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34・打ち上げ

とんでもないガバが見つかったり見つけたりしましたが元気です

まぁそんなものですね



 「それでは人類初となるボスゴーレム一撃撃破を記念して……乾杯!」


 『乾杯!』


 胴上げが終わるとすぐに打ち上げへ、集合場所となっていた広場にはヌカカメさんのクランの人たちが色々と用意をしていてくれたようで肉や魚、スープにサラダとビュッフェ形式のなんとも素敵な打ち上げ会場が出来上がっていた。


 目移りしちゃいそうな品々……実際に目移りしていたが、最後に一番目を引いたのはドリンクコーナー……気泡が湧き出るそれはまさに炭酸飲料である。

 正確には炭酸レモン水、ひと昔に炭酸水にはまって以来常備するほどに好きなった物がこのゲームでも飲めるときたらテンションは上がるという物。おじさんでも嬉しい時は喜びますとも。


 「猫さんは炭酸好きなのかにゃー?」


 「よく飲むんですよね、このシュワシュワが好きなんですよ」


 「簡単に作れるからレシピ教えましょうか?」


 「生産スキル取ってないですよ?」


 「基礎レシピなら大丈夫にゃー」


 いつものメンバーとでも言えるほどではないが何かとお世話になっているシソさんとヌカカメさん、あとはじめましての方が3人ほどとの談笑中に教えてもらった新事実。

 生産スキルのシステムを介さなくて作れる物、この炭酸水や魚や肉をただ焼いたものなんかが該当するらしい。アウトドア目的に楽しんだりするためとかなんとか言っていたが……詰まる所それくらいはスキル無くても作れるでしょう的な物だとか色々言われているらしい。


 ちなみにこの炭酸水は水に風属性の魔石を入れて浸けておくか魔石を入れてシェイクすれば完成というとっても簡単なレシピ。あっという間のお手軽さだ。

 風属性の魔石は基本的に飛行する敵からドロップする他、風属性のスキルを取得していると無属性魔石から変換する事もできるらしい。

 ちなみに先の戦いでたくさん打ち落とした黒い鳥などが本来ならドロップするそうです。


 そのためだけに風属性スキルを取ろうかと悩むほどに炭酸という物は魅力的である。葛藤しましたとも、縛っている訳ではないが今の所取らない方向性でいこうという事で纏まった。今。


 「ねこさん、お久しぶりです」


 「……ども」


 「お二人ともお久しぶりです」


 「おーボーラーおつかれにゃー」


 そんな葛藤が終わってやってきたのはボーラーさん……と皿いっぱいの肉をもくもくと食べているどらやきさん、頬が膨らむほど詰め込んで心なしかその鋭い眼光がやわらかになっている気がする。もしかしなくてもこの子食いしん坊か。


 軽い挨拶の後、ダンボーラーさんと談笑するヌカカメさん達を他所にどらやきさんはなにやら此方の方を見てくる、じっと、手と口だけは動かしながら。しかしながらその目つきだけはだんだんと鋭くなっていく、まるで獲物を狙う狩人の目である。

 その目線を追えば自分の持つ皿、骨付きリブロースのトマト煮に注がれた視線でなんとなく事を察してしまう。獲物ですよ、ええ。


 「ここにありますよ」


 「ありがとうございます……」


 ちょうど自分の陰になっていた大皿を教えてあげるとどらやきさんはいつの間にか空にしていた取り皿にごっそりと肉を積み上げもしゃもしゃと食べていく。肉にかぶりつくオオカミの獣人ではあるはずのその姿はさながらリスの様である。見ていてちょっとおもしろいかもしれない。


 「そういえばゲーム内のこういう味覚って現実のままなんですね」


 「あー食べ過ぎるとダイアログで注意がでるっぽいけどね、昔大食いチャレンジで警告無視してログアウトさせられた事があったらしいですよ」

 

 「へぇ~」


 「機械の性能によってまちまちらしいですけどね、あと辛さは一定値超えるとダメージになるっぽいです」


 「痛覚なんでしたっけ?辛みって」


 「そうそう」


 ちょっとした雑学とゲーム知識を交えつつ咄嗟に答えてくれたシソさんとの談笑に花が咲く。いつの間にかおかわりをしていたどらやきさんにボーラーさんが野菜を食べさせてたり、ヌカカメさんがそれを生暖かい目でにやにやしながら茶々を入れたり。なんとも団欒って感じだ。


 それは他のグループでも似たようなものでオフトンさん達がわいのわいのしているのを楽しそうに眺めていたり、好きな様に飲み食いする。正に宴会だ、楽しい楽しい宴会だ。


 まぁどらやきさんとオフトンさんのパーティーでタンクをしていたドワーフのヤマト33号さん、この2人で料理の半分近くを食べているので一部の人は2人がどれだけ食べられるのか賭けまでしはじめたり、そのままやんややんやと大食い対決を始めたりと混沌とした様子を見せていく事となる。


 「この大食い対決でお開きですかね、いやぁ余らせると処分が大変なので助かります」


 「どらやきちゃん頑張るにゃー」


 「次これ出してね」


 「はい」


 シームレスに始まった大食いバトル、食べるだけの機械と化した2人をよそに笑顔で頷く調理班のメンバー、応援……と食べる2人に料理を仕出す自分を含めた数人。仕込まれたかのような、滑らかなスタート……流されるまま給仕をしているがこの2人食べるのがべらぼうに早い。


 せっせと皿を運んでいればあっという間に料理自体は取り皿数枚に差し掛かり、2人も合わせて追い込みに入っていく。その1口はもはや口内の容量限界に近い、そんなに頬張ったら喉を詰まらせってしまいそうでハラハラしてしまう。 


 食べた皿の量だけ見たらどらやきさんの勝利が確定はしているものの周囲の熱狂は最後の1口に向けて勢いを増すばかり。


 「――どらやきの勝利ぃぃぃぃいいいっ!!」



 最後の一口を頬張り、決着のゴング(肉声)が鳴る。高々と積まれた皿と掲げられた腕、両者に向けられた賞賛の拍手。もはやなんだかわからないが一種の感動すら覚えるほどの熱さが会場を覆っている。もはや最初の団欒な宴会の様子など1ミリも残っていない。


 大食いバトルが盛りに盛り上がった結果だがオフトンさんも満足そうに笑っている、これは結果オーライなのだろう。でもこれはこれで楽しかったので結果オーライでいいのだろう、きっとそう。


 もはや今日の主役にまでなったどらやきさんに全員でおめでとうと言ったり、負けたヤマトさんには惜しみない拍手を送ったりと笑いが絶えないまま閉会となった。


 「いやぁ笑った笑った、それではみなさん!お手を拝借!一本締めでいきましょう」


 『よーぉっ』

 

 ――パンッ  

 

 「おつかれさまでした」


 『おつかれさまでした』


 撤収は調理班にお任せとの事なのでお言葉に甘えてお暇する事に、別れの挨拶も済まして街へと戻る。

 なんだか熱が残っているような気がするので路地裏を散歩してからログアウトする。余韻は大事なのだ。


 夕暮れの、街灯に明かりがぽつりぽつりと灯る中ゆっくりと歩く。なんだか雰囲気ある感じでなんだか素敵。

 ふわっふわなテンションなので深呼吸、熱はゆっくりと抜けていきいつものテンションが戻ってくる。よしログアウトしよう。


 明日はメンテナンス開け……ちょっと冒険しに行こう。


  

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