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38・ダンジョン攻略

なんとか月2回は更新したい気持ちでいたら7月になっていた




 「私はクラン『猟犬(ハウンズ)』のぐんそー、こっちはパーティを組んでいる……」

 「同じく『猟犬』のヒサカキです、ヒーラーです」

 「『猟犬』のらぶでりです、レンジャーです」

 「左に同じく、ララデコイト。キャスターです」

 「どらやきです、この前ぶりです」

 「はじめまして、はんだです……どらやきさん?」

 「うん」


 案内された街(仮)には住人やプレイヤーがごった煮の状態であれやこれやと荷を運び、道具を振るう。ある所では神輿っぽいものが組み上がってたり大鍋で炊き出しっぽいとこしてたりと混沌とした活気に満ち溢れている。


 確かに道は広いし建物は低い、でもなんか街の規模以上に船が多い。


 やがて梯子で繋がれた船を何隻か渡った先で今回一緒に冒険するプレイヤー達と合流と相なったわけである。


 ぐんそーさんは堀の深い顔が中々に渋い長身の男性、大きな盾とゴツイ鎧が如何にも騎士って感じだ。

 ヒサカキさんは白いローブとくせっ毛気味の金髪がかわいらしい小柄な女性。長めのロッドが小柄な体を強調している。

 らぶでりさんはどっかで見たことあるような緑の服と革鎧の華奢な男性。装飾とかは少ないシンプルな装いだ。

 ララデコイトさんはぐんそーさんに負けず劣らずの体躯の男性だ、その杖が無ければ完全に近接職って感じ。


 ちなみに全員犬系の獣人とのこと。犬耳と尻尾が付いている。


 最後にどらやきさんだが……性転換していた。銀髪はそのままにストレートロングでキリッとしたクール美人になっていた。犬耳と尻尾は健在だが。


 「……ボーラーにこっちのほうがいいって」

 「なるほど」

 

 転生時に性別も1回だけ変更できるらしく、思い切ってリアルと同じ性別に変えたのだそうだ。

 このどらやきさんの様子だと2人の関係は進んだとみていいのだろうか……あとでヌカカメさんにそれとなく聞いてみよう。げへへ。



 簡単な自己紹介も流れる様に終え、早速ダンジョンへ向けて移動が開始された。

 プレイ時間にも余裕が十分にある。


 2隻の船に船乗りさん達と共に乗り込み海へ、雨は止んだが雲はまだ晴れてはいない。

 そして移動時間中、プレイヤーにはやる事がないので自己紹介の続きというか色々な情報共有タイムとなった。


 まず気になったので聞いた猟犬なんて名前のクラン、バチバチの武闘派って感じではあったがどうやら犬耳キャラクター同好会が中身なんだとか。なんでそんな厳つい名前なのかは謎らしい。

 自分の種族にも話題が振られたが転生条件とかは余然分からないと答えておいた。


「ここからは戦闘についてだ、ねこさんとどらやきさんのスタイルはある程度把握している」

「ぐんそーがタンクとしてヘイトを集めるので漏れを重点に狙って好きに動いて下さい」

「了解です」

「わかった」

「ダンジョン内はぐんそーを先頭に進みますよ」


 そういえば初の複数人ダンジョン、タンクを先頭に進んで集団戦闘時はタンクが引きつけられなかったものを各個撃破していく流れらしい。基本的には自分を狙ってきた敵を狙えば基本的にはいいとの事。

 一応クエスト内容の確認画面でダンジョンの大まかな情報が見れるらしく、レベル的にも自分が少し足りない程度で他のメンバーは余程の事が無ければ苦戦はしないらしい。頼もしい限りだ、存分に頼らせてもらう事にしよう。


 やがて崖に空いた洞窟の中へと船は進み、桟橋へと接岸した。

 

