13・新しい装備と魚と
マイクラとモンハンしていたらとても時間が過ぎていたのでゲームは恐ろしいね(言い訳)
「こんにちは」
「まいど」
あれから街へと帰ってきていつもの雑貨屋、店主はちょっと機嫌が良さそうだが何かあったのだろうか。やけにニヤニヤしているというか口角が上がっていて傍から見ても何かあったようにしか見えない。
しかしそこには触れない様にしながら先に荷物の買い取りをお願いしておく、魔石が数個だが属性付きとのことで普通の物よりも高く買ってくれるらしい。機嫌がいいからだろうかね、ちょっと高く買い取ってくれるようだ。
「ほい、これが代金ね……ところであんた、新しい釣り具を入荷したんだか見ていくかい?」
「え、まだポーチ買えてないですよ……」
「まぁまぁ、これもあんたに取っておいてある奴だ。別にすぐに売りさばくつもりは無ぇよ」
「まぁそれなら……?」
なんだか俺用にと言っているが他のプレイヤーにも言ってはいないだろうか……通販の売り文句的な。
そういって店主が取り出したのは1本の筒……もとい釣り竿、今使っている物と同じように畳まれているのだろう。
木製のグリップから先は細めで、更にリールからの糸を通していくガイドもない。遠くは狙えないだろうが川などで使う事の多いのべ竿だろうか。
「これに、この糸と……こいつで釣る」
「これは……毛バリ?」
更に渡されたのは小さな木箱に入った毛バリだった。針自体は大きくなく疑似餌としてみた場合、小さな羽虫に似せているのだろうと考えられる見た目をしている。
茶色の毛をベースとして黒や白、オレンジっぽい色で作られており……なにがモデルだ、これ。
まぁとりあえずしっかり作られた良い品であると思う。
「川ならこれで色々狙えるな、山の方へ出向くならこいつで釣るのも面白いぞ」
「川……山……」
ピンポイントで先ほど出向いた場所である、一種のフラグが成立してたのだろうかね。メタっぽく考えると。
今回釣った魚は1種類だけだがこの装備なら色々釣れるだろう、金策的にもゲーム的にもほしい1品である。
そして提示された値段は決して現段階の財布的に安くはない。破格の12000G、実に財産の7割を超える。
迷う、とても迷う金額だ……。
「ぐっ……ください……」
「まいど」
苦悩の末に、そう考えに考え抜いてお金を出す。これは仕方のない出費なのだ、別に目移りしたとかじゃなくて……金策、そう金策の幅を広げるための先行投資なのだ。
別に衝動買いの言い訳なんじゃない。決して、断じて、絶対に。……でも遠くなったポーチにちょっとだけ悔しい様な寂しい様な。
しかしお金を稼がねば届くものにも届かない、時間的にはそろそろログアウト……までは少し余裕があるな。
まぁ釣りするんですけどね、それしかないからね。お金も稼がねばならないからね。
「まぁ、外には出たくないよね」
いつもの道を通って港へと向かう、ちょっといつもと違う魚が釣れるといいなぁ。
●
はい、やってまいりました。港のはずれの磯のはずれ、正確に言えば街の外……マップ上は街の外らしい。
足場は悪く岩肌がごつごつとした先には森の端が見える、敵が来ない事を祈るばかりではある。来ないと思うけども、なんとなく。
「まずは定番のこれだよね」
探りを入れるために愛用している金属板ルアーを投げる、深そうなのでしっかり沈めてから巻いていく。リズムは早めに急いでいる様にだ。
2投、3投と位置を変えて投げていく。そして4投目でまず1匹釣り上げたのは見慣れない魚。
メバル ランクD 鮮度100(24時間後に0)
目が大きく海底に住む魚、煮つけが美味
大きい物は刺身でも食べることができる
説明通りの目の大きな魚である、カサゴと同じくらい……20cm弱かな。見た目も白いカサゴっぽい感じだ。
煮つけ……ああ、醤油がないといけないのか……あとショウガとか。そもそもゲーム内に存在するのだろうか、いや説明にあるから存在はするのかな。
