腐女子な彼女
萌えが欲しいの。
そんな事を真面目な顔で言う彼女。
ふーん、と僕は返す。
「萌えが圧倒的に足りないのっ私の小説!!!分かる!?!?」
「足りないって…具体的には?」
そんなこと男の僕に分かるのか、というか彼女はなぜ腐女子だという事を隠さないのかそんなことを疑問に思いつつ尋ねる。
「うーん…なんだろ…可愛いと思えないんだよ。分からないけど。こんなにいちゃいちゃしてるのにかわいくないのっなのに商業BLはなんでこんなにかわいいんだ天才か!?って思う訳、エロいシーンも私は書けないけど、凄くエロく書くし!!!すっごい尊敬してるの!!!こういうの書きたいなーって思うのに書あああけええええなあああああいいいいいいいいい!!!!!ほんと萌えを追求したい!!!!!!どうしたら私の話にかわいさが加わるの!?!?理解不能だよ一生書けないこのままのたれ死ぬんだ私は」
「そこまでいう??てか話の大部分分からないんだけど」
「そんなあ…こんなに熱弁してるのにい…」
しょんぼりとすねる彼女は普通にかわいいと思う。
腐女子でも別に気にしないしこんな彼女を好きになった僕も僕だと思う。
逆に腐女子だと隠そうともしない彼女はいっそすがすがしかった。
「ねえええなんかネタちょーだいいいいい」
「え?ないよ。話せるネタなんて」
「なんかーグッとくるシチュとかないのおお????」
「うーん、こうさ、ぎゅっと抱きしめられたりするとグッとくるかなあ」
「却下」
「なんで!?!?」
「分かるよ、分かるんだけどさ、それだけだと私にはかわいく書けないんだって。そっと引き寄せる的な事しか書けない。私の語彙力のなさよ。評価もされないしさああっそうだよ私語彙力無いからエロいシーンも書けないんだよかわいさもないんだよっ文章が拙いんだよっ!!!!下手なんだよこんな拙い文章ゴミ箱ポイだよ!!!!!あーかっこいい攻めとかわいい受けが書きたいーぶっちゃけかっこよかろうがかわいかろうがどうでもいいのっとにかく萌えるわーってなりたいの!!!!!自分の!!!小説で!!!!自分が自分の望む通りのカップルを作りたいのっはーさいこーってなりたいのおおおお!!!!!!」
「わーったわーったって。落ち着きなよ」
彼女の頭をなでる。
彼女は途端に静かになる。
「あのさ、一花はそういうけど、他の人にとってはそうじゃないかもしれないよ?」
「……絶対つまんないもん」
「そんなことないって、前読ませてもらった小説、僕は好きだなあ」
「それはカズが彼氏だからだよ」
「そんなことないって。普通の人だったらさ、思いつかないことを一花は思いつくじゃない」
「そうかなあ」
「そうだよ」
「カズはファン1号くんだもんね。」
「僕以外にもいるって。一花の小説好きな人」
「そんなことないって。私の書く小説なんか、ゴミ以下だもん」
「じゃあ僕の為に小説書いてよ。ファン1号だから一花の小説悪く言ったりしないし、ゴミ以下だとも思わないよ」
「……今のいいね」
「え?」
「今のグッと来た。僕の為に小説書いてよっての。おおっしゃあああああ創作意欲がわいてきたああああ」
ちょろいなとちょっと思ったけど言わない。
こうやって彼女は自分の小説があんまり好きじゃないのに沢山の小説を書く。
どれも独創的で、たまに設定に突っ込みたくなることもあるけど、彼女の話はいつも面白い。
彼氏目線で見ているからだろうか。
そうじゃないと信じたい。
僕の腐女子で見ていて飽きないたまにちょっとうるさい彼女は今日も小説を書く。