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2・釣りをしよう

ストックはあと数話ぶんしかない


 「釣れない」


 港に着いてから1人竿をだしてから1時間、全くつれない。たしか脳波がどうたらでゲーム内の時間は現実の時間よりも長いんだったかな、少ない時間で楽しめるとかなんとか。

 とりあえず先ほどの1時間は現実では半分以下の時間しか経ってないという事だ。


 それにしても以外と釣れないものだなとルアーを投げる、一連の動きも最初にメニューの出し方を押してくれたように教えてもらったので問題ない。

 一応ルアーに緩急を付けながら引いたりしているが全く釣れない。


 「俺って才能無いのかも?」


 ふてくされ気味に巻いた糸の先には先ほどと同じようにルアーが垂れ下がっている、金属板を魚のような形に整えた物…メタルなんとかと言うタイプだったと思う。

 ここまでやって釣れないのだから何かしら策を講じなければいけない、意固地になって同じ場所で粘っていたが考えてみれば釣りができるポイントはこの港だけでも幾つもあるはずなのだ。


 「行動あるのみだな」


 堤防を少し歩いては投げ、歩いては投げを繰り返す。時折底を這うように巻いたり色々と試してみる、どうやら根がかりは再現されないらしい様なのでいい加減だが……。

 ちなみに所々ごつごつとした足場があったが問題なく歩けた、痛みというよりも軽い足つぼマッサージに近い感覚だ。


 そうして10投目で竿にグググっと引っ張られる感触、掛かった!!


 「おおおおお!?」


 初めての引きに興奮しながらリールを巻く、魚が逃げる方向と反対に竿を立てながらリールを巻いていく。

 手に汗握る激闘の末に俺は魚を堤防へと釣り上げた。


 ・スズキ ランクE 鮮度100(10時間後に0)

 古くから人々に愛される魚、味はそこそこ良い


 思ったよりも小さかったが、きっと興奮補正とかそんな物だろう……うん。

 それよりも初の魚だ、早速解体をしてみよう。チュートリアルで貰えた解体用のナイフで内臓を取り出してみる。リアルなゲームだしグロイかも…それに知識としては知っているが実践はできるのかと心配したが意外と血は出ないし内臓もそれほどグロい見た目をしておらず、解体自体も上手くいったと思う。

 内臓は取り出してどうやって捨てようか迷っていると光の粒子になって消えてしまった。


 ・スズキ ランクE 鮮度99(24時間後に0)

 古くから人々に愛される魚、味はそこそこ良い。内臓を取り出したため幾分か保存ができる。


 解体したらスズキの表記が変化している事に気が付いた。

 どうやら内臓を取り出すと鮮度の落ち方が変わるようだ、0になったら腐ってしまうのだろうか?そして腐った食べ物を食べると腹を下したりするのだろうか……。


 いや、今は魚が釣れたという事を喜ぼう。港で釣れると分かったからには、あと何匹か釣ってお金に換えてしまおう。

 プレイヤーが開く露店で売るのが良さそうだが、如何せん相場がわからないからNPCの店で買い取ってもらおうかな。


 スズキをアイテムバッグにしまい、再び竿を構えてルアーを投げる。

 なんとなくコツを掴んできたのか1時間ほどで7匹の釣果を上げる事に成功した、なんだか最初の1時間がやるせない。


 しかし新しい魚も釣れたのでほくほくだ。


 ・カサゴ ランクD 鮮度99(24時間後に0)

 見た目は厳ついがおいしい魚、トゲに注意。内臓を取り出したので幾分か保存ができる。


 このカサゴとスズキだけしか釣れなかったが、ルアーの種類やエサ釣りなどを試せば釣れる魚種は増えるだろう。お金が貯まったら釣り具に使うのもありかもしれないな。


 「さて、どこに売りに行けばいいのかな……」



 「全部で1500Gになるね、しっかり処理してあるから色つけておくよ」

 「じゃあそれでおねがいします」 

 

