4・検証したり採取したり
ストック切れるまで(あと数話)くらいは更新しっかりしようとおもいましたまる
「よし、今日は森を目指そう」
SLF2日目、ログインしてみると丁度ゲーム内は朝方だったので採取をしに森へ行こうと思う。どうやら基本的に草原は戦闘のチュートリアルステージの様で森からが本格的なゲームの開始地点らしいのだ。
帰りの電車内で軽く公式サイトを見たら丁寧に序盤のゲームの流れが書いてあった。
しかしいくら序盤だからと言って油断していると痛い目を見るのがゲームだ、準備はするに越したことはない。
ので。
「採取に必要な道具ってあるんですかね?」
「いきなり来たかと思えば……大概の植物はナイフで採れるな、鉱石なんかだったらピッケルが必要だがな」
「魚の解体に使ってるナイフでも代用できますかね?」
「いや、やめておいた方がいい。逐一洗浄できるなら別だが基本は別々に用意するな」
一応下調べ兼昨日のスライムのドロップを売りに来たのだ、ちなみにドロップは魔石と呼ばれるガラスの様な石である。
コレクションしても面白そうだがスライム相手ならいつでも手に入るし今は金が欲しい。
「では、そのナイフって鍛冶屋にでも行けばいいんですかね?」
「いや、此処でも売ってるぞ」
「じゃあこの魔石の買い取りと一緒にお願いします」
「スライムのだが……中々大きいのがあるな、ナイフが3000Gだが差し引きで1700Gってとこか」
意外にするんですね、ナイフ一本なのに。むしろ採取専用だから高いのか。
しぶっても仕方ないので代金を払いナイフを受け取る、革製のケースも付いてきたので装備するのも問題なさそうだ。
採取ナイフ ランクD 品質C 耐久2500
採取用のナイフ、採取以外で使用する場合に耐久値を大きく消費する
どうやら採取専用の様だ、耐久値が0になると壊れるだろうから気を付けないとな。
早速インベントリから装備してみると魔術師のローブの腰付近にベルトと共に現れた、手に取りやすい位置だし意外としっかり固定されていて抜きやすそうだ。
一応抜いて確かめてみると刃は短めでグリップに指を通す輪がついている、湾曲した刃は鎌の様に使うのだろうか。
ヘルプウィンドウが表示されているのを見ると、どうやらこのナイフは逆手に持って使うようだ。
鎌の様な形なのはそのまま鎌のように使うためらしい。
「あー、魔物相手にはあんまり使うなよ」
「壊れやすいので?」
「使えないこともないが小まめにメンテナンスしてやらないといけなくなるな」
「わかりました、気を付けます」
「まいど」
そうして雑貨屋を後にして昨日と同じ様に門を抜け、草原へと出た。昨日よりも時間が早いからなのか何人かがスライムと戦っているのが見えた。俺の様に遅れて始めた人だろうか…?
