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9・夜の街と高い場所

わぁいPVもユニークもすごぉい

本当にありがとうございます



 シソさんに魚を渡し、軽く試食もさせてもらい。さらに買取という形で幾何かのお金を手に入れた。だがしかし、目標金額には届かない。

 現在シソさんと別れて街へと戻ってきたのだがまだまだ夜は長いといった時間だ。


 いい加減夜の暇つぶしを探すべきなので、探す事にしよう。暇つぶし。

 夜の街、それも人気のない路地を歩く。何時もの事ではあるが全く人がいないがそれが落ち着く。

 中央の通りは人が集まるせいでなんだか居心地が悪い、やはりこの見た目は目を引くのだろうね。しかたないね。


 それはそれとて今俺が思いつく暇つぶしといったら夜の教会くらいだろう、それも主に外壁だ。今度こそてっぺんへ登ってみたい、そしてSS(スクリーンショット)を撮りたいのだ。

 ちなみにこのゲームにおいてのSSは両手の親指と人差し指で作る長方形、所謂手カメラを作り設定したワードを口にすれば撮れる、さきほど魚のSSを撮っていたシソさんから教えてもらいましたとも。ええ。


 明るく人の気配のない路地を曲がって進んで曲がって進んで数分、教会へとやってきた。しかし何という事か、以前あったはずの足場がない、昨日はあったはずなのに。

 一周回ってみても足場は見えず、目をこすっても頬を抓っても足場は無かった。夢じゃないですよね、ああ、わかるとも。


 一応考えとしては外壁やら屋根やらの修理のための物だったのだろう、現在は修理が終わって撤去された後。これが教会本来の外観なのだろう。


 とは言っても諦める俺じゃない、ちょうど柱の彫刻がいい感じに手がかけられそうだったので早速チャレンジ。腕でなく肩全体を意識して体を持ち上げるイメージ、そうイメージだよ。専門的な知識はよく分からないからね。


 窓枠にも足をかけ、思い出したように爪を壁に引っ掛け登っていく。疲れという物は感じず、ただ興奮というかワクワク感だけを感じている。

 恐怖もなく楽しく登っていく、やっと屋根に手が届き懸垂の要領で体を持ち上げて登り切る。


 数日ぶりに見る夜景、苦労の甲斐あってか昔よりきれいに見えるね。気のせいだろうけど。

 

 「チーズ」


 まずは一枚、手で作った枠の景色は切り取られ一枚の写真に変化する。空中に浮くそれを手に取れば写真は光の粉になって消える、これで保存できているはずである。

 ちなみに撮ったSSを破棄する場合、先ほどの空中に浮いている写真の真ん中をチョキで切ると破棄できるらしい。


 SSも撮り一息ついて次に見あげるのは大きな鐘のついた時計塔、俺はまだ聞いていないが特定の時刻になると鐘が鳴るのだろうか。

 以前登ったルートでもいいが今回は壁面をよく観察して登れそうなルートを探す。


 以前は見落としていたのか、それとも最近追加されたのかゲーム的な設計のためかよく見れば色違いのレンガが飛び出ている場所が連なって見える。これ知ってる登れる奴。

 親切設計に感謝しながら出っ張りに手をかける、なるべく下は見ない、肩を意識する、やればできる、を意識して登り始める。


 一段、二段と登るだけなら順調ではある。ただ問題となったのは出っ張りが途中で別の壁面へと続いている点だった、横に移動するとなると意外と怖い。というか実際怖い。


少し飛び移るように壁面を回り、登ってを2回ほど繰り返してようやく壁の天辺に手が届いた。ぐっと力を入れて胸を乗り上げる、あとはずるようにして体全体を上がらせる。


 「あーやり切った……」


 仰向けで見えるのは夜空ではなく鐘の内側だけれど中々達成感がある、深呼吸をして起き上がる、見えるのは前よりも遠くまで見える街の景色だ。 

 ナイスな達成感だ、やはりゲームだと言ってもやりたい事やってできると嬉しいものである。


 「チーズ」


 そしてまずは一枚、うんうんいい感じ。明かりが多いお陰でなんとも幻想的な街並みが撮れている。

 それにしても景色は良く、春なのか秋なのかは分からないが吹いてくる風は少し涼しい程度でこれで月が綺麗なら晩酌も進むものである。下戸ではあるがね。

 

 ――ちゃり


 達成感に酔っているとふと足元から金属音と明らかにレンガとは違う感触。裸足故に気付けた感触である。

 足を退けて見てみれば見慣れたコインが置いてあった。ゲーム内通貨であるG(ゴールド)である、しかしなぜこんな所に?

  

 ――100G入手しました


 手に取ってみるとコインは光になって消え、アナウンスが流れる。特に意味はない落とし物……だったのだろうか?

 よくゲームでマップの端や見つけにくい位置に置いてあるタイプのアイテムだったりするのだろうか……そしてここ以外もあるのだろうか?


 「とりあえず、登れる場所は登ってみればわかるのかな……」

 

 高い教会からしっかりと見渡して気が付いたのだがこの街にはそこそこ大きな建物が何軒かある、というか目立つ建物と言った方がいいのか。周りと比べて大きさに高さ、さらに屋根の形とわかりやすい。


 時間にも余裕があるだろうしちょっと行ってみよう、街中探検である。


 「でもまずは……」


 降りる所から、よく考えたら降りる事を考えていなかった。最悪飛び降りは考えてみたけどさ……。

 でも前回は落ちても平気だったし、いけるんじゃないのか……むしろいける気がする。

 こういうのは何事も挑戦だと言い聞かせながら一旦深く息を整える。

 

 「……いざ!」


 足を揃えて手を広げて……なんてかっこよくする勇気もないので普通に飛び降りる。ゲームだという認識が恐怖心を薄れさせてくれている……と思うがそれでもかなりへっぴり腰だった事だろう。


 ふわりとした浮遊感、普段感じられない下からの空気の流れ、迫りくる地面。

 時間にすれば数秒だけど意外と長く感じるものである。


 「ぬんっ」


 そして着地、音で表現するならスタッと言えるほど静かなものだ。体勢は蟹股でカッコよさなど皆無だ。

 足の痺れもなくダメージを負った形跡もない、意外と破格の性能であるなわが体は。

 これからの冒険で結構無理な進行も可能かもしれないね。

 

 「さて、じゃあ次なる建物に登ってみますかな」


 方角は覚えている、あとはマップで迷わないようにすればたどり着けるだろう。

 アイテムが落ちているのが理想だけど無かったら無かったで登れたことを喜ぶことにしよう。



 結局あれから建物には登れたもののアイテムの類は落ちておらず朝を迎える事になった。





「さて、頑張って森の奥へいってみよう」

 

 朝、太陽が顔を出し明るくなると門が開く。しかし門の前は出発待ちのプレイヤーが多かったので少し離れた場所で待っているのである。

 大きな門が開くとプレイヤー達が我先にとダッシュしていく、人混みが掃けていくのを眺め終えゆっくりと門を出る。


 朝日の独特の眩しさと春から夏にかけての早朝の涼しさと湿気っぽさ……実に爽やかだ。

 森の入り口まで見渡せる草原ではやはりというか人はいない、皆踏み慣らされた道を進んでいったのか森へ入っていったのかその姿は誰一人見受けられない。

 そういう俺も森へ向かうのだが今回は農場横を流れる川を遡ろうと計画している、もちろん釣りのために。

 いきなり釣るのでなく取りあえず遡ってみる程度だが、穴場っぽい場所を見つけられればなぁと思っていたりする。


 「じゃあ、しゅっぱーつ」







 

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