02 悪役勇者は、聖剣を買い占める!
ハンス。
彼は「ホジョハレ」の中のモブキャラの一つ。
三話で、帰郷のニールに、聖剣を売った村のおっさん。
ちなみにヘレンとはおなじく、ニールは村に帰る時しか登場しないキャラだったが。
彼の濃いキャラ設定は、ヘレンよりよっぽと人気がある。
そして気になる聖剣の値段は、驚きの銀貨三枚だ。
ハンスは別にニールを気に入ったとかじゃなくて、ただ手元に金がないだけのこと。
ちなみに昨日リズから貰った誕生日プレゼントの名剣「ビロー」は、金貨500枚を出しても、帝都の最強鍛冶師が作って貰えるかどうかの価額。
なのにこのハンスという男は、名剣を切断する聖剣を銀貨三枚で売った。
当然物語の展開では、このあとニールは聖剣の真の価値を分かったのに、自分の半分の財産の金貨十枚を仕送り。
ヒュドラを倒し、S級冒険者になり、さらに報酬の白金貨をハンスと山分け(金貨50枚)。
ニールは敵国の陰謀を破り、国王から男爵位と屋敷を授けられた時、ハンスを執事として雇う。
魔王との大戦が勃発した後、軍隊を率いるニールは、ハンスを中隊長を任命。
魔王を倒した後、神々から貰った北の大地を建国するニールは、ハンスを爵位を与えする。
一見ハンスは聖剣を売った後、順風満帆に見えるが、実はこの男、とんでもないやつだ。
あいつは、ギャンブラーだ。
それも、重度の。
ニールから貰った10枚の金貨は、すぐに賭場でバロ負け原点戻り。
さらに借金をし、牢屋入り奴隷に落ちる。
それを知ったニールは彼を釈放且つ買い戻し、さらに白金貨を分けた。
そして当時ハーレムの三人に厳重注意され、やっと一時的に普通の生活に戻る。
普通の生活といっても、食っちゃ寝と女遊び。
執事になっても殆ど働けない、たまにハーレムの女の子達にセクハラする。
中隊長の時期は軍隊の中にバクチの風を吹き、爵位を得てもロクなことしない。
読者曰く「ラインハルト無害バージョン」。
でもそんなものはどうでもいい。
今日僕の目的は、あいつの聖剣を手に入れる。
四番目の聖剣、「ハク」を。
あの聖剣は、敵と味方のスキルを分析し、使用者に教えることが出来る聖剣だ。
「ホジョハレ」の中後期では、神級の敵しか出てこないので、その分析力は全く使えなくなったけど問題ない。
なぜなら僕はこいつより敵の能力が詳しいからだ。
でも聖剣はみんな、莫大なステータス付き。
さらに前期のストーリーでしか披露しない強力な切れ味や、ラッシュスキルもおまけ。する。
こいつ一本で多分S級冒険者までは余裕通過、軽くチートも出来るだろう。
リズからの「ビロー」はどうするって?
