Saria Episode.2
カチカチという時計の音だけが部屋に響く。それほどまでに静けさだけがこの場を支配していた。その原因である男達は私の目の前で腕を組み難しい顔をしている。
「で、妊娠したってのは…」
ドーマスが静けさに耐えれず口を開いた瞬間、ドーマスの父トレントがドーマスを睨みつける。そのお顔はお前は無駄なことを言うなという表情で、こちらまでひしひし伝わってきた。
トレントは普段は優しいのだが厳格な人間でもある。こういった内容には昔気質の人間なのでより一層厳しいのかもしれない。
「サリア。まずお前が妊娠したってのは村長は知ってるのか」
「いえ、まだ…」
私の父、ホリックはこの村の村長だ。村長などしているくらいなのでそれはそれは厳しい人だ。そのため、とりあえずドーマスに相談しに来たのだが、結果こうなってしまった。
「お前の話を聞くまではとりあえず村長には黙っといてやる。話してみろ」
「その…私の事信じるって約束してくれる?」
「あぁ」
トレントは大きく頷く。私は大きく深呼吸し、心を落ち着かせた。
「あのね…私が寝てるときにね、窓から綺麗な白い羽をした天使様が入ってきたの。そこでね私にこう言ったの。『あなたは子を宿します。その子を大切に育てなさい』と。最初は夢だと思ったんだけど、お腹に確かに感じたの。命を」
私が説明するとトレントは小さくため息を吐き下を向く。ドーマスはポカンという顔をしていた。
「本当にそれしか覚えがないの!信じて!」
「そんなこと信じるなんて…」
ドーマスが何かを言おうとしたがトレントが右手を出し制止する。トレントはまた小さくため息を吐くと口を開いた。
「サリア、お前はいつからアトラス教の信者になったんだ?否定はしないがその話はいささか…信用するには、な」
「違うの!本当に起きたことなの!」
「こんな西の辺境にある村にそんなことが…でもお前が嘘を言ってるとは思えん。どちらにしろ村長には話さなきゃいけないんだ。俺もついて行ってやる。行こう」
「お、俺だっているしよう!大船に乗ったつもりでいろよ!」
トレントの前で借りてきた猫の様におとなしかったドーマスだったが、最後に口をはさむ。あまり信用にならないが
それでも心は落ち着いた。
「さぁ行こうか。」