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25・VSボス戦

やる気が出るとがんばれる

 ――10階層に到達しました、スキル制限数を10に開放します


 景色が晴れるとそこは小さな小島だった、正確には自分たちがいるのは小さな島でその先には大きな浮島。

 これまで見た事のない大きさの……サッカーグラウンドほどの大きさの島だ。そして更に先にはポータルもある。

 一直線につながった小島3つ、どうみてもボスがいますね。

 

 目の前に立つ2本のトーテムポールのような柱、きっとボスエリアの境目なのだろう。

 やはりちょっと緊張する。考えてみればこのゲーム初めてのボスだ。


 「うう……もうちょっとレベリングしておきたかった……」


 「何言ってんだ、猫さんよりレベル高いだろうモモ」


 「後衛なんだし俺も回復補助するから安心しなよ」


 「お二人だけでも倒せるらしいですし気楽に行きましょう」


 嫌そうな顔でぼやくモモさんにそれぞれ声をかける、なんだか自分より緊張している人がいると気持ちは楽になる物である。

 ちょっと申し訳ないがかなり気持ちが楽になった、いつも通り動ける……かも。


 「じゃあ軽く先に打ち合わせしておくか、まず俺がタンク。囮をするからな」


 「次に俺と猫さんがDPS、まぁ好きに攻撃すれば大丈夫ですからね。一応ボスはスクラップゴーレムです、脚を攻撃してダウンしたらコアが出てくるのでそれを殴ってください」


 「で、最後にモモとスライムが後衛で回復と護衛。基本的に猫さんと俺のHPだけ見てくれれば大丈夫だ。あと猫さん、俺が合図したらボスから距離を取ってくれ。あと2人はスキルの数の上限が解放されただろうから今のうちにスキルを有効にしておいて」


 「了解です」


 「頑張る……!」


 腹をくくったのかモモさんが背筋を伸ばして頬を両手で挟むように叩く、これなら大丈夫だろう。

 横目でモモさんの様子を確認しながらスキルを有効にしてく、10個までというが今の自分には7つしかスキルがないので迷うことはないのだ。


 そうしてスキルの調整が終わったモモさんが杖を構える、すると出現する青と緑の2つの魔法陣と淡い光、そしてなびく髪とローブ、うわちょっとカッコいい。


 「エンチャント――アドバイタル・リバイバル」


 体が淡い光に包まれる、ステータスバーにはなんかハートマークと盾の小さなアイコンが出来ていた。


 「事前準備はこんなもんかな、それじゃあブルー先頭で入るよ」


 説明こそないがバフだろう、名前とアイコンから体力と防御的なやつかな。戦闘前のバフは基本的だよね。

 以前、モモさんは僧侶をやめたと聞いていたが復帰したのだろうか、しかも俺よりもレベルが高い。


 彼女の様子から緊張はしているが嫌がっている雰囲気ではないので無理に理由とかは聞かないでおこう。

 別にレベルが高いことは気にしていない、断じて。


 それよりも自分の事だ、ボス相手にどれほど戦えるか……もといダメージを出せるかだ。

 気負わなくてもいい環境だけど、やるからにはいい意味で期待を裏切りたいよね。


 「おーし、じゃあ戦闘開始だ」


 ブルーさんが大きな島へ足を踏み入れそれに続いて入っていく。


 ――特殊戦闘エリアへ侵入しました、戦闘が終了するまでエリア外へは出る事ができません。

 

