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05 悪役勇者は、特待生テストで過去の仲間を探す

 あっという間に、2年は過ぎた。

 この2年は、比較的に平和だった。

 そしてわたくし、ラインハルトは、すっかり村の人気者になった。

 気前良くて、働き者で、熱心で、金持ちの貴族の男の子。

 ラインハルトを嫌う奴はやっと根絶した。

 金の力が大きいが、命がかかるだから、若干乱暴のやり方は仕方ない。

 母親とは距離感はあるが、伯爵は「よく立派な息子を育った」と彼女を褒めるので。

 母親としては嬉しくもある。

 母方の後ろ盾である伯爵のお気に入りだから。

 

 伯爵といえば、僕の許嫁、エリザヴェータことリズも、2年の時間をかけて、原作の悪役令嬢の皮を完全に脱ぎ捨て、純朴で可愛いお嬢様になった。

 何よりです。

 原作のリズはラインハルト一筋だけど、さすがにあの性格はきつい。

 まぁ今でもちょっと性格に激しいところがあり、さらに僕への感情は大袈裟かつ重げな傾向があるが。

 相手は身も心も可愛い女の子だから、困ることでもない。

 

 もう一つの重要人物、鍵ともいえる、原作の主人公ニールも、性格はだんだん落ち着くようになった。

 それもそうだ、彼はもともと原作ではそういう性格だ。

 厨二病も卒業した、リズと共に。

 これも何よりです。

 しかし彼もリズと同様、僕の付き添い、というか舎弟化は激しい。

 生活、今後の学費、愛用の武器、知識。

 逆に面倒見すぎたとリズに指摘された。

 確かに、リズのいう通り、それはちょっと困る。

 許嫁で可愛い女の子のリズは常に側にいるのはともかく、男はなぁ。

 それにハーレム男だし。

 さらに自分より強い男を舎弟にするのも、面白くはない。

 しかしニールは、どうも自分が僕より強いってこと、認識していない。

 そして自分の三つのスキルに対する認識は足りない。

 特に「絶境複生」と「HPカスタム」。

 ニールの認識では、自分は致死の攻撃を弾けることが出来て、軽いリジネをかける。さらに自分と他人のhp上限を少しあげるタンク型剣士だ。

 肝心な「神の力」は、一回も出したことない。

 でもこの2年、D級魔物しか相手にしなかったので、絶境という状況もないし。スキルの理解する機会は少ないだろう。

 冒険者学園に行ったら、早めに覚えさせたい。

 

 ちなみにリズは魔法使いの母親に教わって、魔法を幾つかを覚えた。

 原作では彼女はそこそこ強い魔法使いだった。

 やはり家の鍛錬は怠りなかった。

 しかしこっちは違う。

 ラインハルトの父であるエドワードは、一切剣術など教えない。

 仕方なくニールと、元B級冒険者のハンスに有料で剣術を教わった。

 三日坊主で学んだ三流の剣士の技、今後通用するかどうか。

 でも「ホジョハレ」では、ラインハルトの我流よりはマシだろう。

 よく叩けますね、ラインハルトの剣術。

 あれは酷かった。

 そして我々3人、ジュエルの色は、やっとB級相当の青となった。

 クロスナイト領のB級迷宮の風穴三年分に、伯爵領付近のC級迷宮3年分吸収してやっと。

 チートホイホイだけど、これが欲しかった。

 やはり身の安全は大事だ。

 このぐらいの強さは卒業まで安全だろう。

 気になるのは、やはり王宮占い師トンクスから貰った真珠の占い。

 僕とリズの運命は変わってない。

 未来像はぼんやり成りづつあるが、変わってはいない。

 そう簡単にも変えないし。

 他は、やはり弟は生まれなかったことだ。

 ほんとに隠し子ではないよね。

 アデールさん、これからどうするだろう。

 

 そんなこんなで、やっと僕とニール、リズは、王都の冒険者学園に入学することになった。

 ここまでの2年は前準備だとしたら、ここからはやっと本番ということになる。

 「ホジョハレ」では、冒険者学園卒業後の話。

 今でも未知な時間だけど、村の時とは訳が違う。

 何せ原作の重要なキャラは、相当の一部はこの冒険者学園にいる。

 勇者パーティー残りの3人。

 ニールの新パーティーで補充した2人の後輩。

 その他もろもろ。

 ラインハルトの運命に直結するもの、いっぱいいる。

 リズを殺す予定な子も、多分この学園にいるだろう。

 別にそいつを責めるつもりはないけど。

 ここでの生活は、ラインハルトとエリザヴェータ、今後の運命に関わる。

 必ず。

 

