はそんなに違いなんて無かった。
けど・・・・。
今のあいつはなんだ?
屠るモンスター達に向けるその目は道端に転がってる小石を見る様に感情が無い。
ただ、邪魔だから屠るように機械的に淡々と次々とモンスターの死体を作り上げ続けている。
「見つけた。」
殺し続けていたシノブが呟いた時にはモンスターを足場にし天上まで飛び上がり持っていた刀で天上を刺していた。
「―――――――――ッ!!!!!!!!!!!」
金切り声のような、獣の咆哮のような・・・形容しがたい叫びが耳をつんざいたと思えば軽やかにシノブが着地をして上を向いていた。
刀を刺したわずかな穴からは光を反射した何かの欠片が降り注いでいた。
「まさか・・・・。
トラップの宝玉を破壊したのかっ・・・!?」
「待て!!あいつは盗賊や狩人でもないだろ!?」
「罠感知のスキルは剣士職には存在しない!!」
「スキルポイントで習得したのか!?」
軍にとってモンスターハウスの大本の宝玉を感知、破壊は予想外過ぎたのか・・・?
降り注いでいた欠片の光が一瞬強くなったと思ったらこのトラップ最後のモンスターだと言わんばかりにそれは現れた。
「ガァァァアアァァアアァァアアアッ!!!!」
「ひっ!?」
「オルトロスッ!?規定外モンスターがなぜこうもっ・・・・!!」
さっき現れたモノタウロスよりも大きな2つの頭を持つ狼の咆哮に俺達は足を振るわせる。
規定外モンスター?
殺気のミノタウロスもこのダンジョンには出ないハズだったらしいからそれもか・・・?
シノブはオルトロスと呼ばれた存在を前にしても怯える事も無く無感動に見ていた。
「―――風間流剣術。」
「ッゥア!!!!」
「シノブッ!!!!!」
オルトロスの2つの頭の口から炎が吐き出されシノブに襲い掛かる。
差し迫る業火に怯える事も無くシノブは刀の振るっていた。
「 焔翔斬 」
シノブが振りぬいたその先では吐き出された炎ごとオルトロスを縦に真っ二つにした。
「あ、りえない・・・・。」
軍の団長の現実を否定したような声だけがいやに響いた。
なぁ、シノブ・・・お前一体どうしちまったんだ・・・・?
明らかにレベルが違いすぎるモンスターを次々を倒すなんてこと・・・・。
レベルの低い俺達には絶対できないはずだ。
このダンジョンでレベルが上がったとしてもまだ10にもなってない。
始めて生物を殺した事で皆精神的にダメになって立ち直るのに時間がかかった。
だからレベルはそんなに上がっていないのに軍がありえないと驚いてるようなモンスターを一撃で倒すなんてこと・・・・。
本当だったらきっと無理なんだろう。
だからこそ今のシノブは異常なんだ。
何がどうなってそうなった?
そもそもあいつは生産職だからステータスは本当だったらこの場にいる誰よりも低い。
なのに誰よりも強者である。
矛盾でしかない。
ラノベ好きな俺でもこんな状況と似てるラノベなんて見た事ねーぞ!?