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28・投擲と複製と投擲 

新年ブースト


 11階層からは遺跡群と呼ばれるエリアである、古い石造りの遺跡とそれを覆う森がステージとなっている。うっそうとしていて木の根っこが遺跡を崩しながらも伸びている。


 「えーと『複製』」


 遺跡群のスタート地点、やってきて直ぐに行ったのは先日のボス戦で入手したアーツの試験運用だ。

 ヘルプにあった起動ワードを呟き複製したい武器を想像する。


 今回は購入した手斧、すぐによく見る魔術的な光が集まり手の中で手斧の形をかたどっていく。

 ふわりと手に収まったのは購入した手斧と瓜二つの物だ、重さも振り回した感じも同じと言ってもいい……はずだ。


 そのまま手から離し、床に落とす。カランと音を立てて足元に落ちた斧をそのまま眺めていると10秒ほどで光の粒子になって消えてしまった。

 そのまま2本3本と同時に、次いで時間差で何本も手斧を出しては消えてを繰り返していく。


 「よしよし」


 簡単に仕様をまとめると一度に存在できるのは5本まで、6本目を出した時点で1本目が消える。

 そして同時に出せるのも5本、手に持たないといけないから実質2本までが限界だろう。

 さらに分かったのは起動ワードも別にいらないっぽい、途中から普通に出せた。


 さらに出してから消えるまではおおよそ10秒、消費MPも少な目……というか出す武器の大きさに依存するらしいのでこのくらいの武器を沢山出すのにはかなり相性がいい。今考えている使い方も合わせてもかなり当たりのアーツだ。


 一応あのレアドロップの短剣も複製してみたが、仕様は同じ。消費MPも変わらずと言ったところで強い武器を見つけたら積極的に使えそうだ。と言ってもこの短剣は切り札っぽく大事に使いたい。


 「じゃあいきますか」


 ついに新エリアの攻略だ、わくわくと心配と半々だがまぁ失敗しても再挑戦は簡単だし失う物もない。

 

 最初のフロアは前の浮島よりも二回りほど大きく、中央には不自然な木が1本。

 見るからに怪しい、あれがトレントだろうか……。むしろそうであってほしい。


 早速だが手斧を複製して一度握りを確認して構える。


 「せーのっ」


 サイドスローの要領で手斧を振り投げる、緩い回転をしながら斧は木に食い込んだ。


 ――ッ!!


 布を割くと言えばいいのか、金属音とも違う甲高い悲鳴(仮)を上げて木がうねる。根が持ち上がりのたうち回る。

 幹には顔の様な黒い模様が浮き出して此方を睨み付けている。


 「歩けるタイプかよ……」


 根を足の様にうねらせて蛸の様に動くのではなく何本かがより合わさり、数本の足としてまるで蜘蛛か何かのように地を踏みしめて此方へと向かってきたのだ。

 決して速くはないが大きな体故にその迫力は川辺の泥人形よりある。


 「様子を見ながらっと」


 一本の根が槍の様に突き出され、それを横へ避けて部屋の外周を回る様に走りながら斧を投げる。

 狙ったのは根の付け根、切断出来ればなという淡い期待と外しずらいだろうなという打算だ。


 トレントはこちらを捉える為に旋回をするがその動きは鈍重、その間に斧が根に食い込みトレントは根を暴れさせる。

 2本目3本目と次々に動きながら投げ、トレントの根を集中的に狙っていく。


 一方的な遠距離攻撃によってダメージが蓄積し、2本目の根を切った所でトレントが大きく体勢を崩し倒れた。


 「チャンスっ」


 2本の斧を出して投げながらトレントに走って近づく、根からの攻撃がないのを確認しながら一気に間合いを詰めてアーツを叩き込んだ。


 ――ッ 


 独特な悲鳴を上げてトレントは崩れ光の粒子になっていく、一応完勝という形ではある。初戦でこれは中々いい感じだ。次から投擲の精度を何とかしていけば効率は良くなるはずだ。2体以上いるとそれは大変だが各個撃破を心掛ければ……いけるかな?