背中に背負うだけだ。
ニールもずっとハーレムの正妻から貰った剣をずっと背負った。
全く使わないのに。
でもたまに致命傷のを不意打ちを防ぐ。
「「因果応報」は短時間で二回使うことはできない!」
「ニール!」
「だ、大丈夫だ。シルファの剣が、おれを守ってくれた。」
「よ、よかったくすくす。」
みたいなくだりは少なくとも2回もあった。
この「ビロー」もきっと、僕の致命傷を防いでくれる役目だろう。
最も、僕には「因果応報」が使えないけど。
とりあえず、聖剣を貰うには、前準備が必要。
でもさほど難しいことではない、なにせあのハンスだ。
金貨を出せばきっと買えます。
問題はハンスの後処理。
正直ハンスは面白かった、「ホジョハレ」彼が登場する時毎回面白い。
聖剣を売った後、ニールのチートプレーも面白かった。
だから、ハンスには、今後穏やかに暮らせたい。
ハーレム3人の女の子は凄く怖くて、ハンスはあの三人を怯えるのでギャンブルをやめましたが。
正直僕にはその迫力はない。
せめてギャンブルはいいとして、借金はしないで貰いたい。
これは今日の目標だ。
僕はまず、昨日誕生日パーティーの残りの食材を取った。
5キロまである、この世界特有の鶏。
下処理が済んでおり、その一羽丸ごとを貰う。
そして村まで向かう。
ついたのは農家、でもハンス家ではない。
「ヘレン、おはよう。」
「え、えっ?ラインハルト様。おおお、おはようございます。」
好きな人が突然現れたから動揺した驚きではない、これは、恐怖の驚きだ。
ラインハルトは、二三年前から、幼馴染であるニールとヘレンに厳しい態度で接するようになった。
ニールはラインハルトが豹変するのをただ残念で悔しいだったが、ヘレンはラインハルトが怖い。
力持ちの男の子だから。
「いいよ、ヘレン。昔のまま、ライニとよんでください。」
「え?と、とんでもないです!」
「詳しくはニールに聞いてくれよ、ヘレンのお母さん、呼んでくれませんか。」
「は、はい。」
ヘレンは不信そうで彼女のお母さんを呼んだ。
「ラインハルト様。おはようございます。」
「僕のことをライニでいいから、おばさま。ちょっと頼みことがあって。」
そう言って、僕は鶏を差し出す。
「この鶏をおばさんが調理してくれませんか。」
「ええ?でも、貴族様の口に合うかどうか。」
ヘレンのお母さん、困惑している。
「いいえ、あくまでヘレンといつも食べる時の味付けでいいです。お代は、その料理の半分でいかがでしょうか。」
「と、とんでもない。ただ調理しただけでこんな立派な鶏を貰うなんて。」
「でしたら、ニールを誘ってください。これは昨日僕の誕生日パーティーの残りものだから。その、誘われてないニールとヘレンへのちょっとしたお詫びで。」
「は、はい。でも、半分なんて。」
「でしたら、ヘレンがいつも食べてる餅を幾つ貰えますか?ひとり、いや。二人分でいいです。」
「もちろん!」
ヘレンのお母さんは即調理に入った。
残ったヘレンは、不思議そうな目で僕を見る。
でもやはり怖いのが、話に来ない。
三年のヒビは、そう簡単に治せるものではないか?
能天気なニールはともかく。
まぁ、ヘレン及ぶ村人の悪印象の改変はまた後日。
一時間後、僕が調理出来た料理の器をもって、ハンス家についた。
朝だから、100%ハンスは寝ている。
ハンスは朝まで起きる場合は一つだけ、それが金を持ってる時。
でもそれも、一晩のことだ。
「ハンスさん、起きてください!」
反応なし。
僕は思い切り門を叩いた。
「誰だよ?こんな朝っぱら。って、男爵家のぼっちゃまじゃないか。」
ちなみにこのハンス、自分の世界に入り込みすぎて。
僕が二三年前から、この村の随一の悪童になったことすら知ってない。
今の彼は、二三年前僕に対するノリ。
「昨日は僕の誕生日ですから。お料理をおすそ分け、いかがですか?」
