24・再会とパーティー
今月もう一回は更新したいね
「う゛ぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁん!ねござん゛、だずげでくだざぃ……ごじょぅでずから゛ぁ……」
「みっともないぞ……」
「すいません、うちの馬鹿が……」
「いえ……でもどうしてそこまで……」
現在第9階層、景色に大きな変化はないが採取で薬草やら鉱石が採れる岩など6階層に比べて広く物も多い。
そんな中、エリア最奥の10階層へのポータルで出会ったのは以前森の泉で出会った3人だった。
どうやらこのポータル前の島は共用とで言えばいいのか、ほかのプレイヤーと合流するポイントのようである。
そこで出会った1人は以前、焼きそば試食会でも一緒だったモモさん。現在泣きながらこちらにしがみ付いている、足元にはお供のスライム君が楽しそうに跳ねている。
あきれ顔しつつこちらに謝ってくれている2人はブルーさんとノワールさん、以前より装備が充実してブルーさんは盾と剣が豪華になり鎧も軽装ながらしっかり作りこまれている感が出ている。
ノワールさんは動きやすそうなローブに長い杖、どちらも初期装備とは異なるデザインで正統派な見た目だ……ちょっとうらやましい。
そもそも事の発端はこのポータル前で力尽きて崩れる様に座っているモモさんとそれを慰める2人に声をかけた事だ。
どうやらモモさんが湖畔フィールド、つまりここで稀に出現するレアモンスターこと『きのこはとこ』を探して周回していたがここ数日ログイン時間全て費やしてもついぞ出ず心が折れたのだという。
この類の周回はゲーマーとか廃人とか言われる人ならばできそうだが、一般人にはかなりきついだろう。俺もしたくはない。
それにしてもきのこはとこ……とはキラキラのあいつだ、いやなんとなく分かるがなぜ親戚なんだ?
そして、そんな事は置いておいてそいつの確定ドロップ品『大地の魔核』だが、現在持っている事を告げたところこうなっているのである。
こちらとしては売れるなら別にいいが相場がかなり荒れていてももさんの所持金では恐らくイベント中には買えそうにないとこ。
そして大きいクランが買占めとまではいかないが、かなりの量を買っているせいで売値が釣り上げられ。
さらには今後の入手経路も不明なため今のうちに手に入れたいのだとか。気持ちはわかる。
どうやらその大地の魔核は50万Gは最低値らしくオークション形式とかで出されると70万を超える事もあるのだとか。
見たことの無い金額に皆どうしてそこまで金を持っているのかが気になったが、ノワールさん曰く色々と金策があってそれをコツコツとこなしてお金を貯めているのだとか。
あとクランで出資して購入する事もあるのだとかで結構なお金がこのイベントで動いているらしい。知られざる市場だ、もうそんなにプレイヤー間の市場が出来上がっているとは……。
個人的には格安でモモさんに売ってしまってもいいのだが、先日貝の件でゲームでもやたらめったらばら撒くのはちょっと考えてしまう。健全なゲームプレイのための何其れだ。
つまりはある程度は線引きをしておかないといけないだろう。
それでも……。
「ぶぇぇ……ねござぁん……」
正直この状態の彼女を突き放すのは人としてどうなのだろうか。
人として、猫として。
「一応聞いておきますけど、全財産おいくらなのですか……?」
「3万しかないんです、この子」
「俺らがカンパしても10万」
「ずみまぜん……」
絶望的な所持金だ、というか3万もあるのか。俺は1万くらいだったかな……言わないでおこう。
少し思案してみるが、知り合いというだけでそんな大金をチャラにするのはよろしくないだろう。
かといって見捨てるのも気が引けるし後味も悪い。
「分割払いならどのくらいで払えそうですか?」
「ふぇ……?あ、えーと普段の金策なら1週間で5万くらいです」
「じゃあまず10万前金にして徐々に返済していく形にしますか?利子はなしで」
緩いかな?いやでもゲームだし割と適当でもいいだろう、モモさん50万バックレるような人じゃなさそうだし。そうなったらすっぱり諦めよう。でも知り合いに愚痴るかもしれない。
「じゃあ決まりだな」
「帰ったら知り合いに契約書書いてもらおうか」
「ありがとうございます……」
安堵した様子でへたりと座り込むモモさん、ノワールさんが背中をさすってスライム君が周りを跳ねまわる。
ブルーさんも安心したようにしつつメニューを操作している。
――プレイヤー:ブルーからパーティー参加招待が届きました
目の前に現れるウィンドウに驚きつつ、ブルーさんを見るとにっと人懐っこくも悪戯が成功したような笑みで親指を立てる。
10階まで行くつもりだったしせっかくだから参加してみようか、初パーティー
――パーティーに参加しました
次いで現れるのは自分のHP表示の近くに小さなバーと名前、これがパーティーメンバーのHPでいいのだろう。
一緒にくっついているアイコンは職業だろうか、ブルーさんは剣、モモさんとノワールさんは杖、スライム君は弓だ。
「よーし、じゃあボス戦いってみようぜ」
「行った事なかったよね、モモ」
「え、まだ心の準備が」
「自分も初めてなんで大丈夫ですよ」
「そうそう、俺ら2人でも勝てるから安心して」
そう言って二人は微笑むがこっちは初めてのボスだ、ちょっと緊張する。
それでもまぁ何とかなるのがゲームだ、物は試しだ猫も度胸。
一応ポーションと装備の耐久値も確認してポータルの前に進む。
「それじゃあ、行きますか」
「おー」
「おー」
「お、おー」
――10階層に到達しました、スキル制限数を10に開放します




