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8・休日とクランと魚の味

2020/1/9 誤字修正


 休日の昼間にゲーム、それは学生時代以来になるだろうと昼間からのログインです。はんだです。

 しかしログインしてみればゲーム内は運悪く昼から夕方へ差し掛かる頃でした、今日こそは森への奥へと進んでみたかったけどしばらく待つことになりそうです。

 キャンプ用品とかあれば野営したりも出来そうだが無いものは仕方がない。というか敵がいるから野営できないか……。


 ここで一旦ログアウトするか、それともログインしたままにするか悩むがそんな連続ログイン時間を気にするようなプレイでもないし……それに。


 「あ、シソさんログインしてる」


 メールとかの確認ついでに見てみたフレンド欄にはシソさんがオンラインである事を示すアイコンがついている。現在位置などは分からないがとりあえずゲーム内にいるようだ。


 「そうだ、魚渡そう」


 どうせ街でできる事など釣り位、こういう時のために生産スキルで暇をつぶすのも楽しそうではある。例えば自作のルアーとか。

 まぁ、それは追々という事にしよう。


 「えーと、たしかメッセージが送れたはず……」


 開いたままのフレンド欄からフレンドに送れるメッセージを探す。

 すぐに見つけられたインスタントメッセージの白字をタップすればメールの様な入力画面が出現した、宛先はフレンドリストから選択できるようだが現在一人しかないないので迷う事など無く宛先を設定して本文を入力していく。


 「えー……こんにちは、夜に始まりの街にいらっしゃるようでしたら連絡ください。魚を渡せると思います……と」


 送信のボタンを押せば入力画面が折り畳められよく洋画で見るような手紙になって消えていった、ちょっと洒落ている。


 さて、メッセージも送れたしシソさんに渡す魚を工面しよう。日暮れまではまだあるし港で釣れば数匹は確保できるはずだ。

 そうとなれば目指すは港、現在位置は都合よく前回ログアウトした食材屋さんの近く。つまりは港のすぐ傍だ。


 ログイン場所から歩いて2分、もはやいつもの場所といってもいい位に来ている港の先。いや片手で数える程度しか来てないからいつもの場所というのも変かな?


 「よいしょっと」


 まずは堤防に沿ってルアーを泳がせる、これでスズキとかアジとかが狙えるはず。経験則だから微妙に当てにはならなさそうだが。


 最初は早めにリールを巻いてみる、とても急いで逃げる小魚に見えてくれるといい。

 数回投げてみるも反応はなかった…早すぎたのか探る深さの影響なのか。


 しょうがないので今度はいつも通りの速度で巻いてみる事にする。


 「よしっ!」


 早速魚が掛かった、結構魚がいるポイントは固定なのかもしれない。色々試して掛かったポイントとルアー、深さにルアーを動かす速さとか纏めたら釣りが楽になるかなぁ……。でも自分で探る楽しさってあるだろうし、ポイントだけ纏めてみようかなぁ。

 

 考え事をしつつも釣り上げたのは大き目のカサゴ、いつも通りに捌いて二匹目を狙おう。


 「カサゴにスズキ、サバにカツオモドキ…うん、いい感じのサイズが釣れたな」


 あれから記憶を頼りにルアーを投げ、投げては釣ってを繰り返し4種類6匹の魚が釣れた。

 時間はもう日暮れを過ぎ、街灯の何を燃料にしているのかわからない光がいい感じに景色を賑やかしている。

 

 そこでふと防波堤、つまり此方へ歩いてくる人影がある事に気が付く。暗がりの中で見えたその人はつい先ほどメッセージを送ったシソさんである。


 「こんばんは、メッセージ返信したんだけど……その様子だと通知をオンにしてないみたいですね……」

 「こんばんは、通知……ですか?」


 彼女にメッセージの事を言われて慌てて確認すると確かに1件、メッセージが届いていた。そして通知、もしかしてデフォルトだとオフだったりするのだろうか。


 「一応教えますけど、フレンド欄のフレンドの名前をタップして新着メッセージ通知をタップすると設定できますよ」

 「えーと……おお、できた」

 「じゃあ、早速ですけどちょっとついてきて来てくれません?」

 「え、はい。ちょっと待っててくださいね」


 竿を畳んでウィンドウを閉じて、周りに忘れ物がないか確認する。準備ができたことを告げると彼女から半透明のカードが手渡された、見た目はウィンドウと同じ感じの物だ。


 ――クラン『新鮮組』からのゲスト招待状を受け取りました


 システムメッセージと共にカードはサラサラと粉になって消えてしまった、招待状との事だがどういう事であろうか。


 「ちゃんと認識されたみたいですね、じゃあメニューのクランの所から新鮮組を選んでホームへ移動するを選んでください」

 「えーと、これか……な?」


 タップしてみると突然景色がブレて変わる、そこは先ほどまでいた夕暮れの防波堤でなく木造の家屋……いや酒場っぽい?

 樽に丸い板をのせたテーブルに簡素な椅子で質素な印象を受けるが清潔感がある内装である。

 

 そして人、色々な種族……人にエルフに猫耳さん、ずんぐりむっくりした……あれはドワーフだろうか。十人くらいがテーブルを囲いながらもこちらを見ている、そう見ている見られている。


 「え、あ……あの」

 「ちゃんと来れたみたいですね」


 「シソちゃんじゃん、狩りからの帰り?」

 「ちわっす、隣のって噂のねこさんじゃん!シソさんの知り合いだったの!?」

 「こんにゃーっす、そういえばロイさんから野菜預かってるんだけどどこに置けばいいかなぁ?」

 「あーはいはい、狩りの帰りですよー。野菜はマスタールームのボックスにでも放り込んでおけばいいと思うよ。で、この人はゲストです」

 「おー」


 雪崩の様な展開に唖然としているとシソさんに何やら引っ張られる、更に集まる視線。

 もしやこれは何かの顔合わせ?