「あ、ありがてぇ!」
「では、僕を入れてくれませんか?」
「どうぞどうぞ。」
ハンスの部屋に入った。
それはまさにクズの部屋。
ロクなものがないし、散らかってる。
家具、調理器具、ベッド。多分全文こいつに換金したんだろう。
唯一まともなものは、壁に飾った聖剣ぐらい。
あれは彼が剣神・マロタロスとの賭けの戦利品。
当然ハンスはそれが聖剣だとしらない。
剣神・マロタロスもしらない。
ただこいつは、チンピラどもが借金の返済を要求するとき、武器が必要だと思っただけ。
彼の認識では、聖剣はただ切れ味がちょっと鋭い剣なだけ。
部屋に入ったハンスは、構うことなく、料理を貪る。
10歳とは言え、僕は仮にもここの領主の息子だというのに。
この男は構いません。
「ハンスさん、もう何日もご飯を食べませんでしたか?」
「ま、まぅぁな。なしゃけない。」
マナー悪いな。
「どうです?賭場の方は。」
「ぼ、ぼちぼちかな。」
ギャンブルの話になると、ハンスはすぐフォークとスプーンを止めた。
やはりなぁ。
「実は今日は、ハンスさんの剣を買って来ました。」
「なに、剣を?剣はだめだ。俺は剣が必要だ、ゴロツキが来ても逃げるようにな。」
「多額で買取ます、予備の剣なんて数本も買うぐらいの金数を。」
「だめだ。俺は金があったら全部賭場で使う一途だ。でも、いい値で買うだ、ふん〜。」
金は自分の手に長持ちはしないと自覚したか。
「金貨3枚ですね、如何でしょう。」
金額を聞いた後のハンスは一瞬嬉しい表情だったが、すぐ疑い深い演技に変える。
無理だ、ハンス。
お前の性格は俺はもう把握している。
値上げのため演技するつもりだな。
「悪くはない、けど坊主。なんでこんな高値で?ひょっとしてこいつ俺の想像以上の剣ってこと?」
高値ではないね。
ざっとニールの100倍の額。
でもさすがクズのハンス、金に鋭い。
聖剣の価値を気付き始める。
「これは聖剣ですね。金貨千枚はすると思います。」
「はぁ?」
「ほんとです。」
あえて正確な金額を指示。
しかしハンス、全く信じてない顔。
「なんだこのふざけた値段。坊主よ、仮にお前が嘘をついてないとしても、金貨3枚はあんまりすぎる。お前は俺を舐めてるんのか!」
「いや、ハンスさんならこの値段が適格だと思ったからです。」
「それがなめるということだよ!」
ハンスは激昂して、俺の方をじっと見る。
「はぁ〜。」
「なんだよ。」
「ハンスさん、考えみてください。あなたにこの聖剣を、金に変えれ術は持ちますか?」
「どういう意味だよ。」
「一つ賭けをしませんか?」
「は?」
「これが僕の金入れです。この中に一枚だけ貨幣を取ってください。もしその貨幣はこの部屋あなたがもつ貨幣より少ないなら、そいつはあなたのものです。」
「逆なら?」
「僕からはなにも取り上げません。」
「うんじゅあ。」
ハンスは銀貨一枚を金入れから取った。
「僕の勝ちですね。」
「な、なにを言う。俺は、銀貨ぐらいの金は持ってる。」
「ないですね。」
「いや、だからある。」
「今日はこれの話なんです、進みたければ大人しく銀貨を僕に返して、白状しなさい。」
僕は金入れから金貨を取り、ハンスの目の前で揺らす。
目の前の金貨をみながら、ハンスは銀貨を僕に帰した。
「銅貨18枚、全財産だ。」
「よろしい、でも違うね。それはただの手持ち金額。多分ハンスさんは今借金を出来ている。資産はマイナスだよ、」
「なん、なんでそれを。」
多分ハンスは、この二三年から、借金生活が始まった。
五年後の厳重さとは違うけど確かに借金生活。
「ハンスさん今年幾つになられたんですか?」
「26。」
「まだお若いですね。ちなみに奴隷市場、青壮年男子の平均価額は金貨12枚だそうです。」
「どういう意味だよ。」
「あなたに与えた猶予時間ですね。」