 「いつもはモンスターなんていないんスけど、今年は何故か住み着いちゃったみたいッス」


 ツルハシを持った船乗りさんが困った様な笑みを浮かべて説明をしてくれた。

 なるほどプレイヤーが先行して安全確保していく、そんな感じのストーリー……。


 全員が船から降り、船乗りさん達を待機させいよいよダンジョンの入り口へと足を踏み入れた。ひんやりとした空気と薄暗さがなんともホラーチックというか不気味だ。

 なんと言えばいいのか、ホラーの暗所とRPGとかの暗所の違いというか……伝えにくいこの不気味感。

 

 ともあれ薄暗いとはいえ等間隔で何故か最低限の灯りもあって比較的安全な暗闇を進んで行く。一応いつでもアーツが発動できるように心の準備をしておこう。


 「右20に4」

 「了解、全員戦闘の準備を」

 「了解」


 なんだかカッコいいやり取りを受けて全員武器を構え直す、こういう時に構える武器がないとソワソワしてしまうが銛はまだ出さない。今の役割は中距離からの火力、近接は自重しよう。


 歩を進め、曲がり角で出くわしたのはデカいカニと見たことあるデカいヤドカリ。

 ぐんそーさんがカニへ、どらやきさんがヤドカリへと駆け出し攻撃を開始すると各々動き始める。


 ヒサカキさんの呪文でヤドカリとカニに青いモヤがかかり、らぶでりさんが弓を放つ。放たれた矢は螺旋状の光を纏ってヤドカリのヤドを貫く、どらやきさんのすぐ近くを掠めたのに気にする様子もなくヤドが割れて露出した部分に両手剣を叩きつけた。

 切ると言うより叩くと言うのがしっくりくるような鈍い音と共に甲高いギュワァみたいなヤドカリの悲鳴が響く。


 自分、やる事ないなと思いつつどら焼きさんが反撃を避けて距離を置いたタイミングで先ほどの船移動中に設定したアーツを発動する。


 「ジャベリン」


 投擲槍ってたしかジャベリン、銛は振り回したいけど今回は射出する。ゆるめの放物線を描いてヤドカリのハサミを貫いた。

 予想通りナイフよりもMP消費は大きい、目測ナイフ7本くらい。しかしながら一撃の重さを考えれば結構いい感じではなかろうか。


 水生特攻が適応されてそうな敵であることも含めてもこれは中々にいい。色々な武器を集めて射出してみるのも面白いかもしれないな。


 一瞬だが縫い付けられる形になったヤドカリにらぶでりさんの攻撃が見事に露出した部位に決まりヤドカリは倒れた。

 

 一息つく前にぐんそーさんの加勢に行こうと目を向ければ剣を突き立てられたカニが消滅している所だった。確かララデコイトさんと2人で対処してたはずなんだけど、早い。

 

 「あの2人は大抵一緒なので連携が上手くて下手な人数より早いんですよね」

 「なるほどぉ」


 らぶでりさんからの為になる知識……連携のレベルが違うと人数差もものともしない、また1つゲームの奥深さを知った。

 そう言えばブルーさんとノワールさんも前衛後衛で分かれていたがRPG的なテンプレと言うよりも連携上有利だからだったのかもしれない。


 うん、今後もこうしたパーティーでの戦闘もあるし今回は連携というか邪魔にならない攻撃と動きを意識しよう。


 「そういえば、ドロップ品は?」

 「こういうダンジョンだと最後に一気に目録で貰えますよ」

 「そういうシステムなのかぁ」


 ちょっと気になった事を聞いてみればらぶでりさんが答えてくれる。ありがたい。


 そして武器とかの確認をして集合。ぐんそーさんから少しペースを上げて進軍するとの事なので全員駆け足で進行していく。

 接敵しても速度を落とさずそのまま散開、今度は遠距離から攻撃を仕掛けこちらへと意識が向いたら近接が攻撃するという流れで敵を倒していく。


 移動中もらぶでりさんが攻撃のタイミングだとか連携の流れなどを簡単にではあるが教えてくれた。

 基本はどんどこ攻撃してオッケーとの事だが、ごちゃごちゃすると近接職の人が混乱しやすいので派手なエフェクトの魔法は気を付ける必要があるらしい。

 自分の攻撃はそこまで派手でないので気にしなくてもいいのでどらやきさんに当てないようにさえすれば大丈夫と言って貰えた。

 連携もなにもない気がするが仕方ないね!