あーでもないこーでもないと1人で考えながらも2匹目がかかった、釣れたのはいつものスズキ。標準的なサイズである。
「ちょっと近場も狙ってみるかなぁ」
岩場の縁、沿わせるように投げる。深さは深めから探っていく。
なんというか深く見える所を重点的に狙っていく、そこを過ぎたら急いで巻いてまた投げる。
5度目、深場を過ぎ縁から駆けあがる様に急いで巻いていた時にそれは食いついた。浅くなってきており食いついた魚影はしっかりと見えた、黒だ。
別に魚影は黒っぽく見えるだろうとかそんなんじゃない、真っ黒だった。
ぐぐぐっと感じる強い引き、中々大物っぽい感じがするじゃぁないですか。ワクワクが急上昇、絶対に逃がさない。
足場に気を付けながら竿を立てて魚を引き寄せていく、見えてきた魚影はやはり真っ黒である。空目ではなかったのだ。
黒墨マダイ ランク:C- 鮮度100(24時間後に0)
深い夜の様に黒い鱗を持つタイ、身は白い
昔は縁起の悪い魚とされていたが美味である
新しい魚はタイだった、この前のヌシ(仮)もタイだったし……タイ=高級みたいな図式なのだろうか……?
いやでもそれより美味って書いてあるのが気になる、メバルもそうだが美味と書かれていると食べたくなるのが人である。しかたないよね、ね。
「えーと……シソさんはオフライン……」
短絡的……というかフレンドの状況的にシソさんくらいにしか料理の相談できない、うん。刺身で食べられるとかあったし味見させてもらおうかと思ったけどそう上手くはいかないよね。
そしてそのノゾミガタタレターので一応メッセージだけでも残しておくことにする、新しい魚が釣れたと。
明日には返事がくるだろうしその時に時間合わせて釣ればいいかな。
「もう一匹くらい狙ってみたいよね、黒いの」
きっとレアものだろうが狙ってみたいものである。あ、レアだから時間合わせて釣るのは難しいか……?
なせばなると思いながら竿を振り、糸を巻く。結構色々考えながら釣りができるようになったものである。
ちなみにタイ狙いはログアウトの時間も近いのでちょっとした時間調節だったりする。
そうして先ほどと同じように深場から駆けあがる様に巻いて様子をみてみるも、結局釣れたのはメバル、スズキ、アジだけだった。メバルが少し大き目である事以外はゲームとしては平凡な釣果だったと思う。
そして帰りも平和であったが、ちょうど日が水平線に沈んでいくのが見れたので記念にSSを撮る事にした。出来栄えはまぁまぁかな。
こういった絶景を探すプレイもあるそうだがこれは写真のセンスが求められそうだ。俺には無理だね……うん。
「全部で3600Gになるね、こいつは最近良い値で売れるからイロ付けておくよ」
「ありがとうございます、おねがいします」
暗くなり街灯が着いた街を歩き、いつもの食材屋さんでそこそこの値段で売れた魚、もちろんタイも含んでいる。
説明文で売れるか心配であったが最近は味のおかげで人気らしい、タコとかそんな位置づけだろうか。
受け取ったお金にちょっとだけほっこりしながらいつものように路地裏を歩いているとアラームが鳴る、ログアウトの時間である。
ログイン制限に余裕をもってアラームを設定しているので実際にはもう少し遊べるが、そこは自制しないとね。時計を5分早めて5分前行動しようとするあれね、ギリギリに慣れないようにね。
「もうちょっと遊んでいたいってのか久しぶりだなぁ」
背を伸ばしながら視界が白くなる、今度はまた川に行こう。
こうして明日が待ち遠しいのは良い事であるね。
はんだ
種族:ケットシー 職業:魔術師 Lv.3
装備-武器:なし
頭:なし
胴:冒険者のローブ
腰:なし
腕:なし
足:なし
他:快速の腕輪
スキル
<体術 4><釣り 5><魔力操作 on><発見 2><採取+ 2><魔力効率+ on>
<投擲 3>