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31・お誘いと新技

いつの間にか時間が過ぎている

修正しました(10/19



 「こんちはー」


 「こんちはっす」


 街に帰ってうろうろと暇をつぶしそうと思ったらフトンさんがログインしていたので早速メッセージで連絡を取り合流する事に。

 世間話で情報を交換……もとい一方的にもらいながら装備の素材とお金を渡して品質をチェックしていく。特に問題がないようでそのまま素材はフトンさんのインベントリへとしまわれていく。


 「はい、じゃあこれが新装備ですよー」


 「え?さっき渡したばっか……ですよね?」


 「ふふふ、これぞ早業……という訳ではなくてこの位の装備ならギルドの在庫で訳なく作れちゃうのですよ!そしてちょっとした頼み事と信用でもって即受け渡しとなるわけです」


 「なる……ほど?それで頼み事とは」


 装備を受け取り、無いであろうほつれや不具合を確かめながらフトンさんへ問いかける。

 こういう場合の頼み事はそんなに大した事はない……はずなので受ける前提で内容を聞く事にする。


 「イベント終盤なので運営がチャレンジレイドなる物を出現させてるんですよね。そのレイドに一緒に行ってもらえないかと」


 チャレンジレイドとは……。フトンさん曰く、イベント中何度でも挑戦できる特殊なクエスト……?らしいとの事。5人パーティーが3つ、合計15人で挑戦するらしい。

 フィールドに大量に湧く雑魚と定期的に湧くボスをどれだけ速く倒していけるかという物らしい、わちゃわちゃとお祭り状態で楽しいとの事。


 報酬は記念缶バッチだけとしょっぱいを通り越して塩辛いが所謂挑戦する事が目的の賑やかしらしくフトンさんはもうクリアしているらしい。タイムを競い始めると地獄らしいがクリアだけならそこまで気張らなくてもよいのだとか。

 そんなレイドに自分が誘われる理由だが単純に数合わせととある実験する際に動画にするのでその客寄せパンダ(オブラートに包まれていた)になってほしいとの事。


 つまりこの頼まれ事、返事は……YESである。楽しそう、今更ながらこのアバターならテーマパークの着ぐるみよろしくいい広告塔になる事だろう。ついでに打ち上げの食事会にも惹かれた、なんとも楽しそうである。


 「せっかくなので参加しますよ」


 「おー!ありがとうございます!いやぁ、内心不安だったんですけどネコさん来てくれるなら成功間違いなしですねぇ」


 デレデレと喜ぶフトンさんは年相応というかアバター相応に見える、書面を見ている時と違ってこう……ギャップ萌え?なんかそんな感じのかわいらしさがある。きっと動画にもファンが多い事だろう。


 ついでに余った素材とあの秘境(仮)で入手したアイテムの買い取りもお願いすると共になにかあの手斧のような小型武器も頼んでおこう。


 「なるほど……秘境も見つけてボスもそのレベルと装備でソロ撃破……猫さんも中々センスありますね。これなら普通にレイドでも戦えそうですよ」


 「まじっすか」


 「まじっす」


 褒められてちょっと嬉しい。すごく嬉しい。

 年甲斐もなく年下に褒められてにやけてしまうのを我慢しつつ査定されていくアイテムを眺める。

 フトンさんによって選別と査定が進められて流されていくアイテム、なんか一種の工場ラインのようであり面白い。


 そんな査定を進めるフトンさんは先ほどまでの喜んでいた面影はない。職人の顔……デキる少女だ。


 「では、アイテムの買い取りと装備の代金の差し引きで10000Gの支払いですね」


 「結構しますね」


 「秘境のアイテムってレア度高いですからね、それに水に鉱石……これは今魔術師に大人気でそれはもう高く……んんっ」


 気恥ずかしそうに咳払いをして軌道修正し、お金を受け取るフトンさん。金額の確認を終えウィンドウを此方へ投げ渡してくれた。

 内容は装備品一式の授受の確認証、サインを書く前に最後の確認と装備をしておこう。忘れる前に。


 ・渡者の服+2 ランクC 耐久10000

 防御ボーナス(小)、魔法ダメージカット(小)、消費MP減少(小)


 ・森の角笠+3 ランクD+ 耐久8000

 魔法ダメージカット(小)、魔法ダメージ上昇(小)


 ・鉄の短刀+7 ランクD 耐久5000

 急所ダメージアップ(小)


 ローブは初期装備から少しデザインを変え、裾に肉球のマークがあしらわれており袖も長めの七分袖、動きやすそうだ。

 笠はそのままトレントの木肌の色をしたシックな色合い、大き目でちゃんと耳が通る様に溝がある。


 装備をしてみるとポーチ類はそのままに服が入れ替わり笠の顎紐を首にかけてある。

 自分で笠を持ってかぶってみると丁度いいサイズであり、耳も違和感がない。何度もかぶり直して感触を確かめてから首にかけ直す、初期配置にしておいて気分転換でかぶる事にしよう。


 短刀は刀身のずんぐりした短くシンプルなナイフだ、刃渡りも短めではあるがナイフと考えると妥当……なのだろう。これは幅がある分短く見える感じか。


 「うんうん、やはりサイズもぴったり……あ、1枚スクショいいですか?」」


 「いいですよー」


 両手を腰に当てちょっと胸を張る様にして写真を撮ってもらう、多分作った人に送るんだと思う。

 満足そうにウィンドウを操作するフトンさん、やはりあどけなさが見え隠れするのはアバター由来というより本人のリアルなのだろう。ちょっとおじさん的に優しくしていくことにしよう、お得意様を目指そう。


