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目が覚めた。
時刻は六時半、カーテンをまくって覗いた先には、都会の沢山のビル群が視界に飛び込んできた。
ここから始まるんだ。
ここから、僕はまた生きていくんだ。
夜行バスは新宿に着いた。
予定より三十分早い到着だった。
いびきをかいている隣の男を起こす。
「新宿に着きましたよ。」
「……東京」
男はそう呟いて目を覚ました。
紛れもなく、ここは東京だ。
僕はここで、この春から大学生となる。
バスを降りた。
男が話しかけてくる。
「なんか、顔つき変わったな。」
「そうですか?」
僕は運転手からキャリーバッグを受け取りながら答える。
「なんか、シャキッとしたというか、垢抜けたというか、
そんな感じがするんだ。いい目してるよ。」
そう言って男は笑った。
その言葉に、僕はこう言い返してやった。
「そりゃ、今から女を探しにいくんですから。ブスっとした顔じゃいけないじゃないですか。」
目を丸くした男を尻目に、僕はキャリーバッグを転がす。
朝日の登る新宿の街に、少年は消えていった。