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1・釣り竿を買おう


 「ここが、始まりの街……」


 チュートリアルを終え、転移石と呼ばれる石でやってきたのは古風なレンガ造りの家々が建ち並ぶ街だった。

 説明では確かこの街は他の街と違ってプレイヤーの行動によって発展していくんだとか、詳しくはチュートリアルで教えてくれなかったのでプレイヤーが探していく物なのだろう。続きは君の手でってやつだ。

 しかし街への貢献は義務ではないらしく、他の街へ行こうが拠点をフィールドに設けようがプレイヤーの自由らしい。

 なんて放任主義なんだ。自由万歳。


 「えーと、マップは……」


 しばらく周りを見渡してからチュートリアルでもらった小さな地図を開いてみる、羊皮紙のごわごわとしたしっかりした手触りなのに描かれる地図はゲームマップのように触って詳細が見れたりする優れものである。

 そして、どうやらこの街は城壁に囲まれた港町の様で現在俺はその中心の通りにいるらしい。

 とりあえずチュートリアル中に考えていたやりたい事を実行するため港へと歩き出す。


 俺がやってみたい事、それはずばり釣りである。よく動画見たりはしていたが一度やってみたかったのだ。道具をそろえたり移動手段だったりなんだかんだとハードルが高く感じてしまい手が出せなかった趣味だ。


 釣り自体はプレイヤーが行える採取などの素材獲得のための手段らしいのだが、中々リアルで本物さながららしい。

 そして釣りの補助をしてくれるというスキルが存在するらしく、チュートリアルでのスキル取得では釣りを真っ先に取得したのだ。


 そうそう。このゲームではプレイヤーは最初に1つ職業スキルを取得し、さらに5つのスキルを取得するのだ。

 チュートリアルで丁寧に説明してくれたよね。簡単なビルド設計の知識とかほかのプレイヤーが取得しているスキルの割合とか。


 そうして説明を聞いた俺は職業を魔術師、さらに体術のスキルを組み合わせた移動砲台型と呼ばれる構成にしてみた。自分のペースでゲームがしたいのでソロが多くなるだろうから機動力は重要だろう。そして魔術師を選んだのはサイコロだ。


 そして先ほど言った釣りのスキルに魔術師に必須レベルだという魔力操作、残りは趣味で採取と発見という構成だ。

 自分でもなんだが見事に普通な構成にできたと思う。ビルド構築は大きく外れなければ変な苦労もなくやりたい事に専念できるだろう。


 そして最後、最初に選んだ職業スキルのレベル上がるとSP(スキルポイント)がもらえ、ある程度自由にスキルが取得できるらしい。そして更に自身の行動でスキルが取得できるようになるのだとか。

 しかもスキルの取得上限は今のところ無し!計画的なプレイが壊滅的だった自分には嬉しい限りだ……でもSPに制限があるから実質限界はあるのか。

 いやでも上限なしって言ってたから何か手段がある……のだろう。



 「そういえば、釣り竿ってどこで買えるんだろか……?」


 港へは近づいているが肝心の道具がない事に気が付いて、咄嗟に近くに見えた店の人に聞くことにした。

 古き良き駅のホームの売店や古い映画にでてくるタバコ屋のようなカウンタータイプのお店だ。後ろにはいろいろな物が吊るされたり並べられたりしているのが見える。

 そしてそのカウンターに肘をついて煙草を吹かすのは若い男性だ、店主だろうか。


 「すいません、釣り竿ってどこで買えますか?」

 「ん?なんだいにいちゃん迷子……ああ、来訪者かい。釣り竿ならここで売ってるよ、見ていくかい?」


 「じゃあお願いします」


 まさかの初手ツモである、来訪者ってプレイヤーの事だろうから彼はNPC……このゲームの住人なのだろう。キャラメイクやチュートリアルでも体感したが自然な対応だ、感動だ。

 

 そして店の店員さんはカウンターの奥の方が短い棒と何やら小さ目の箱を持ってきた、これが釣り竿なのだろうか。

 

 「初めてならこの竿のセットが使いやすいだろう、エサでもルアーでも使えるからそこらへんで釣る分に十分なはずだぜ」


 そう言うと彼は短い棒の先端から棒を伸ばしていく、どうやら入れ子人形方式で竿が畳まれているらしい。途中まで竿が伸びる事を確認すると箱から取り出したリールを取り付けて動くかの確認をしている。

 なるほど、動画では見れない道具のセットはこうして取り付けているのか。

 

 「あーこれはちょっと古いやつだから……そうだな、5000Gのところを3500Gに負けてやるよ。それにルアーとエサ釣り用の仕掛けも付けるぜ?」

 「3500……微妙に足りない……」


 チュートリアルで貰えた金額は2500G、ちょうど1000G足りないのだが…。

 街の外で狩りでもして貯めればいいんじゃないかと普段の俺なら思うだろうが、今の俺は釣り以外はほぼ眼中にない。


 そして俺はある1つの結論に至った。


 「あ、この杖買い取ってもらえません?」


 売れそうな物があれば売ればいいじゃないの精神で取り出したのはチュートリアルで貰った初期装備の杖だ。確か魔術は素手でも扱えたはずだから杖がなくても序盤ならなんとかなるはずだ。

 

 「杖って……品質は良いが、にいちゃんこれは作りかけだぞ」

 「作りかけ?」


 「ああ、俺は本職じゃないんで詳しくは言えんが。杖ってのは先端に宝石なんかを埋め込むんだ、見たところ埋め込む場所はあるみてぇだけどよ……物によってはかなりいい杖になりそうだが。本当に売っちまうのか?」

 「そういわれるともったいない気がしなくもない……けど今は杖よりも竿が……」


 「俺は構わねぇが、ちゃんと整備すればそこそこの値段だからなぁ……700Gってところだな」

 「まだ足りない!あと売れそうなのは……靴くらいかな……」


 「にいちゃん……そこまでして竿が欲しいだなんて、やっぱり来訪者ってのは変わってんだな……」


 どうやらNPCから見て不思議な言動をするプレイヤーは俺以外にもいるらしい、しかし今はあと300Gをどうやって貯めるかが問題だ。

 魚も売ればそこそこの金になるだろうし、そうしたら装備も買えるだろう。


 「あーわかったよ、じゃあその靴も買い取ってやる。ルアーの予備も付けてやる」

 「え、本当ですか!」


 「まったくあんちゃんほどの変わり者は初めてだよ。ほら、これが釣り竿と道具のセットだ」

 「ありがとうございます」


 ・釣り具セット(リール) ランクC- 耐久:5000

 リール竿の釣り具基本セット、ルアーとエサ釣りが可能


 靴と所持金すべてを渡して釣り竿を受け取る、リールや仕掛けも別々に受け取ったがインベントリ内では釣り具セットと纏まっている、これはアイテム枠を圧迫しなさそうで便利かもしれないな。探しやすい使いやすい。


 「なんかあったらまた来てくれや」

 「はーい、ありがとうございましたー」


 こうして、ねんがんのつりぐをてにいれた俺は意気揚々と港までの道を進んでいくのだった。

 靴が無くなった為か足の裏がひんやりとしているが、石畳を歩いている分には痛みなどは感じず、まるで部屋のフローリングを歩いている様な感覚だ。岩場なんかだと痛みを感じるのだろうか……もしそうなら最初に買わないといけないのは靴かもしれないな。



あとがきのスキルとか多分手に負えない未来が見えるので削除、フレーバー的に感じて

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