 王都の冒険者学園では、三種のクラスがある。

 一つは普通のクラス、金を払えば入れる。

 もう一つは貴族クラス、多めの金を払うだけではなく、一定の地位と継承権のある学生にしか入れない。

 最後は特待生、特待生テストで学園側に実力が認めた者は、少なめの学費で貴族クラス同等もしくはそれ以上の教育環境に与えられる。

 ニールは原作では普通のクラス、バイトしながら学校を通った。

 ラインハルトとエリザヴェータは、特待かそれとも貴族かは分からない。

 別に同じクラスになる必要もなかったし、違うクラスでもパーティーは組める。

 教育環境はどうだろう、別にニールとラインハルトの戦い振りでは、優れた教育を受けた感じはしない。

 寮は確かに違うが、そもそも伯爵家は王都に不動産が持ってる、リズはそこに住んでる。

 ちなみに僕はリズに誘われたがさすがに同居はいけない。

 せ、せめて大人になるから。

 結局、特待生の試験は受けず、僕とリズは同じ貴族クラス、ニールは普通のクラスに。

 そして案の定、ニールは王都でバイトを始めた。

 歴史的必然かもしれない。

 僕はバイトはいいと言ったけど、ニールのためにもなるとリズに言われた。

 リズも考えたな。

 きっとニールも何から何までラインハルトの世話になるのも面白くないし。

 自主性上がると、舎弟化も止めるかもしれない。

 

 というわけで、今日は王都での初単独活動を始めた。

 ニールはバイト、リズは王都の貴族との挨拶だから僕は別行動。

 よって僕は、冒険者学園の特待生テストを見学することにした。

 もう一つ一人でやりたいことは、王宮占い師トンクスさんへの挨拶。

 でも特待生テストは今日だけだ。

 トンクスは逃げないし、後回しにする。

 

 王都の冒険者学園、この国の多くの冒険者を育てた。

 最低の目標は、D級の冒険者をC級に育つ。

 僕はすでにクリアだけど。

 そして出だしの冒険者は、大体学園内でパーティーを組んだ。

 ラインハルトのパーティー、原作の場合、B級冒険者として卒業。

 その半年後、A級になったと。

 僕は貴族クラスのバッジをつけ、学園に入った。

 制服の代わり、ここの生徒はバッジをつける。

 目的地はやはり、第一訓練所。

 そこには、特待生テストを行なっているはず。

 目当ての人物は、3人。

 原作、ラインハルトチーム、残りの3人だ。

 その中に、要注意人物一人もある。

 でもあの3人は、特待生かな。

 優れた実力だったが、特待生だったという情報は全くなかった。

 多分3人のうち2人は特待生ほぼ確定だと思う、残りの1人は原作でも情報が少ないから、分からない。

 しかしどうだろう、例え彼女達が今この場にいるとしても、僕には彼女達を見分けるかな。

 12歳だから、分からない場合もある。

 そう考えて僕は訓練所の観客席に座り、周囲を観察しはじめた。

 

 観客は僕1人ではない。

 結構な人数がいる。

 保護者らしきもの、OBらしきもの、そして僕みたいな新入生とか、在学生も。

 在校生の目的は、多分品定めということでしょう。

 冒険者学園とは言え、冒険者活動は在学のうち、既に始まる。

 実力の積み上げ、金銭の稼ぎ、個人の評価。

 それらを確保には、いいチームメートが必要だ。

 だからの品定めだ。

 特に実力が優れる特待生。

 

 「ちょっといいかな。」

 「あ、はい。」

 

 一人のお姉さんは僕の側に座った。

 胸大きい。

 

 「品定め、ですね。」

 「言い方悪いですが、そんなとこです。」

 

 僕の顔を観察しながら、意味深な言い方をする。

 

 「君は、貴族クラスの新入生ですね。僕は王都南区冒険者ギルドのユリエだ。君は?」

 「ラインハルト・クロスナイトです。」

 「ふん、ラインハルト・エド・クロスナイトね。」

 「あ、はい。すみません。」

 

 他人に名前を訂正された。

 そういえば、エドワードは去年新しい領地を国王から授けて、僕のミドルネームも許されたみたい。

 これは、原作に触れなかったことだ。

 でもこのユリエというお姉さんは、どうしてそれを?

 ラインハルト・エド・クロスナイトという名前を知ってたか?

 それとも僕はラインハルトだと知って、敢えて名前を聞いたか?