幸い人はそれほど居ないようなので邪魔にならない位置で準備運動としてスライムを倒していく。
昨日と同じ要領で石を使い敵対、飛び掛かりを迎撃で3体ほど倒していく。タイミングや体の動きも大丈夫そうだ。
次に昨日ログアウト後に考えたアーツの使い方を試してみる事にする。
「防御展開」
最初は魔術防御、手を覆う様に展開し飛び掛かってくるスライムの体当たりを受ける。軽い衝撃を感じたがHPバーに変化は見られなかった、完璧に防御できたという事だろうか。
一旦距離を取って体勢を整え魔力防御を纏った手で飛び掛かってくるスライムを打ち返す、一応ダメージはあるのかスライムのHPバーが黄色に変化する。
昨日は素手で打ち返したりもしたが威力は先ほどの半分以下ぐらいだったはずだ。
2発目を決めるとスライムは光のエフェクトになって消えていく、どうやらこの魔力防御は攻撃力の底上げも可能らしい。原理としては盾で殴るとかそういう物だろうか。
次に試す事はスライム相手だとやりにくいので森の近くへとやってきた、伐採された切り株がちょうどよく何本かあったのでこれを標的に試そうと思う。
試したい事はマジックショットは何かに触れていても発動できるのかという事だ。一応掌の上や拳の前など手を中心に近い場所に出てくるのだが、そこが塞がれていると一体どこに出現するのか気になっていたのである。
カウンターを狙って先出しする時はいいが相手に触れた時など、後出しだとどうなるのか。
切り株に手を当て、マジックショットを発動する。
そこまで力を入れた覚えはなかった……むしろ軽く触れるだけにしていたはずなのにバギィッと音を立てて切り株が抉れる様に吹き飛び、パラパラと細かな木片があたりに散らばっていく。
「うわぁ……すごい事になっちゃったぞ……」
軽く触れている程度なのにこの威力、おそらく普通に使うよりもはるかに高威力に違いない。多分。
検証として普通にマジックショットを発動して切り株に当てたところ、軽く抉れるだけで先ほどの様なすさまじい事にはならなかった。
検証とか考察が好きな人ならこれでしばらく楽しい時間が過ごせそうだが、生憎俺はそっち側ではない。それなのでアーツは相手に触れている状態でも大丈夫で強いと思う事にする。
次に攻撃用のアーツを魔力防御のように展開できないかという実験だ。
これは純粋な興味なのだがアーツを発動してその場で維持できるかという検証だ、マジックショットは発動してから直ぐに判定が消えてしまうのでタイミングを取りやすく出来ればなと思っている。
「マジックショット」
イメージは手のひらの先にまとわりつく感じ。
しかしながらアーツは光球とはならずに魔力防御のように展開された、一応成功という事だろうか。
見た目は少し眩しい魔力防御だ、腕を動かしたりしてみても特に何も起こらない。しかしMPゲージはじわじわと減っているので長時間の維持は控えよう。
予想通りとはいかずともおおよそ目論見通りの結果に喜びつつも両手に展開してみたり、魔力防御と同時に展開したりと試せる事をしていく。
どうやら同じ手にアーツ2つは同時に発動できないが、片手ずつに別のアーツは発動できる上に維持する事自体には特に意識する必要はないようだ。
意識する必要があるのは発動までというのは結構ありがたい。ただ消費MPはガンガン増える。
こまめにオフにする事を心がけておこう。
ならば次は実践あるのみと、森の中を歩く。
そして直ぐに見つけたのはデッサン人形の様な人型の何かだった、顔と思しき場所には落書きが施されており手には棍棒を握っている。
こちらもまたスライムと同じように同じ場所をぐるぐると回っている、時折周りを気にしている様な素振りを見せてはいるが俺が見つかっている様子はない。
というか目も耳もないのにどうやって周りの様子を探っているのだろうか……。
――カタカタ
周りに他のマネキン(仮)は居ないようなので真正面に躍り出る。俺が突然現れたことに驚くような反応を見せたが、マネキンはすぐに棍棒を振り回しながら此方へ走ってくる。
「防御展開」
適当になんちゃって拳法の構えを取り、マネキンの攻撃を待つ。
そしてマネキンの大振りな攻撃に合わせて棍棒を叩く様に軌道をずらす、体術スキルのおかげか体は思った通りに動いてくれる。
何気なく攻撃は見切れているが、現実なら余裕で顔面にもらっているだろう。
HPバーをちらっと確認すると変化は無く、上手く捌けたようだ。
「ほっ、ふん!」