 それはともかく戦利品だ、トレントの皮が出てくれれば万々歳。


 ・木材 ランクC 

 丈夫な木材、加工も容易で初心者でも扱いやすい


 長さ2mほどの角材が出てきた、この大きさでも問題なくインベントリには入るのだろうがまさか木材とは……。

 トレントだったら魔術師が使う杖の原料とかなんか薬に使える葉とかではないのか……。


 いやまぁ、初回だし今後繰り返していけば皮も出るだろう。


 「どんどん行こうか」


 直ぐ隣に続くエリアにもトレントらしき木が見えるのでささっと倒す事にしよう。

 手順はなんとなく掴んだし距離だけ気を付ければ大丈夫なはずだ。


 「くらえっ」


 今度は1本目が当たる前に2本目を用意し、動き出した根を目掛けて絶え間なく斧を投げていく。

 こちらへ動き出して攻撃するのが見えたら避けて大きく後ろへ走ってまた斧を投げる。


 根を切って倒れたら近づいてマジックショットをぶち込むだけ。


 「ふぅ」


 様子を見なくてもいい分斧を出し惜しみせずに投げられる上に数をほぼほぼ気にする事もない、やはり当たりアーツじゃないかな?もうこれ強アーツ認定でいいんじゃないかな?

 今まで無かった遠距離攻撃、これは戦闘の幅も広がるし何より結構楽しい。


 ナイフとか投擲武器って一種の憧れというかカッコイイって思うからね。自分で出来るってなるともうこれはテンション上がるというものだ。


 「忘れる所だった……」


 手早く倒せた嬉しさでドロップアイテムの確認を忘れていた、危ない。

 

 ・トレントの皮 ランクC 

 トレントの樹皮、軽くて丈夫なため森の奥に住むエルフが好んで使う


 早速手に入った皮だ、大きさは座布団ほどの大きさだ。厚みもそこそこあるが曲げても割けたりする様子は無い。

 これをどう加工するかはわからないが確かに丈夫そうだ、装備に一歩近づけたのでテンションが更に上がる。


 「えーと必要数は……」


 渡されていたメモを確認するとトレントの皮は4個必要らしい。これは予備の素材も含まれてるらしく、余った際には買い取ってくれてその分値引きされるとの事。

 生産系の事はよく分からないが規約があったりと思っている以上にしっかりとしているみたいだ。


 一瞬仕事の様だとも思ったがそんな夢のない事を思うべきではないと頭を振って忘れる事にした。

 なんにしてもこの調子なら直ぐに集まるだろう。

 

 「なんて思ってた時期が僕にもありました」

 

 意気揚々と振り返って次のフロアを見て足が止まる。

 見るからにトレントですよって木が2本、そして此方に気が付いていないのか別の方向を向いているオオカミが1匹。


 「なぁんでいきなり数が増えるの……」


 いや何とかなりそうとか思った直ぐこれだよ?フラグ回収って速度じゃないよね?

 


 ――一度落ち着こう


 深呼吸をして作戦を考える、この場合このまま突っ込んでも3対1という圧倒的不利な状況での戦闘になる。それは自分の実力を過大評価してもかなり厳しい。強アーツがあってもだ、慢心はイケナイ。


 つまり各個撃破、危険度で言えばオオカミがトップだ。こいつさえ何とか出来れば後は何とかなりそう……たぶん。

 ならばどうやって倒すか、今考えられる方法だと()()しかないだろう。


 オオカミにだけこちらに気付かせこれを撃破、後にトレントへという流れ。丁度良く遠距離攻撃もあるしオオカミにだけ気付かせるのも可能だ。


 「なれば……いざ」


 一度大きく息を吸って吐く、手を合わせて複製するのは碧霊の牙だ。牽制とは言えなるべく強力な攻撃にしておきたい。早速の切り札だが出し惜しみは負けフラグだ。

 あとなんとなく手を合わせて出したけどこれカッコいいな?


 フロアの外から勢いをつけて投げる、なんかフロアごとに隔離されてて攻撃できなかったらどうしようかと思ったが青いナイフはそのままオオカミの肩に深々と刺さった。


 ――ッ!?


 突然の攻撃に驚いた様に吠え、直ぐに此方を睨み付けるオオカミ。そのまま此方へ駆け出し口を開けて噛みつこうと飛び掛かってくる。


 以前に相手をした経験があったお陰かナイフを口に目掛けて投げながらマジックバーストで距離を取る。

 そのまま3本目、4本目と投げ続ける。オオカミには3本目が刺さりかなりのダメージを与えられたように見える。


 2度目の飛び掛かり、今度はそのまま正面から掌底を叩き込む様にマジックショットを叩き込む。

 カウンター気味に入った攻撃はそのままオオカミの身体を光の粒子へと変えていった。


 ちょっと調子に乗ってカウンターなんて狙ったけど、普通に安全取った方が良かったかな……。

 いやでも初撃から狙えたかな……せっかく素手で戦ってるんだし……。


 「ロマンでいこう、フトンさんも言ってたし」


 よし、なんか上向きに考えられたし攻めの姿勢で残りも頑張って倒してしまおう。目指せ素材!


 

 








 

 

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