「はぁ?」
「連中はハンスさんの借金が12枚を超えない限り、ハンスさんを賭場に泳がせるつもりです。」
「・・・」
「脅しに来るのも、実際はハンスさんを賭場に誘うつもりでしょう。」
「そんなこと。」
「あるよ。」
お前の五年後の結末。
まぁニールは釈放して来たんですけど。
「この三枚は、おなたの借金額と見る。」
「いや、二枚だ。」
こういう時は素直だな。
「まぁ、細かいことは。」
「お前はどういう意味だ。借金を返済してくれて改心するでも言うのか?言っとくが俺はこの剣を他人に売るのもいいだぜ。」
「出来ないな。ハンスの腕、人脈、頭脳では無理。まずチンピラ達にばれる。で、剣は奪われる。」
「奪われて高値に上がって困るのは坊主、お前じゃないか。」
「いや、僕は困らないな。チンピラどもはハンスさんよりずっとちょろいです。僕が男爵家の子息のこと忘れないで頂きたい。」
もともと剣はもう僕のものだ。ただハンスさんの後処理をしている。
まぁ、言えないけど。
「なんなら、なぜ俺の剣を奪わない。」
「一応善良の市民だし。それに、ハンスさんはハンスさんだよ。付き合い長いし。チンピラ達とは違います。」
「じゃもっといい値でこれを買ってくれよ!金が必要なんだ。金貨100、いや50枚でいい!お前男爵の息子だろう?分かった、20枚。10枚、10枚でいいだ。頼む。」
実は値段が10枚に下がる時は、既に僕の勝ちだが。
ハンスはほっとけない。
ニールは「ホジョハレ」でハンスを見放さなかった。
僕だってハンスさんを二度とあんな生活に戻すわけにはいかない。
「ハンスさん。三枚だ。」
「わ、分かったよ。三枚でいいよ。」
ハンスは諦めが付き、頭を下げた。
「そして今日から、うちで働くがよい。」
「はぁ?働く。無理だな。」
おお、言った。
クズのセリフ。
「うちに働くといっても、別にやらせることはない。好きにするがいい。」
「なに?なんのこと?俺を買え殺し?軟禁?」
出来たらいいなぁ。
でも無理でしょう。
「いいえ、賭場が行ってもいいです。けど借金はだめ。これでどうだ。」
「金もくれて、賭場でも行ける?最高じゃないか!」
「借金はだめよ。」
「わかってる。今度こそやらかしてるわけがないよ。」
まぁ、こいつを信頼するわけがない。
こいつの目は、借金するぞって表情だ。
俺は奥の手を出す。
「よかったら、この餅も一緒に食べませんか?」
「こ、これ・・・」
ハンスはこの餅を見る瞬間、なにかを悟る。
「どうです?この鶏料理もさっぱりした餅も、懐かしい味でしょう。ヘレンのお母さんお手製ですよ。」
「お、お前、知ってるの?」
知っている。
「ホジョハレ」、ハンスが牢屋に入れた時自らは白状した。
彼は未亡人のヘレンのあ母さん、通じていることを。
「知ってる。母さまとのことも。ハンスさん以外とヒモのセンスあるだよな。」
ハンスのもう一つのあだ名は、「アラサーキラー」。
「ホジョハレ」のおばさんキャラは、こいつに会ったら、ほぼこいつと通じている。
ただし長寿な種族は除く。
そして僕の母さんも。
まぁ、ハンスとヘレンのお母さんと僕の母は、まだ30越えてないけど。
5年後の話だから。
「そ、その。」
「父様にバレたら。死ぬよ。」
「わ、分かったよ。し、借金はしないよ。」
「約束ね。」
「あと家で母さまと、なら。それもまた死にますよ。」
「わ、わかってるよ。」
最後までは父親の威厳を借りたが、まぁ、ハンスは大人しくしていればそれでいいでしょう。
聖剣は手に入れた。
僕は真珠を見る。
「こ、これは。」
未来は変わってない、僕は死ぬ。
しかし、占い師のトンクスさん曰く。
歴史に変える痕跡は大きく残った感じはした。
「手応え、ありか。」
この調子で、デッドエンドを回避しましょう。
03話は、11月11日更新する予定です