 アナウンスの後、視界が変わる。何もなかったはずの浮島には大量の鎧や剣など古びた装備品や金属部品が散らばっていた。

 そしてそれが動き出し渦を巻いて竜巻の様に1か所へ集まり歪な人型へと形を成していく。


 スクラップゴーレム、確かにスクラップ。頭には兜が集まり胴体は歯車と鎧、腕には武器。なんとなく腕の武器とか飛ばしてきそうな見た目だけど。


 「何度見ても演出凝ってるよなぁ」


 「折角のゲームだしね、凝るでしょ」


 「じゃあお先失礼、ソニック――チェイン・ウォー」


 ブルーさんが駆け出して真っ先に攻撃をしかける、飛ぶ斬撃……自分にない遠距離攻撃はちょっとうらやましい。


 「じゃあブルーがタゲ取ったら合図するのでそしたら攻撃開始ですよ」


 「了解です」


 「モケケ、もう少し待ってね」


 それぞれが武器を構えて準備する、ちなみに俺はいつでも駆けだせるようにしてある。

 一撃目を当てたブルーさんの盾が赤く光る、それが合図だったのかノワールさんの杖に魔法陣が出現する。


 「じゃあ行きますよ!」


 「了解」


 「モケケ、ゴー!」


 スライムは何やら液体を吐き出し俺は駆けだす、というかモケケって名前なのかスライム君。

 ゴーレムはもうブルーさん以外は見えていない様に攻撃を繰り出し、それをブルーさんは躱したりいなしたりする。


 パーティメンバーのHPを見てもほとんど減っておらずあそこまで動ける姿には正直感嘆するほかない。


 「ウェークチェイン・アクセル」


 背後から放たれた光弾が高速でゴーレムに着弾する。それはなんかチュートリアルで撃ったアーツの数倍は速い。

 俺は2発目のアーツと共にゴーレムに接敵する、ゴーレムはこちらには目もくれずブルーさんへ攻撃を続けている。


 「マジックショットッ!」


 言われた弱点らしき足の関節を横から殴る、弾ける音と響くくぐもった金属音。

 横凪ぎに振るわれた腕を屈んで避けるともう一発関節に打ち込む。これ、ブルーさんへの攻撃だよね?ちょっとヒヤッとするわぁ……。


 響く金属音と共にゴーレムが少しバランスを崩した様にのけぞる。


 「猫さん!ダウンさせるんで離脱してください!」


 「了解!――マジックバースト」


 ブルーさんの指示を聞いて距離を取るために飛びのく、アーツの影響が無くなった瞬間にブルーさんは懐へ潜り込んでゴーレムの関節に剣を叩き込む。

 即席連携というかブルーさんが合わせてくれているだけだが流れるような連携にちょっと興奮する、これはテンション上がる。

 

 「――!!」


 金属の軋む音と共にゴーレムが仰向けで倒れ、胸の位置から大きな赤い球体――コアが落ちる。最初見た時はさほど大きくは見えなかったがどうやら鉄くずである程度覆われていた様だ。

 近づく前にノワールさん達のいる方角を確認する、射線の確認だ。フレンドリーファイアはダメージはないっぽいが邪魔になるのはよろしくない。


 少し回り込んでコアへ攻撃を叩き込む、アーツは惜しまずMPが空になる勢いで放っていく。


 「15秒、離脱ですよー!」


 10発ほど殴ったところでノワールさんの号令、リキャストの終わったバーストで離脱する。ブルーさんもしっかり距離を取っていた。

 MPはまだ余裕がある、ポーションはまだ大丈夫だろう。温存しておく。

 

 金属が軋み、擦れてコアを包んでいく。腕だった部分は一度解け周囲を回転しながら別の物へ変化していく。

 安全地帯へと離脱が済んでいるから呑気に眺めていられるが離脱できてなかったらあれに巻き込まれていたんだろうなぁ……。恐ろしや……。


 やがて鉄くずは武骨かつ歪であるがゴーレムのコアを守る盾と大きな鎚へと変化した。最初の腕よりも重鈍な印象をうけるが破壊力も防御も数段上がっているのだろう。


 「じゃあ、速攻でダウンさせるから追撃よろしくなぁ!」


 どう攻めるのかと思案し始めた時ブルーさんが突っ込む、彼の盾が薄青く光る。ゴーレムの鎚の縦振りを身体を捩り、盾で擦る様に躱しそのままスピードを落とさずに足元へ滑り込む。


 「――チャージバッシュ!」


 流れるような動きからおそらく弱点への的確な攻撃、かっこいい。

 自分がやるならもう少し……いやかなり足元へ潜り込むのにもたつくだろう……。すげぇ。

 一撃でダウンするゴーレム、そういえば先ほどのコアへの攻撃にブルーさんは参加していなかったが何か別の仕事があったのだろう。

 そしてそれの結果が一撃ダウン、だぶんそうだろう。


 だがしかしぼーっとしている訳にはいかない、倒れるゴーレムからこぼれるコアへ駆け出し渾身のアーツをぶち込む。

 ノワールさんとスライム君の援護射撃とブルーさんも加わりよく分からないレベルの総攻撃が開始される。


 ――10階層ボスを撃破しました、初回報酬がインベントリへ加わりました


 金属が軋み、少し耳に残る独特な音を響かせてゴーレムが崩れていく。その音はまるで悲鳴の様にも聞こえた。

 そしてアナウンスと共に光の粒子になって消えるゴーレム、その後に現れたのは鉄くずでできた大きな箱だった。

 


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