1話 日常の終わり
いつもと変わらないと思っていた日々はあの日失った。
両親を失ってそれでも伯父夫婦に引き取られて両親の死になかなか立ち直れなかったけど仲の良い従弟に殴られ説教されて号泣して最終的には祖父に二人して殴られた。
幼いゆえに言いたい事を言葉にできなかったのを祖父が代弁してくれたっけ・・・。
続くと思ってた日常は学校にいった従弟が帰ってこなかったあの日に終わった。
従弟以外にも・・・いや、従弟のいたクラス丸々全員が行方不明となった。
帰りのホームルームに教室に訪れた担任がクラスメイト全員がいなくなったのに隣のクラスの生徒に確認しても唐突に声が聞こえなくなったとしか答えなかった。
もちろん、その隣のクラスの人達はいつものように担任が来たから静かになった程度の考えだった。
だというのに・・・日常は唐突に終わりを告げた。
そして、今日僕等の日常は一変した――――。
「ようこそ、異界の勇者様方。」
目の前に石壁を背に僕達を見てそう告げた中世の王族が着るような服を纏った初老の男に告げられた。
いつだってそう、続くと思った日常は唐突に終わり理不尽が舞い込んで来るんだ・・・・。
・・・・・・
にぎやかな教室。
いつものように朝練終わりの運動部のクラスメイトが疲れて怠そうに教室にやってきたり。
別のクラスに行ってる人や逆に別のクラスの人が教室で仲の良いグループ同士にしゃべってたり。
徹夜で宿題や趣味をしていた人も早めに来て席で机に突っ伏して眠ってたり、僕みたいに持ち込んだ本を読んだりとどこにでもあるような朝の教室のひととき。
朝のホームルームの直前の鐘が鳴ればバタバタとみんな自分の教室に戻ったり席に戻ったりしていく。
「席につけー。ほら、別クラスの奴はさっさと戻れよー担任が遅刻扱いする前に戻れよー。」
クラスの担任と入れ替えで慌てて戻ってク別クラスの子達を横目に本にしおりを挟んで鞄の中にしまっておく。
担任が教壇に移動する間にみんなズレた机を戻したりしながら担任の方へと体ごと向ける。
「えー、それじゃぁ朝のホームルーム始めるぞ。」
うちの担任元駅伝選手だが事故で足を怪我して現役引退したらしい。
って、言っても怪我も学生時代にらしいからプロ選手だったって肩書ではない。
それでも将来有望で当時の駅伝記録塗り替えと言う功績持ちだ。
それゆえか、駅伝に対して未練だらけでうちの高校駅伝部顧問兼コーチ。
担任が高校に赴任してきてからは上位常連高校で1位も何度か取ってる実績もある。
去年も駅伝1位だったし。
「最近、近くで不信な事がある。
と、言うのも不信な音が響くそうだ。
不審者の目撃はないが潜んでる可能性があるから生徒は気を付ける様。
部活動の生徒は帰りは特に気を付けろよー。」
「せんせー、それ先生んとこの駅伝部が一番危ないとおもいまーす!」
「先生しごきすぎで部活終わりヘバってるの有名ですよー!」
「しばらくその辺考慮してメニュー考えたぞー。」
生徒の言葉に担任がローテンションのまま返すのにクラスの駅伝部がうれしいらしく無言でガッツポーズしてるけど・・・・。
先生めっちゃ見てるよ????
ほら、あの『しごかれないのが嬉しいなんてナマ言ってんじゃねーよ。』な視線ちゃんと見よう・・・。
って、見ちゃったね。ガクブルし始めるクラスメイトだけど先生が「解除したら覚えとけー。」の言葉に机に轟沈したね。
いつもと変わらない。
これぞ日常というような風景だった。
でも、そんな風景は何の予兆も無く終わりを告げた。
最初に気づいたのは誰だろう?
ふと、プラスチックを潰した時に聞くような軽い折れる音が空耳?ってレベルの小さな音で聞こえて来たと思った。
だけどその音は少しずつ大きくなってクラスの皆も先生もその音に気付く。
「なんだ?」
「何この音?」
「せんせーが言ってた不信な音ってコレ!?」
「ラップ音だよきっと!!」
混乱が混乱を呼ぶようにみんな好き勝手に言う。
席を立ちあがり部屋の外に出ようとする生徒もいる。
「あっ、開かない!?」
「はぁ!?」
何人かの生徒でドアをこじ開けようとしたりいっそ窓から逃げ出そうとするが・・・・。
そちらも開かない。もっとも、ここ2階だから飛び降りても怪我確定だけどこの不可思議な現象下よりマシなのかな?
「うっそだろ!?」
椅子で窓をたたき割ろうとしてる人もいたけど窓は椅子を当てられたと言うのに微塵にも動かない様子から窓と椅子の間に何か見えない壁にでもあたったようにも見えた。
そうして僕等は――――。
――――違う世界へと渡った。