あれから釣り竿を買った道具屋さんで魚を買い取ってくれる店を紹介してもらった、どうやら食材を扱う店らしく野菜に果物、肉に魚、調味料まで揃っている。

 そして釣った魚を見せたところ、中々いい値段で買い取ってもらえたのだ。ほくほくである。


 「そういえば、最近来訪者さん達が多いよねぇ。お客さんも来訪者ですよね?魚を持ってきてくれたのはお客さんが初めてですよ」

 「釣りをしている人はいないので?」


 「ええ、ほとんどの人は街の外で魔物を狩ってくるか、その素材で何かを作る人がおおくてですね。肉はそこそこ持ってきてはもらえてるのですがね」

 「集まる食材に偏りが出たりするのですか?」


 「大きな農場もありますし、小さいですが漁船もあるのでそこまでではありませんね。でも沿岸で釣れる新鮮な魚は人気ですよ、でも切り身にして1人に売る量は制限させてもらってますが……」

 「なるほど……また纏まった数が釣れたら持ってきますね」


 「ええ、これからもうちをご贔屓に」

 「そうさせてもらいます、それでは」


 どうやら食材は大きな金策にはならないらしい、素材もまた然りだろう。しかしながら今のところ使う予定もないのでゆっくり貯めていくのが一番だろう、何事もコツコツとだ。

 そういえば農場があるらしいが農業も面白いかもしれないかな……。


 以外にやりたい事は出てくるし、まずは今後の計画を立ててみるのもいいのかもしれない……計画立てるのは苦手だけども。

 まぁまぁそんな事は置いておいて、今はエサ釣りに切り替えてまだ見ぬ魚をゲットすることを目標にしようか。



 「足場が不安定すぎて怖いなぁ……」


 あれから堤防をうろうろし、結局エサ釣りでなくルアーを投げつつ魚の居そうな場所を探してみているがとうとう街を囲っている壁の近くまで来てしまった。

 釣れたのはスズキとカサゴ、あとアジだが……アジはルアーで釣れるものなのかと思ったがゲームだからだと都合のいいように解釈しておいた。

 そうしてやってきた壁際は大きな岩が海の中まで置かれており、高低差のある足場の不安定な場所だった。

 堤防に置かれていた岩よりも大きくどちらかと言えば磯のような場所だ。


 慎重に歩いてみているが今のところは難なく歩けている、靴が無くても大丈夫だというのは今の状況だとかなり有りがたい。


 岩場は潮の満ち引きで海水に浸かるのか潮だまりがちらほら見え、小さな生き物が動いているのが見受けられる。


 「なんかこういう所って調べたくなるよね」


 潮だまりは海藻やら小さな虫のような生き物が居るが、所々鮮やかな色の生き物が見られるのはファンタジー生物という物だろうか…。真っ赤な貝や黄色の海藻、目が痛くなるようなやつは居なかったが、それでも珍しい物が結構いた。

 そしてしばらく眺めていた小さ目の潮だまりにふと鮮やかな青色に黄色のラインが入ったエビが海藻の陰に隠れているのを見つけた、そぉっと静かに手を伸ばして捕まえようとするとエビは素早く逃げてしまった。


 しかし此処は小さな潮だまり、さしずめデスマッチフィールド、サスペンスのラストの崖の上。慌てず逃げた先を注意深く見れば海藻の陰に隠れた青い身体を見つけることができる。


 「いつまで逃げられるかな!」


 もう一度手を伸ばして捕獲を試みる。

 しかしエビはしぶとく逃げ回る、最初は後ろにしか逃げられないだろうと後ろから攻めてみたがアイツは前にも逃げやがった。どう考えてもその動きはおかしい。


 相手が疲れてきたからなのか、俺が慣れてきたのか数分の激闘の末に捕まえることに成功した。


 「うおっしゃぁ!ゲット!」


 ・轟エビ ランクF+ 鮮度100(30時間後に0)

 一部の地域では食用とするエビ、火を通すと黄色のラインが際立つ。釣り餌にできる。

 

 ようやく潮だまりに両足入れて捕まえたエビはインベントリへと収納された。どうやら食材兼釣り餌であるようだ。

 

 「ならばやることなど……」


 ならばそう、やる事などこのエビを使って釣りしかないだろう。海老で鯛を釣ると言うし出来れば鯛……ないし新種が釣れることを祈ろう、慣用句の意味が違うとかは今は野暮だ。


 善は急げで竿をセットして仕掛けをエサ釣り用に取り換える、こういう作業はゲームだからなのかメニューからの操作で完了した。


 最後に自分でエビを付けるのだが、どう付ければいいのだろうか……。活きが良いからしっかり付けなきゃかな?

