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22・ダンジョンで釣りと貝柱

こんなに時間があいてしまったが多分きっとまた次は遠い

めいびー


 ・宝貝 ランクC 

 貝殻の中にアイテムをしまい込む貝、多くは石などであるが時折意外な物をしまい込んでいる事がある


 見た目はホタテの方な二枚貝、大きさもおおよそホタテ。色はピンクや緑、紫に白……とてもカラフルである。

 大量に釣れる、もといこいつしか釣れない湖エリア。表層とか中層を探っても何一つかからないが底を狙うと必ず引っかかる。しかもなんか食いついたように針を挟んでいる状態で釣れるのがシュールだ。しかも時折引っかかった貝に別の貝が食いついていたりもする、シュールだ。

 

 「まぁ、宝と言われれば開けなければなるまいて……」


 ナイフを差し込みグリッと縁取るように切る、テコの原理で開けるのでなく貝柱を切る事を意識するんだっけ?テコでいいんだっけ?

 とりあえず開けられた貝を見て安心する……が中身はそうでなかった。


 魔石 ランクE


 小さく色もなんだかくすんでいる、見覚えある物とは程遠い。ランクもEだしはずれだろう……。


 「何個か開けてみるか……?」


 二つ目にナイフを入れてグリッと切る、取り敢えず同じ開け方で実験する。

 ぱかっと開いた貝に入っているのは魔石(ランクE)……あ、これダメっぽいやつかな……。

 

 開け方なのか他の条件か、わからないが今の自分ができる範囲でこれ以上冒険するのはちょっともったいない。

 現在、貝の数は12。売るにしても鮮度がないから鉱物とかドロップ品と同じように売れるものなのか……。


 「とりあえず、クランハウスに行ってみようかな」


 数少ないフレンドの内シソさんはオフライン、フトンさんはオンラインだが専門外っぽい。料理クランも専門外っぽいが人がいれば何か情報がもらえるかもしれない。

 メニューのクランの項目から『新鮮組』のクランハウスへの転移を選択する。


 ――現在位置での転移はできません


 ああ……そういえばダンジョンでしたね、ここ。

 よし、帰ろう。幸いポータルのすぐ横、移動の手間はない。



 「お邪魔しまーす」


 「こんばんは」

 

 「こんばんはー。あ、ねこさんだ!」


 「おーねこさんにゃー!いらっしゃいニャー」


 共同スペース(仮)にいたのは初めての人が二人に以前焼きそばをいただいた時にいたヌカカメさん。なにやら紙にかき出している様子だ、ミーティングか何かだろうか。

 

 「ちょっと自分じゃ扱えない物があるんですが見てもらえますか?」

 

 「いいニャーちょうどこっちの用事も終わって落ちるまで駄弁ってただけだしニャー」


 「こっちもいいですよー」


 「右に同じく―」


 まずは一安心、ちなみに先に返事をしてくれていたのは赤いマフラーにブラウンの短髪の小人族さん。目の色もすこしくすんだ様な水色で全体的に落ち着いた印象を受けるが先ほどからこちらを見る目は好奇心というか見た目も相まって幼く見える。

 もう一人は犬耳の男性、光沢のあるつややかな銀髪に黄色い目。ぼさぼさっとしている髪型も相まってワイルドな印象だ。足元に立てかけてある分厚い剣は彼の物だろう。頬杖をついてちょっと気だるげだ。


 「これなんですけど……」


 「おー?貝ですかニャー?……宝貝?みた事ないですにゃー」


 「俺は分からん、普通の貝じゃないのか……?」


 「あ、俺の方だとロックピック反応あります」


 どうやら食材とかではないようだが、ロックピック……。なんだっけ、鍵開ける道具だっけ?ナイフとかでなく鍵開け道具使うのか……?



 「宝箱と同じ扱いなわけか」

 

 「多分ね、ねこさんこれ開けてみても?」


 「あ、いいですよ。まだたくさんあるのでどんどんやってください」


 全員が覗き込むなか小人さんが取り出した棒状の道具を両手に持ち貝の隙間に入れて細かく動かしていく。普通の鍵なら開けるための何其れがあるのだろうが貝ってどうやって開けていくのか。


 その作業を十数秒ほど眺めているとカパっと音を立てて貝が開いた、濃いピンクがかった大きな貝柱の上には大き目の魔石。この大きさは以前釣った鯛ほどの物ではないだろうか?


 「あ、Bランク魔石だ」


 「おー」


 「私はこっちのぷりぷりの貝柱が気になるニャー」


 自分で開けた時のしょっぱい結果とは打って変わっていい感じのアイテムが入っているうえに貝柱もある。スキルってすげー。


 そのまま残りの貝も開けてもらった所、魔石にダンジョンでドロップした塵、真珠、なんか古そうなコインが入手できた。魔石と塵が多く出てきて真珠とコインは1つずつだ。ちなみに貝柱はどの貝にも入っていた。


 「じゃあ貝柱はこちらで買い取りするかニャー?」


 「おねがいします。あ、魔石とか開けてくれたお礼に……」


 「あ、ダンボーラーです。えーと本当に貰っても?」


 「俺はどらやきだ、何もしてないのに貰うのはどうかと思うから辞退する」


 「イベント中は何度かお世話になると思うので」


 「じゃあ一個だけ……」


 いつの間にかいなくなっているヌカカメさん、ダンボーラーさんは人見知りなのか気まずそうに此方をちらちら見てくる。どらやきさんは暇そうに机に突っ伏しているが尻尾が振れている。不機嫌というわけではなさそうだが、耳もせわしなく動いていて……。