 「えーと、はんだです。よろしくおねがいします」 

 「よろしくじゃー」  

 「よろしくー!後で肉球触らせてください」

 「よろしくにゃー」


 アットホームな雰囲気に気が緩みながらもとりあえず頭を下げておく、とりあえず事情があんまり分かっていないのでシソさんには説明を求めたい所である。

 その場で聞こうとシソさんを見ればいつの間にか店の奥へと進んでおり扉の前で手招きしている。扉も開いている。


 慌てて扉の方へ小走りで進むとシソさんは奥へと入ってしまった、勝手知らない他人の家……?に緊張しながらも部屋へ入る。

 そこはカントリーなキッチンとでも言う空間だった、レンガ造りのコンロ回りに壁に掛けられているフライパン、そして大きなシンク……のような物。蛇口もある。


 「とりあえず、人がいると話が出来そうにないですからね」

 「ゲストって言ってましたけどここは……?」

 「さっき渡したのはクラン……まぁ同好会ですね、それのゲストキー。そしてここはそのクランの本拠地、クランハウスです」

 「クランハウス……」


 こういったゲームに良くあるプレイヤー同士で作るゲーム内組織……だったはず。つまりこの場所にいる人たちはシソさんのお仲間さんだったのか、なるほど。


 「じゃあ早速ですけど魚を出してもらえます?」

 「はいはい、えーと……」

 

 当初の目的を果たすべくメニューから魚を選んで取り出す、すると光の粒子が集まって魚の形を作り魚となって机の上に出現する。

 一匹だけというわけではないので先ほど釣れたすべての魚を出していく、魚種が被っている物があるが気にしない。


 「中々良いサイズが揃ってるのですね、今回はこれだけです?」

 「そうですね、あの港で釣れる物はこれでほとんど……だと思いますよ」


 うーん、と少し考えるように眉間に軽い皺をよせるとシソさんはスズキを手に取りいつの間にか出していた包丁でおもむろにスズキを捌いていく。

 頭を落とし、尾の方から包丁を入れ慣れた手つきですいすい卸していく。最後はよく見る切り身の形、たしか三枚おろしだったよね。


 「鮮度も良いみたいですし、まずは焼いて食べてみましょう」

 「おー」


 思えばこのゲームで初めての魚の料理である、自分で刺身にでもすればよかったとも思うだろうが醤油がないのでは気が進まないのである。仕方ないのだ。


 そもそも釣り自体は趣味というかアクティビティーとしてやってみたかっただけだったりする。


 シソさんはインベントリではなく何やら部屋に備え付けらしい金属の棚に魚をしまっていく、聞いたところほぼ冷蔵庫らしくギルドハウス内で共用だが生鮮品を長く保存できるらしい。


 そして料理ができるまで出来る事がないので椅子に座らさせてもらい料理が終わるのを待つ。

 じゅわっと熱したフライパンに魚を入れる音が聞こえてきた後に魚の焼けるいい匂いが漂ってきた。鮮度が違うからか、それとも調理がいいのか美味しそう……そう感じる匂いだ。

 魚独特の脂の匂い、肉とは違ったなんというか軽い香ばしさにちょっとだけ期待していると焼きあがったのか皿に簡単に盛り付けて持ってきてくれた。


 「はい、塩だけですけど……おいしそうに焼けましたよ」

 「おー」

 

 見た目は簡素だが前回食べた肉の事もあり期待は高まる、早速渡されたフォークで身をほぐして食べてみる。


 「ん~」


 いい感じに旨い、大の魚好きというわけではない俺からでもこの味には思わずにっこりだ。焼き目が付いた部分も言わずもがな、塩だけとは思えないおいしさである。


 「スズキは夏が旬と言われてるけれど、このゲームに季節ってあるのかしらねぇ……?」

 「季節……ですか、暑いとかは感じないですけどねぇ?」


 お互いにスズキの塩焼きに舌鼓を打ちながら季節について話が広がっていく、どうやらスズキは夏が一番おいしく秋になると味がとても落ちるのだとか。

 さらにサバの旬は秋から冬らしいのだが、脂の乗りが良くどうやらこちらも美味しいだろうとの事。

 結論としては季節は春あたりで固定、食べ物は全て旬の状態かそれに近いだろうと仮説を立てる事になった。検証するかの予定は未定であるが。


 その後、今度はカツオモドキも捌いてもらいお刺身でいただく事にしたのだが。

 ……だが、うん。なんというか、美味しいがやはり気になるというか感じずにはいられない。

 恐らくはシソさんも同じ事を感じているであろう事であろう。


 それは。


 「醤油……ほしいですね」

 「そうですね……」


 先生、お醤油が欲しいです……。あとわさび。


はんだ

種族:ケットシー 職業:魔術師 Lv.3

装備-武器:なし

   頭:なし

   胴:冒険者のローブ

   腰:なし

   腕:なし

足:なし

   他:快速の腕輪

スキル

 <体術 3><釣り 4><魔力操作 on><発見 2><採取+ 2>

 <投擲 2>

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