 ……外れると悲しいのでしっかり付ける事にしようか。


 「いざ、投入」


 エビが外れない様に勢いをつけ過ぎないように投げる、白波が押し寄せる岩場でもウキがいい感じに浮かんでいる。

 そういえば深さとか考えてなかったけれどももう少し深い方が良かっただろうか?


 「うーん、ルアーと違って待つだけだから何だか暇だな……」


 エサ釣りは待ちの釣り……多分。だからルアーの様に投げては歩いてという探りができないから、なんだか暇というか落ち着かないというか。

 でも潮風と波の音、日差しはそこまで強くない日和での釣りは日ごろ味わえない特別感があるな。

 

 VRに五感が連動するようになってからこうして部屋にいながらのアウトドア体験は今の時代には貴重だろう。

 実際に外に出るべきだとかのめりこみ過ぎて現実と仮想現実が入れ替わるだとか議論はあるみたいだが、俺みたいにインドア派にとっては時間と分別さえ気を付ければこれほど素晴らしい物はないだろう。


 「まぁ、何事にも適度ってあるよね゛ぇ゛っおおおお!来た!?」


 柄にもなく真面目な事を考えていたらウキが沈んで竿が引っ張られる、咄嗟に竿を立てると今までにない引きを感じる。

 大物の予感に興奮しながらも、バラさないように慎重にリールと巻いていく。無理に引き過ぎないようにしながらもチャンスと見れば大胆に巻いていく。


 先ほどまでの釣りの経験のおかげか相手の引きに合わせて糸を引けている気がする。


 ようやく近くまで来たところで相手の全容がうっすらと見えた、黒い影に黄色のラインの姿がゆっくりと引かれてくる。抵抗も弱くなっており釣り上げるのも時間の問題だろう。


 しかしそうは問屋が卸さなかった、すこし気が緩んだ瞬間を狙っていたかのようにやつは勢いよく暴れブチンと糸が切られてしまった。

 突然軽くなった竿を制御できずに勢いよく仰向けに転がってしまう。


 「ごぼぉぼぼぼ」


 痛みはほとんど感じなかったが突然の水の冷たさと息苦しさに驚き焦る、すぐに潮だまりだと気付けば慌てながら手をついて起き上がる。

 絶対に海水を飲んだと思ったがしょっぱいとは感じなかった、ゲームの補正というか仕様なのだろうか。でも水を飲んだという感覚も息苦しさもあった、ちょっと変な感じだな。

 更に言えば濡れたという感覚はあったのに服はおろか体も濡れていない、いかにも水分を含んで重くなりそうな体なのに。


 「いつぅ…あー逃げられたかぁ」


 竿は無事だったが逃げられたのは悔しい。

 最後に気が緩んだのが敗因だろうね、しかし釣れない相手ではなかったはずだ。

 装備やら整えて再挑戦すればきっと釣れる、俺の中でアイツはここら辺のヌシという事にしてしばらくの目標にしようと心の中でリベンジを誓う。


 でも今回の敗北でやる気がなくなったというか、こう楽しみ切って燃え尽きた感じがするので一旦釣りをやめて街をブラブラして…街の外に出て戦闘でもしてみようかな。

 竿をしまい、来た道を帰る事にする。一度通れば体が慣れてくれたのか行きよりも難なく歩いていけた。


 そして釣った魚は先ほどの店で売ったところ2000Gになった。これで所持金は3500G、釣り竿分は取り戻せた計算だ。


 ちょっと重くなったように感じる所持金を眺めながら、俺は古風な街並みを眺めつつ街の外へと歩き出した。



 

 

はんだ

種族:ケットシー 職業:魔術師 Lv.1

装備-武器:なし

   頭:なし

   胴:冒険者のローブ

   腰:なし

   腕:なし

足:なし

   他:なし

スキル

 <体術 1><釣り 2><魔力操作on><発見 1><採取+ 1>

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