二度、三度とどんどん攻撃を捌いていく。今度は上手く捌けていないのかHPバーが少し減っているが直撃は免れているようで俺としては十分だ。
「マジックショット」
最後に攻撃アーツを片手に纏わせ、体勢を崩したマネキンの顔面に掌底を叩き込む。
パンッと乾いた音と共にマネキンの頭が吹き飛び、体が光に変わってその場に崩れ落ちていく。
「ふう……」
一息ついてマネキンの残骸を探る、スライムの場合は体内の核がその場に落ちるだけだったがドロップが何種類かあるモンスターは残骸として残る光の中にドロップが埋もれているとの事。
時折、この残骸ができない時もあるらしいが大抵はできるので逆に見れたら運がいい?らしい。
・薬草 ランクF 品質G
傷薬およびポーションの原料、品質が悪く加工しても効果は薄い
・魔石 ランクG 属性:無
魔物の体内で生成される結晶、それなりの値段で売れる
どうやら今回は2つのドロップのようだが、薬草と思しき草はボロボロで説明を見なくとも品質が悪い事はわかってしまう程の物だ。
使い道もないので今回はそこら辺に捨てることにしよう。
上手くいった戦闘に喜んでいたが、慌てて周りを見てみる。
モンスターも居なければプレイヤーの姿もない、結構長い時間マネキン相手に練習していたし最後の一撃は結構大きな音が出たから他のモンスターが集まってきたらどうしようかと思ったが杞憂だったようだ。
そもそもドロップ確認の前にしなければ意味が無いような気がするな、今度からは気をつけよう……。
このままレベルを上げてみたいが、所持スキルに未だに使ってない採取がある事を思い出した。
ちょうど森だし薬草とかの売値とか確認しておきたい、自分でポーションとかにする方がお金になりそうだがスキルやら熱意やらが足りないのでやめておくことにする。
やりたくなったら始めればいいや程度だ。
木の根元や茂み、岩の陰などちょっと周りの草とは様相の異なる草を刈り取ったり気になった木の実なども採取して確認してみた。
・薬草 ランクF 品質C
傷薬およびポーションの原料、品質は良好でそのまま使ってもある程度の効果がみこめる
・しびれ草 ランクF 品質C
食べると体がしびれる毒草、麻痺毒や麻酔、痛み止めの原料となる
・辛子草の実 ランクE 品質D
とても辛い実をつける草、地方によっては香辛料とし使用される
・リンゴ ランクF 品質A 鮮度100(60時間後に0)
森に自生する果実、甘酸っぱく美味しい
ほかの草は全て雑草と表示されたのできっと使い道はほとんどないだろう。
最後に見つけたリンゴは美味しそうだったので試しに食べてみることにする。
「意外とおいしい」
甘さは控えめだが爽やかな酸味とみずみずしさで美味しい、朝とかに食べたい味である。
そういえばこのゲーム内での初めての食事になるが、食感や味はとてもよく再現されている。これは街の屋台への期待が膨らむな。
「薬草は見分けがつけにくいな…」
あの後、更に集めてみて分かったが細長い葉を持つ薬草は一見するとそこら辺に生えている雑草だ。
一応日陰になっている場所に群生しているようだが、それでも半分くらいは雑草だ。
――カタカタ、カタカタ
薬草を採取して茂みから出てみると、本日4回目となるマネキンと遭遇した。しかも2体。
先ほどまでの薬草集めの時にも出会っているのだが全て1体で行動していたため脅威とは感じなかったが今回は初めての2体だ、少し用心していこう。
まず俺はなるべく2体を正面に捉える、できれば2体を直線に並べる事を意識する。
どこかで読んだが集団戦では並べて各個撃破が基本とかあったし、1体相手にするのなら先ほどまでと変わらず難しいことじゃない。
「マジックショット」
先手必勝、一撃必殺。
マネキンは隙が大きいので先ほどの薬草集めの時に現れた奴と同じように先手を打って仕留める。下手に様子を見るよりも電撃戦が有効なのだ。
あっさりと1体目を倒し、ステップで距離を取ってから残りの1対も攻撃を誘い魔力防御で受け流してからマジックショットで撃破することができた。
「なんだ、意外と簡単じゃないか」
ドロップ品の魔石を拾い、一旦森を出る。
インベントリの薬草がかなり集まってきたので一旦街へ売りに行こうと思う。
その後は釣りでもして……あ、今度こそ屋台で買い食いもいいかもしれないな。そしたらまた森にでも行こう。
はんだ
種族:ケットシー 職業:魔術師 Lv.2
装備-武器:なし
頭:なし
胴:冒険者のローブ
腰:なし
腕:なし
足:なし
他:なし
スキル
<体術 3><釣り 2><魔力操作on><発見 2><採取+ 2>