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43・お刺身と醤油

短いけどきりがいいので


 「醤油……!」

 「醤油か!」


 小皿には茶色の液体、醤油かと言われれば醤油であると言えるだろう。少し色が薄いような気がしなくもない。

 というかいつの間に醤油なんて作ったのだろうか、発酵食品だし発酵までに時間がかかるだろうし……。ゲーム内時間でもそんなに早くはできないだろう。


 「発酵期間というかすぐできる物じゃないですよね」

 「実はこのゲームに限らないんですが発酵時間はかなり短いんですよね。これは現実時間で1日です」

 「なんと……」

 「へぇ~」


 意外な真実、発酵に限らず作成に時間を有するものはゲームの仕様でかなり短時間でできるのだそう。パン生地の発酵は5分くらいでふくらむのだとか。


 自分は知らなかったがこういう味覚が再現されるゲームにおいては味噌醤油は率先して作られるのだとか、日本人が海外旅行でホームシックにならないために醤油を持っていくみたいな心理なのだろうか。

 そのため味噌醤油を作るノウハウは結構溢れているらしい、問題は麹の作成なんだとか。


 豪さんの熱弁はほとんど頭に入ってはいないが、最近ようやく形になった……とだけ理解しました。

 

 「という訳で刺身に使おうと」

 「なるほど、ちょうど魚を捌いてもらおうかと」

 「お、ただ飯?」

 「ただ飯」 

 「やったー」


 まな板まで出してくれているのでその上にアジとカワハギを置く、待ってましたとばかりに豪さんが手早く包丁を出しアジとカワハギを捌いていく。

 アジは何度か見た三枚開き。そのまま半身から骨を丁寧に抜いて皮を引き薄切り、皮目の銀色が綺麗な刺身の出来上がりだ。


 カワハギは頭を落としてから手で皮を剥ぐ、実際に見ると誇張無しにカワハギなんだなぁと感心してしまうほどだ。

 そのまま3枚におろして刺身に。


 「肝もしっかりしてていいですねぇ、これは肝醤油にしましょう」

 「おー」

 「おおー」


 包丁で叩いた肝に醤油を加える、なんとも言い難い色にはなったがおいしいのだろうか。

 

 「それではいただきます」

 「いただきます」

 「いただきます」


 まずは普通の醤油でアジをいただく、身がしまっていると言えばいいのか。しっかりした身は食べごたえがあっていい。薬味が欲しいが鮮度がいいお陰で臭みもない。

 次にカワハギ、これも普通の醤油。あっさりとした淡泊な身、これは単体で楽しめるタイプの魚という感じだ。


 「肝醤油すげえ……」


 夜叉゜(やしゃまる)さんが呟く、箸が完全に止まっている。それほどの衝撃だったのだろうか……、恐る恐るベージュ色に染まっている醤油に刺身をくぐらせる。肝が浮いているのか、これ。


 「おお……」


 濃い、第一印象はそれだった。バター醤油ともちがう、卵を加えた味というか独特のコクがある。

 確かに醤油だけのとはかなり味が変わる、これが脂……。

 

 「旨いだろう?」そんな笑顔で頷いている豪さん、なんであなたが得意顔なんです。

 でもおいしいので2枚目も肝醤油、3枚目は普通の醤油。夜叉゜さんとあっという間に平らげてしまった。


 「あーおいしかった」

 「素敵でしたねぇ」

 「いやぁ、これどこで釣れたんです?」

 「えーと、祭りの準備をしている街ですね。船から釣れましたよ」

 「なるほど、身内に情報を流してもいいですかね?」

 「どうぞどうぞ。あ、でも船に乗り込むのにこのバンダナみたいなのが必要らしいですよ」

 「あーそれクエスト数こなさないといけない奴だろ」

 「それはまぁ大丈夫でしょう」 

 

 お茶……っぽい飲み物を飲みながら他愛ない会話で盛り上がる。夜叉゜さんも自分のバンダナと同じ効果の耳飾りを貰っているらしい。そのほか短剣とか腕輪とか色々な形で証を貰えるらしい。


 豪さんが情報のお礼にと醤油を瓶でくれたのでそのうち何かに使ってみる事にしようと思う。

 

 「じゃあ自分はここで」

 「おつかれさまー」

 「おつかれさまです」

 「それじゃあ」


 クランハウスを出て船へと戻る、時間もいい感じだしハンモック設営場所を探してログアウトする事にしよう。

 探すと言っても実は目星がついている。


 それは船のマストの上だ、見張りとかで使う高台?があるのでそこを使いたい。許可をとった方が良いのかもだが今は時間が微妙なので怒られたらそのまま怒られよう。

 という事で、早速マストに登る。縄梯子が下ろされているから苦労はしない、途中で海の方を見てみると果てしなく広がる水平線。なんて広大……。


 感動しながらも登り切る、ちょうどそこは想像よりも少し狭いくらいの円状のスペースだ。多分ハンモックは設営できるはず。メニューから設営を選択してみると落下防止用の高めの手すりに吊るす形で設置できた。


 揺れるとマストや手すりにぶつかるがこんな高所で揺られても困るのでちょっと安心。

 ログアウトの準備もできた、あとはハンモックに揺られるだけだが景色の写真を撮っておこう。


 これが夕暮れ時ならば水平線に沈む太陽が見れたかもしれないが、この海ならばいつでも写真映えするだろう。

 

 「チーズっと」


 撮った写真を確認する、ブレも無くてキレイに撮れている。よし寝よう。


 落ちない様にゆっくりとハンモックに寝そべりログアウトを開始する、流れていく雲を見ながらゆっくりと意識が引き戻されていく。

 

 明日はなにから始めようか。

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