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15・夜の農場と釣り 


 目を開けると、そこは……夜の農場でした。


 はい、夜ですよ夜。街に入れないんですって、さっき確認してきましたとも。

 農場へ続く小さな門は閉じ切っており小さな張り紙には朝開門の綺麗な印刷されたような文字。更に小さく農場区はレストポイント化していますと言う手書きの文字。

 いたずらという訳ではなさそうだが農場の人が書いてくれたのだろうか。


 「一応用心しておこう、あと外には出ないようにしよう」


 月明りでうっすらと明るい農場を歩いて時間を潰す、平原の遠くではなにやら見たことの無い影が動いているがきっと夜限定とかの敵なのだろうか。

 人がいないのが気になるが大概の人はわざわざ夜に戦闘しないのだろう、又は他のエリアにいるかだろうか。


 「おー水車だ」


 やがて辿り着いたのは農場内を流れる川、そして水車。3mはゆうにあるだろうそれはゆっくりと回っている、水車小屋の中からガタゴトと音が聞こえるので製粉なんかをしているのだろうか。

 ちょっと見てみたいが他人の家に勝手に入るような気分になるのでやめておこう、今度農場の人に許可をもらっておこう。


 「まぁ、できる事は釣りだよね」


 川は大きくはないがこの前遡ったエリアよりもかなり緩やかだし知らない魚も釣れそうだ。

 さて、早速買った装備を試す事にしよう。


 テンカラセット ランクD+ 耐久値5000


 のべ竿に太めの糸、そして毛ばり。そして現れるチュートリアルウィンドウ。


 「えーと、振って投げる……?」


 説明としては回すように振ってその遠心力、鞭のようにして飛ばすらしい。

 まぁやってみれば分かるだろう、周りに障害物もないし練習にはちょうどいいだろう。


 竿で頭の上に円を描く様に振りその勢いで糸を流す、重りとかは無いが糸が太い分しっかりと飛んでくれるようだ。

 何回も竿を振っては感覚を確かめる、こう曲線でつなぎ続ける動き……手首が重要になるのかな。おおよそ狙った位置に投げられるようにもなった。


 「そんじゃ早速」


 毛ばりは川の流れにまかせて自分は特にする事がない、強いて言えば流れに合わせて竿を動かすくらいだ。しかしこれがちょっと難しい。

 糸に余裕はあるものの遅いと毛ばりが動いてしまうし早くても同様で、竿はある程度立てておかなければならないらしい。チュートリアル画面に書いてありました。


 「よっしゃっ」

 

 整備されている川とはいえ流れは一定でなく少し流れの緩やかになる淀みへ流してみたところかかってくれた。

 引きは少し強いが問題ない、竿を上げて一気に手元へ引き寄せる。


 ニジマス ランクD 鮮度100(24時間後に0)

 体色の鮮やかなマス、ムニエルや塩焼きなどで親しまれるポピュラーな魚

 海へ下るものは大きく育つ


 これは俺もみた事のある魚だ、そして調理法も知っている。昔釣り堀で釣って塩焼きで食べた思い出もある魚である。あとホイル焼きとか。


 大きさは25cmほど、早速捌いてインベントリへしまう。

 釣れると楽しいのはもちろん流れの速い場所などでもいけそうだし狙った場所にさえ投げられればルアーよりも簡単に感じる。

 

 「よし二匹目っ」


 慣れてしまえばというかニジマスが群れているのか簡単に釣れる。大きさもいいサイズである。

 

 更に歩いて竿を振っていく、主に流れの巻き返したり淀んでいたりする場所だけを狙ってだけれどニジマスは結構掛かってくれる。

 意外と初心者向きな魚なのかもしれない、街の近くだし農場だし。


 しかしながら初心者向きだろうが入れ食いだろうが釣れれば楽しいのは真理だろう。


 早くも4匹ほど釣れたニジマスはどれも30cmとはいかないが食べ応えがありそうな大きさだ。

 早速焼いて食べてみたいが前回の池のようにいい感じの場所もなく、そもそも人の土地?でのたき火はゲームであっても憚れる。

 なるべく安全でたき火ができるスペース、そんなとても都合のいい場所を探さなければならない。


 「最悪朝まで待って外で焼く事になるのかなぁ」

 

  

 ●


 結論から言おう、そんな場所はあった。

 あったのだ、たき火が出来て安全なスペース。それは薬草などを売った際に農場の人がいた東屋である。


 拡張したのか少し広くなったそこには囲炉裏の様な囲いと敷き詰められた灰、そして『ご自由にお使いください』の文字。


 「うわぁ……」 


 もしかして農場って初心者救済用のスペースなのだろうか、そう思えてくるほどの設備に驚くばかりである。


 とは言っても使うのだけれど、ご自由にって言われたら使うしかない。あと他にたき火なんて出来なさそうだし。


 串は薪用の細長い物を削って使わせてもらい、焚きつけはその削りカスを使う事にした。

 火打石をカチカチと打ち合わせ火花を飛ばす、1回経験しているとはいえまだまだ慣れない。


 5度ほど打ち合わせた所で火が付き燃え広がる、細い枝を少し足し火が強くなってくれば太い物も入れていく。

 そして火が安定するまでの間に下ごしらえだ、内臓は取り除いで洗ってあるので塩を振って串に刺すだけなのだけれど……。


 「遠目ならまぁ大丈夫かなぁ」


 火から遠ざけて串をセットする、ベンチに座りながらふと先日に受け取ったメッセージを思い出しメニューを開く。


 「えーと、シソさんから……」


 内容は現在2番目の街で活動しているので受け取りはギルドハウスか街になるとの事。そして気になる2番目の町。

 まぁ単純にこの街の次の街って事だろうと予測できる。正式な名称はあるのだろうけどプレイヤー間では2番目と呼ばれているのだろう。


 メッセージの最期には街への簡単な地図がSSとなって添付されていた。


 「草原の中をただ歩くだけ……」


 簡素どころか地面に枝で書いた地図ではあったがどうやら迷子になる方が難しいらしい。時間はかかるが楽そうだ。

 まぁちょうどいいから冒険しよう、森の中だけでなく2番目の街から行けるエリアで釣りもいい。


 いつの間にかいい具合に焼けてきた魚に気が付いて急いで火から遠ざける、今回は2匹をインベントリへしまい残りの2匹を食べる事にする。

 塩焼き、たぶんそのうち飽きてしまうかもとか考えてしまうがそれはその時。


 まずは背中を一口、ほくほくとした白身と脂のバランスの良さよ……。この前のマスに比べると身がしっかりしている、その分食べ応えがあるように感じる。

 個人的にはこの前のマスに軍配だが手ごろに手に入るというのは結構重要じゃないだろうか。こうパパっと釣って安全な農場で新鮮なうちに料理して食べられる。


 2匹目を齧りながらあーでもないこーでもないと考える、あービールが欲しい。このゲームには酒の類は……未成年もあるからないか。


 食べられない部分を火にくべて先日集めていたキイチゴを食べ始める。

 1つ2つと食べ始めると中々やめ時がわからないやつだが今回は食べきる予定だから何も問題ない、シソさんからのSSを眺めながらぼんやりと朝からの予定を考える。


 街までの距離はそこまで遠すぎはしないだろう、街に着いても時間はまだまだあるはずだ。そうなるとそこから冒険やらなんやらで色々とできる事とか装備も増えそうだ。


 「兎にも角にも行ってみてからってね」


 夜が明けるまでもう少し、たき火の火を消して出発の準備をしよう。


 

 

 

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