 「ねこさんクールタイム短くないです?」

 「他の人と比べた事ないので……なんとも」

 「素手だと短いって聞いたよ」

 「なるほど」


 射程以外も変わるんだなぁと感心しながら順調にダンジョンを進んでいく。それはもうサクサクと、途中でレベルも上がったが後回し、今はこの流れにみを任せるのだぁ……。

 そしてやってきたのは大きな広場、奥の壁面には青い鉱石が露出しているのが確認できる。

 そんなみるからにボスですねって感じの広場の中央に待ち構えていたのは大きな大きなヤドカリ。しかしながらそのヤドにはいくつもの穴が開いており、そこから小さなヤドカリたちが顔を覗かせている。


 「ボスですね」

 「全員装備の耐久を確認」 

 「問題なし」

 「同じく」

 「いける」

 「大丈夫です」


 回復用のアイテムも確認しておく、多分出番はないが保険は大事。備えはあるほど嬉しいのだ。

 最初の戦闘と同じようにぐんそーさんから動き始める、剣撃を放ちボスの脇を走り抜ける。攻撃を受けたボスがぐんそーさんに狙いを定め体を回し大きなハサミを振り上げる。それに合わせてヒサカキさんが先行してアーツを発動させる。


 「いきますよー」

 「おー」


 ぐんそーさんにヘイトがいったのが確認し残りの全員が行動を開始する。

 らぶでりさんが弓を構え、どらやきさんが駆けていく。自分はハサミが当たらないだろうなぁという位の距離から銛を投げる。


 狙いは小ヤドカリたち、大ヤドカリの攻撃後の硬直を狙って射出していく。らぶでりさんとララデコイトさんも同じタイミングで攻撃を加えていく。


 とりあえずと打ち込んでいくが小ヤドカリは意外と賢く宿の奥へと逃げてしまう、銛は刺さっても大ヤドカリ自体にはダメージはないようだ。

 しかしながら20本近く打ち込んでみたがMPにはまだ余裕がある、継戦能力がある事は良い事だ。


 そして攻撃しているのは自分だけではない、どらやきさんが大ヤドカリの足を切断する。大きく体勢を崩した大ヤドカリが土埃を上げて倒れた……倒れたといっていいのか。とりあえずチャンスっぽい感じだ。


 「のりこめー」

 「わぁい」

 「おー!」

 「登ってみませんかー?」


 ヒサカキさんの合図に合わせて駆け出す、と言っても近接できるのは自分だけだけども。

 そしてララデコイトさんの提案に合わせて地面が隆起して足場ができる。ちょうどヤドに飛び乗るのにはうってつけだ。


 せっかくなので足場からヤドへと飛びつき穴を覗き込む。小ヤドカリがいるのを確認したら銛を打ち込んでいく。

 逃げ場がない所を覗き込まれてから銛が飛んでくる、字面は完全にホラーだけど気にしないでどんどこ打ち込んでいく。


 何体か小ヤドカリを倒した所でヤドが大きく揺れた、多分起き上がるのだろう。このまま張り付くよりもらぶでりさん達の攻撃の邪魔にならないように離れるのが吉。


 「バースト」


 離脱もスムーズに、そして追撃もスムーズに。吹き飛びながら放った銛はたぶん住人のいる穴に吸い込まれた。今回は綺麗に決まった、これは気持ちいい。

 着地したら大きめに距離を取るように走る。大概こういう時は範囲攻撃が来るはずだ。


 読みが当たったのかヤドカリはハサミを叩きつけぐるりと体を回転させて周囲を薙ぎ払った、土煙が晴れるとぐんそーさん達の姿が確認できた。無事っぽい。


 「全員警戒っ!」


 ぐんそーさんの声が響く、ヤドから顔をだしている小ヤドカリに水色の光が集まっていく。

 ちょっと電飾みたい、なんて思っていたのもつかの間。レーザーと言ってもいい細さの水鉄砲があたりに発射された。


 










 

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