暗水
私はその日に息子と2人で散歩に出掛けた私はよくかわいい息子と夜に散歩に出掛けるのが密かな楽しみであり、思春期の息子とコミュニケーションを取る良い機会でもあった。
息子には小さいときからバドミントンを習わせてた。理由は最愛の妻がバドミントンが好きでかっこいいと言ってたので 娑婆世界に居ない妻がきっと喜ぶと思ったからだ。
私は、私が歩んできた通りバイオリン、憧れてたサッカーやビオラをやらせたかった。しかし妻を考えると、どうしてもバドミントンをさせなければと使命感があった。
とにかく私の息子とは思えないしっかりできた息子に育ってくれた、きっと妻のお陰でもある。明日は妻の命日だ。妻は14年前に何者かに殺害され池に沈められた。まだ死体は上がってない。しかし血痕や遺留品が池に浮かんでたということで池に沈められたのは間違いない。14年前はまだ息子が産まれたばかりで息子は、母の顔も覚えてないし母乳も3ヶ月程度しか飲めてない。粉ミルクは嫌がって大泣きしたのも今は昔の話で申し訳ないと今でも感じている。
翌日仕事から帰った私は運動着に着替えて息子と2人で夜の多摩湖を散歩したのだ、、、
多摩湖を歩くと長い防波堤が2つあり1つは西武遊園地駅側1つは西武ドーム側にあり私と息子はいつも西武遊園地側の防波堤を歩く冬の寒い夜は人もまばらで散歩コースとして人気の多摩湖でも人とまずすれ違わない。防波堤の長い長い道を歩き引き返すとき私は遠くから"あるもの"を見た。角隠しをした着物姿の女性がこちらに向かって歩いてくる。歩くというより向かってくると言った方が適切だろうか"それ"は宙に浮いているかのようにゆっくり、ゆっくり向かってくる。私はそういったものをよく見て来た、私の家柄はそういったものがよく見えるし体験も少なくない私もその血を受け継いでしまった。幸いにもかわいい息子は見えないらしい、妻の血と混ざって薄まったか効力を失ったとも考えられ、妻には本当に感謝してる。
向かってくる"それ"は特に何もすることもなくじっとこちらを眺めながら闇へと消えた。顔は角隠しと髪が長くよく見えなかった。私と息子は宅部池、地元ではたっちゃん池と呼ばれる池に向かって歩いた。なぜたっちゃん池と呼ばれるかと言うと昔、たっちゃんと言う男の子が宅部池で溺れ、名前すら誰も知らない男性が助けに行ったが2人とも溺死してしまったと伝えられているたっちゃん池の底は藻や釣糸が沈んでおりなかなか引き上げられないと言う。
そう、その場所こそ私の妻が殺された場所だ。
私と息子は街灯も疎らでたっちゃん池に続く道幅の広い道を2人で歩いた。先ほども伝えたが昼は人で賑わってるが冬の夜は誰も居なかった。街灯も疎らなので少し寂しい思いだったがふと空を見上げると美しい星が輝いていた。私は月や星など天体が幼少の頃から大好きだった。今でもそれは変わらない。
たっちゃん池へとつづく長い道もあと少しだ。ふと後ろを振り返ると遠い街灯の下で妻が立っていた。私は心の中で(すまなかった)と思い罪悪感にとらわれた。たっちゃん池に着くと息子が線香を焚き手を合わせた。その光景を見た私は何年も前から計画してたあることをした、、
「なぁ」と私が細い声で言う
「どうしたの父さん?」と丸い目で不思議そうにこちらを見る。
私の息子の目が妻にそっくりだその曇りもないように澄んだ瞳、私は堪らなく好きで何時間でも眺めてたかった。彼女は純粋で家庭的でまさに私の好みそのものだった。彼女は飛行機に乗ったことはあるらしいが記憶がないくらい小さい時らしかったので私は2人で海外旅行にも行った。私が見てきた景色を彼女にも見せたくて。飛行機に乗り雲を抜けると雲と雲との間に刺す陽射しに彼女の瞳はとても輝いてたのを今でも忘れないとても忘れられない光景だった。そんな彼女との子供がとても楽しみだった彼女と似た優しくて人を思いやれる心を持った子供、私の父のように勉強や教養を持った子供、母のように運動神経がよく悪いと思った所はすかさず口出しをする所。私と似てほしくないのは性格の悪さと悪知恵が働くところなどだ。私は自分で性格が悪いと思った事は1度もないのに周りの人間が小さいときから性格が悪いよねとか腹黒いなどとよく言われてきたものだ。とにかく道徳心とやらを持って欲しかった、案の定心の優しい子に育ってくれた。顔がそこはかとなく私と似て少しかわいかった。
「お母さんが死んだ経緯を知りたいか?」と私は言い出しました。
息子は少しうつむいき「うん」とだけ言った。
そして私は事件の詳しい経緯を話した。
「14年前のあの夜息子のお前を寝かしつけてお母さんと2人でちょうどここを歩いてた母さんが少し疲れたからと言って宅部池の前で休んだ時に私はお母さんの名前を呼び振り向いたところでお母さんを私が刺したんだよ」
と息子にはなし私は「あと少しでお母さんを刺した時間だよ」と言い困惑してる息子を隠し持ってた小刀で一突きし息子を殺し、14年前のあの日と同じように池の真ん中へ近づきかわいい息子をたっちゃん池へと沈めた。14年前に妻を沈める前に時間が許すまで(明け方)ずっと妻を抱きしめ頬や頭を撫続けた事を思いだし自らも死のうと自殺を図った。
目が覚めベッドから横を見るとなぜか死んだはずの嫁がいた。早く起きろ~っと少し細い声で私を起こす。私は妻を殺したことも息子を殺したことも全て夢だったと思い妻を抱きしめようとしたが触れない、私は心の中で?が浮かぶと妻は低い声で「私はもう居ないのよ」と無表情で言った。
私は夢を見てた。妻が生きてたあの頃の、そして私だけ引き上げられ一命をとりとめたが殺人事件で起訴され無期懲役だ。私がなぜ妻を殺したかというと妻を独り占めしたいのと死んだ顔が見たかったからだ。私は妻が他の人と会話してるのが耐えられなかった。そして死に顔もとても美しかった。息子と一緒に心中しようとしたが失敗してしまった。
私は狭い刑務所の小さい窓から空を見るが星が見えない。私は妻と息子と同じところへは行けないと分かりながらも獄中自殺をした。
この作品は私の処女作です。まだまだ至らない点があると思いますがよろしくお願いします。感想もぜひお寄せください!この度は最後まで読んでいただきありがとうございます。