 その後、軽くレイドの情報と動画で予習をしておくといい事をリストアップして教えてもらい明日始まりの街のポータル前に集合だと時刻も合わせて教えてもらった。

 そしたらば今日はもうやる事はない……わけではない。アーツとか色々解放されたので分かる範囲で把握しておこう。

 戦力としてはほぼカウントされていないとしてもぼったちよりも動けた方がいいだろう。

 

 そういう訳でこのイベント用の広場から始まりの街の外へと場所を移す事にしよう。


 ●


 やってきました始まりの街の外の農場の外、の少し離れた森の入り口。実験というかアーツの動作確認をしようと思う。明日の自分?知らんな。

 ちなみにワードシステムに関しては現段階だとワードが少ないので余った時間に少しいじる程度にする予定だ。


 まず試すのは『マジックシュート』、物体を飛ばすとの事なので投擲との違いを見ていきたい。

 早速複製した鉄のナイフを手に持ち構える。


 「マジックシュート」


 グイッと引っ張られる感覚に手を放してみるとナイフは空中に固定されたように浮いた、発射される様子は無いがMPバーが小刻みに揺れている。これはMPが消費されているという事なので待機状態……とでもいえばいいのだろうか?一応、待機状態と呼ぶことにする。


 手を動かしてみると手のひらに吸い付くようについて回る短刀、とりあえず近い木に向けてもう一度アーツを発動させてみる。


 「マジックシュート」


 ガスンッと鈍い音を立てて木に突き刺さるナイフ、柄までぐっさりと刺さってます。予想以上の威力です。 

 そのまま消えたナイフを確認して二度目はナイフを投げながらアーツを発動させてみる。


 そのままナイフは一直線に飛んでいき木に突き刺さる、手に握っているだけだと待機状態になるのだろうか……?発動してからの挙動が少しクセがある感じだ。

 さらに次は軽くトスするように手から離す

 結果は空中で待機状態に、そのまま初回と同じで発動できる。まずは投擲する際のブーストとして使う感じだろう、直線にしか飛ばせないっぽいし。ナイフならばアーツ、斧なら投擲がいいかな。


 今度は数だ、一度に出せるナイフは5本。バラバラと放り投げる様にトスしてアーツを発動させる。

 

 3本が空中に留まり残りの2本は地に落ちてカランと音を立てた。そのまま標的の木に向かって射出する。

 ナイフは全弾命中、直径50センチくらいの精度とでも言えばいいのか。そのくらいの円に入ってくれているので恐ろしく精密な物が求められなければ大丈夫だろう。

 

 最後に5本のナイフを出現させて1本ずつ投げながらアーツを発動させてみた、順々に投げ出されたナイフは次々と木に刺さる。

 こちの方が1本に集中できる分精度が高い、状況を見て使い分けよう。MPの消費はこちらの方が大きい印象だが燃費がいいのかそんなには気にならない……気がする。まぁ実戦で使ってから決めようね。


「ワードシステムのヘルプ……はこれか」


 続いてはワードシステムに目を通す、使えるかどうかは別だがいじくり回して今後の諸々への糧としたい。

 現在使えるワードは……『マジック』『ショット』『バースト』『セット』『シュート』『リプロダクション』の6つ、今まで使ってたアーツを分解して組みなおせる……はずである。

 

 しかし組み合わせとした時『マジック』が攻撃属性、『ショット』『バースト』などが攻撃形態となるので実質既存のアーツの組み換えは出来ない。ちなみに『リプロダクション』は複製の事だった。


 そこで『セット』のワードに注目する事になる。これは発動待機状態にするワードらしくアーツの前にくっつけて効果を発揮するらしい。

 そう、『セット』『リプロダクション』『シュート』でアーツ2つ分を一挙動で出来ないかという発想は先ほどのアーツ実験を経たのなら至極当然の帰結である。うん。


 とりあえず、簡単にセット+リプロダクションの組み合わせとセット+リプロダクション+シュートの2つの組み合わせを試してみる。この時点で当初の予定など皆無だが仕方ない、仕方ないのだ。

 発動時の発声も簡素にできるらしく、任意の言語での発動ができるらしい。

 シンプルにそれぞれ「セット」「シュート」にしておく。

 任意の発動設定はきっとワードが増えていくと読みにくくてくそ長い秘奥義とか略して剣とかそんな感じになるのを防ぐためだろう。……でもちょっと言ってみたい。


 「セット」

 

 雑念を振り払い早速設定した発動ワードを口にする。

 手をかざしながら発動させればナイフが浮いた状態で出現する、これは成功だ。そのまま射出すればいい。


 「シュート」


 2本目のナイフが出現し仲良く2本のナイフが射出される。うん、後からのやつが優先されてすべてのナイフにシュートが発動するのだね……。気が付けばよかったね。

 このまま区別するならマジックシュートとすれば簡単でいいがそれだとなんか違うのだ。何かといわれると強いて言えば見栄え的な……?カッコつけたいしスマートでいたい、そんな見栄えである。


 「ナイフ・シュート」


 これでよい……、滑らかにナイフが複製されて射出されたのを見て満足。何度か動作確認してみるが結構安定して狙う事ができる様で使い勝手のいい遠距離攻撃となってくれそうで満足。


 ナイフの数も意識すれば実験時と同じように3本までは射出できるのも分かったのでレイドの時にはなるべく中衛くらいを意識していく事にしよう。接敵は控える。


 レイドは2日後、イベント最終日……の前日だ。なので明日はこのアーツに慣れる事にしよう。

 みんなでしょ……レイド、楽しみである。









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