あれだ、ご飯をおとなしく待つ犬……。


 いや、人様に犬とか言っちゃ失礼だね。うん。

 でも表情とかはとっつきづらそうな雰囲気だけどこうして耳や尻尾を見ると案外素直な子なのかもしれない。


 ……いや、待てよ。尻尾と耳なら俺にもあるじゃないか。しかもそれ以外も色々付属してるじゃあないか。

 自分の無意識のうちに動いていたり感情が出ていたりしないだろうか……。


 「はーい、貝柱焼いてきたにゃー」


 ずぶずぶと思考の沼にはまりかけていると、ヌカカメさんが湯気に立つ実に美味しそうな貝焼きを持ってきた。

 貝殻をそのまま器として焼かれた貝柱の出汁がじゅぶじゅぶと音を立てており、焼きたての芳醇な香りも実に美味しそうである。


 貝柱は手頃な大きさに切られているがそれでも大振りだ。すなわち厚切り貝柱ステーキ状態だ。


 「そいじゃあ、いただきますにゃー」


 「いただきます」


 「いただきます」


 「……いただきます」


 フォークで一欠片口に頬張る、予想通りのプリプリ感とジューシーな肉感が口に広がる。

 肉には代え難い肉感、なんと言えばいいのか……とにかく満足感。ちょっとレアな感じがまたいい塩梅でこれまたグッド。

 味噌貝焼きなる料理があるらしいが、これでしたらさぞ美味しいことだろう。


 味噌はまだ作られてないっぽいがいずれ誰かが作った時には頼んでみたいものだ。


 二欠目に舌鼓を打ちつつ他の面々を見ると皆美味しそうに貝を頬張っている、中でもどらやきさんは夢中で食べている。耳も尻尾も全力で動いている、やはり仕草に出るタイプの子みたいだ。なんとなくほっこりする。

 ダンボーラーさんも美味しそうに食べているがどらやきさんが食べているのをみて嬉しそうにも見える、距離感が親友のそれだ。きっとリアルでも仲の良い二人なのだろう、青春な雰囲気にこれまたほっこりしてしまう。


 そうして貝焼きを堪能して、食べ始めは多く感じた貝柱も今しがた最後の一つを食べ終わってしまった。


 「ふーご馳走様でした」


 「ごちそうさまでした」


 「ごちそうさま……」


 「お粗末様でしたにゃー」


 「いやぁ、美味しかったですね。これ目当てで貝取ってくるのもありですね」


 「今度、仕入れたら連絡してほしい……」


 「じゃあ、フレンド交換しておきますか?」


 メニューからフレンド申請を送る、付近の人物から名前を選択して一括で遅れるというのは中々便利だ。

 ついでなのでヌカカメさんにも送っておく事にした。シソさんの次にお世話になりそうだし、なんだかんだで遭遇率も高いし。


 「わーい、ねこさんとフレンドにゃー」


 「承認しました、じゃあ僕らはこれで。おやすみなさい」


 「おやすみなさい……」


 「おやすみなさい」


 光の粒子になって手を振っていた二人が消える。なるほど、ログアウトするとこういう風に見えるのか。

 俺もそろそろ落ちる時間だがもう少し余韻に浸りたい気分だ、食休み食休み。



 「いやぁ、ねこさんのお陰でいい物知れてよかったにゃー」


 「こちらこそ、ちょうど都合のいいスキル持ちの人がいて助かりました」


 「いいのいいの、こういう時の助け合いこそオンゲーの醍醐味にゃー」


 いつのまにか用意されていたお茶を飲みながらヌカカメさんは笑う、割と掴みにくい感じの印象だったが面倒見の良いタイプなのだろう。

 こうしていつのまにかお茶も用意してくれるし。


 「あの子も楽しんでるみたいだしにゃー」


 「あの子?」


 「どらやきちゃんの事にゃー、あの子人付き合いが苦手でボーラーくらいしか友達いないからにゃー……同性の友達も居ないっぽいし」


 「あ、どらやきさん女性なのですか?」


 「そうにゃー、クール系美人なのも相まって話しかけづらい空気らしいにゃー。ボーラーとも進展してないっぽいし」


 たしかにアバターは男性だったがあんな印象の女性となると和気藹々とした雰囲気にはなりずらい……かな、どちらかと言えばこう王子とか言われて男子よりもバレンタインにチョコもらってしまうタイプ。

 というかダンボーラー君との進展って事は、あの視線はそういうことになるのだろうか……なるのだろう。そうだろう、おじさん応援しちゃう。

 ちょっと今度会うときに変な顔にならないように気をつけなければな。


 「本人は気にしてないっぽいけどやっぱり人付き合いは大切だからにゃー」


 「楽しそうでしたし大丈夫だと思いますけどね」


 初見の印象こそ近寄り難い感じだったが、感情が出てしまっているであろう耳と尻尾もあるしダンボーラー君もいるのだし大丈夫だとは思う。

 話もろくにしてないがそう思えるのだからきっと大丈夫。


 「じゃあ自分も落ちますね」


 「ほーい、おやすみにゃー」


 「おやすみなさい」


 手を振りながらログアウト処理を開始する。ゆっくりと景色が白み、そして黒く沈んでいく。

 明日はまたダンジョン攻略と洒落込もう、レベルも上げて装備もちょっと良くする段取りを始めよう。冒険冒険。

 

ステータス変更なし

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