 唯一分かるには、この自称冒険者ギルドの従業員のお姉さんは、知ってる情報量は今の僕より圧倒的多いということだ。

 用心しないと。

 

 「巷では、次期勇者の噂が立ってますよ、ラインハルト様。」

 「様はやめてください。でも、そうなんですか、また占いでしかないのに。」

 

 もう噂になってたか。

 別に情報を封鎖した訳でもないから、知られても当然。

 男爵家、伯爵家、占い師、村。

 情報源が多いし。

 

 「でも驚いたよ、ラインハルト様、あ、失礼。ラインハルトくん、君は特待生テストに参加しないとは思わなかったよ。お手並み拝見したいところなのに。」

 

 何だろう、お姉さん「お手並み」を言う時、視線と表情すごっく嫌らしい。

 

 「いろいろ、ありますから。」

 「そうですね。勇者ってことはパーティーのリーダーで無ければならないからね。テストに参加して底を知られるより、視野の広いところで見学した方が今後のためになる。」

 

 そうか、知らなかった。

 でもさすがに勇者は手下として他パーティーに参加するのはないなぁ。

 

 「ところで、ユリエさんはどうしてここへ?」

 「僕はギルドの調査員ですから。」

 

 そう言えば、南区冒険者ギルドの従業員だった。

 でも調査員か。

 ギルドは受付嬢とギルマスしかないと思った。

 ユリエさん、受付嬢にぴったりなスタイルしてますし。

 

 「すみません。」

 「どういたしまして。」

 

 やばい、ユリエさんの体見たのをバレた。

 目が合った。

 明日次期勇者はエロガキの噂、王都に流れるかもしれない。

 

 「ち、調査員って、具体的に何をやるんですか?」

 「そうですね。依頼元の確認、管轄地域の魔物はもちろん。冒険者も調査しますよ。」

 「そうなんですか。」

 

 冒険者ギルドなのに、冒険者を調査するか。

 ちょっといただけないなぁ。

 

 「冒険者のうちのヘッドハンティング、激しいから。良い冒険者とその卵の情報は、みんな欲しがってるのよ。」

 「なるほど。」

 

 スカウト、ってことですね。

 確かに筋は通っている。

 

 「今日もその調査に来たよ。むしろ今日は大イベント。南区と北区のギルド、惜しむ無く調査員を派遣したよ。どうです?僕の調査報告書、買いますか?」

 「え?売るものですか?」

 

 個人情報を売るか、これはどうかな。

 

 「いえいえ、もちろん無料公開ですよ。でも南区は、中堅、B級で年内南区で10件以上の依頼を達成するパーティーと個人しか、報告書の冊配らないよ。しかも時間的は、遅め。」

 「一番重要な時期目当ての人物の声掛け、出来ないと。」

 「さすがです。報告書が出来た明日、その冊は誰にでも売るわけではないよ。ラインハルトくんは勇者になられるお方だ、きっとその報告書は役に立つよ。」

 

 きっと南区が掴んでるA級、S級の冒険者にしか売らないでしょう。

 

 「でもお高いでしょう。」

 「いえいえ、お代は結構です。ラインハルトくんと今後、有意義な情報を貰えば。」

 

 胡散臭いな。

 そういう言い方だと、一番代償が大きい。

 やはりお姉さん、侮れない。

 

 「何なら、今でも情報を提供して貰えば。例えば具体的の勇者の予言とか、エリザヴェータ嬢の実力とか、あるいは今気になる特待生候補とか。」

 

 今でも僕の口に情報が欲しいのか。

 けど予言とリズのことはさすがに喋るわけないだろう。

 でも、特待生候補か。

 それなら、喋るのも問題ないけど。

 でも、ユリエさんの報告書、そんな価値するのかな。

 それに僕も他の有望株確保にしに来たでもないし。

 

 「その、僕もあんまり特待生候補のこととか、分からないです。田舎者だから。」

 「別に実力の優れたものだけではないよ。顔が可愛い女子とかっこいい男子の情報もいいだよ。」

 「え?需要あるですか?」

 「大有りですよ。ちなみにラインハルトくんは、今期新入生イケメンランキング暫定二位よ。」

 「はぁあ?!」

 

 何だよそのランキング。

 ていうか顔で仲間を選ぶ奴って。

 いた。

 原作のラインハルトだ。

 でもイケメンランキング二位か、悪くないな。

 

 「可愛い女の子なら、心当たりあります。」

 「可愛い女子ランキング七位のエリザヴェータ・リ・リノワール様なら結構ですよ、彼女の情報は多いです。別の方で。勇者候補のラインハルトくんの情報網なら、きっと可愛い女子いっぱい乗ってます。」

 

 読まれた!

 ていうかないよ、僕の情報網とか。

 でも確かに、同級生の美少女の情報は幾つある。

 原作に出て来た女の子達だ。

 逆に女の子しかないだ。

 ていうかリズ、七位の女だったか。

 男はともかく、女の子のランキングとか生々しいなぁ。

 叩かれるぞ。

 

 「シルファ。シルエファナ・シェンドラル。」

 

 そして僕は、最初に浮かんだあの子の名前を喋り出す。


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