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二十九話 正体


 作戦会議、といっても簡単に自分たちができることを話すくらいだ。

 それぞれが、戦闘になったときどのように立ち回るのか。

 そういった話も終わり、テントで休むことになる。


 警備は交代で行われる。

 外の警備は三人で行い、残りはテントで仮眠をとる。


 その後、また交代で……といった感じで休憩をとっていく。

 テントは合計三つある。

 啓とアリリアの二人は、同じテントで休むことになった。

 

 その時点でもそれなりに問題はあったが、それでも他の人と一緒になるよりかはマシだった。

 テントの中に入る。

 僅かなわくわくがあった。


 テントで寝るというのは、小さいころに一度経験しただけだった。

 あれは確か、夏休みで川の近くに泊まったんだったか……と啓は昔を懐かしんでいた。

 今はそんな悠長なことを考えているような事態ではなかったが、それでも比較的穏やかだった。


 寝袋が二つおかれたテント内で、すかさずアリリアはそこに入る。

 アリリアはすぐにでも眠るつもりのようだ。


 啓も寝袋に入る。始めは眠れるのか心配だったがl、一度横になると一気に体が重たくなる。

 休日だったとはいえ、夕方にあれだけの戦闘をしたのだ。

 うとうととしていると、そんなぼやけた頭にアリリアの声が響いた。


「エフィ先輩と何かあったんですか?」


 寝ぼけていた頭が一気に覚醒する。

 思わずむせそうになる。


「な、何かってなんだよ?」

「いえ、なんというか。二人きりのあとに。あれですか、もしかしてお互いに付き合うことになったけど、、それを表に出さないように……という配慮ですか? だとしたらばればれですよ?」

「そんなんじゃねぇよ」


 そんなほほえましい理由ではない。

 アリリアにすべて暴露して相談したい気持ちにかられたが、それは学園長との約束を破ることになる。

 結局それ以上言わずにいたtが、アリリアはがまた質問を重ねた。


「じゃあ何があったんですか?」

「……まあ、そのなんだ。うまく連携ができなかったっていうか……」


 適当に誤魔化しておく。

 ちらと隣で横になっているアリリアを見る。

 思わず息を呑む。黙っていれば、本当に彼女は美しい。


「エフィってそのくらいであんなむくれたような態度になりますかね」

「さあ、な」


 ぶっきらぼうにそう答えるしかない。

 今日はやけに食いついてくる。

 これ以上質問されるのも苦しいだけだ。寝たふりでやり過ごそうかとかんがえる。


「まあ、なんでもいいですけど。別にエフィも怒っているってわけじゃないんですよね? ……うーん、なんですかね。こう微妙な心境って感じでしたね」

「……なんだそれ」


 おそらく、アリリアのそのかんがえは間違っている。

 隠し事をしていて、それがばれた。

 エフィはそのことを怒っている。これが一番しっくりくる。

 

 アリリアがそれからもにょもにょと眉間のあたりを動かして、自分のほうを見てくる。

 黙っていれば可愛いのに、と心中でもう一度呟いていると、


「とにかく、なんか気になったんで、それだけですよ」


 アリリアはそう締めくくった。

 途端に面倒くさくなったようで、彼女は目を閉じて眠りにつこうとする。

 その良く分からない終わり方に、啓は苦笑する。


「……おまえって、優しいのか優しくないのかどっちなんだよ?」

「どっちでもないと思いますね。ただ気になったから聞いただけです。それ以上に人に関わるってあります?」

「いや……俺はそれを優しいっていうんだと思うけどな」

「そうですかね? そんじゃおやすみー」


 アリリアはすぐに寝息をたてる。

 就寝に自信のある人がびっくりするほどの早さだ。

 啓も目を閉じると、だんだんと意識が薄れていった。



 〇


 

「ケイお姉様! アリリア! 敵襲です!」


 そんな叫びとともに、テントの中へとヤヤンが駆け込んできて、一瞬で目が覚めた。

 睡眠時間はあまりとっていないような気がしたが、そのおかげもあってすぐに体を起こすことができた。


「うへぇ、あと五分……」

「言っている場合か!」


 アリリアが目をこすりながら伸びを一つする。

 その落ち着き払った様子に、ヤヤンが声をあげる。


「敵は機獣です! さっき通信が入って、エフィのほうにオリウェルが仕掛けてきたみたいです!」

「そうですか。ていうことは、みなさんで対応できますね。私良い夢見ていたんですよ、もう一度眠って続きみたいです」

「そんなの別にいいだろっ、おらさっさと立ち上がれ!」


 寝袋から飛び出した啓がアリリアを引きずり出す。


「もう、ケイ先輩を散々からかい倒していたところなんですよ? あと少しくらい楽しませてくださいよ」

「現実でやればいいじゃないですか、私見たいですし!」


 ヤヤンがそういって、啓がじろっと視線を向ける。


「何余計なこといってんだよ!」

「あっ、そうですね。現実でやればいいじゃありませんか!」

「納得するんじゃねぇよ……」


 啓が額に手をやっていると、アリリアは先ほどとは見違えるほどの速度で準備を追える。

 ともにテントを出ると、まだ戦闘は始まっていなかったが、機獣の姿を遠くに確認することができた。


「とりあえず、戦力を分断しましょうか。ケイ先輩、エフィのほうに迎えますか?」

「……俺でいいのかよ?」


 オリフェルが現れたほうへ、啓かアリリアのどちらか援護に向かうという計画だった。

 機獣も決して多くはない。

 アリリアか啓が残り、魔導士たちと協力すれば決して捌き切れない数ではない。


 ただ、エフィの援護に向かうのが自分でよいのかという疑問がある。

 実力でいいえば、アリリアのほうが上だ。

 実際、オリフェルに一度負けているため、啓が向かうよりかはアリリアが行ったほうが捕らえられる確率があがると思ったのだ。、


「ケイ先輩のほうがいいに決まっているじゃないですか。もしも、エフィ先輩たちがやられていた場合、私一人だと分が悪いです。所詮私は遠距離からの援護に特化していますからね」

「……まあそうだけどな」

「オリフェルの実力がどのくらいかは知らないですけど、魔法を使って攻撃するんですよね? ケイ先輩の魔導人機がとてもとてーも相性いいはずですからね。というわけで、ほら、さっさと言ってください。こっちは死守しておきますんで」


 とんと、彼女に背中をおされ、啓は頷いてからケルを起動する。

 大剣を片手に持って、軽く振る。

 アリリアが同時に自分へと拳銃を向けてくる。

 

 弾丸が啓の大剣にあたる。それを何度か繰り返すと、啓もフルで武装を発動することができた。


「それじゃあ、行ってきてください」

「……援護してくれよな」


 エフィたちが警備をしている遺跡は、ちょうどこちらに向かってきている機獣たちのその先だ。

 アリリアが面倒そうにスナイパーライフルを取り出して、銃口を機獣へと向ける。

 同時に、他の魔導士たちも魔導人機を展開する。


 彼女らの援護を期待しながら、啓は大剣を右手に持って飛び上がる。

 機獣たちも交戦と捕らえたのか、人型のものから背中の部分が動く。

 機械の翼がはえると、彼らは一気に飛び上がる。


 狼のような四足の機獣たちも、走り出しながらその翼を広げる。

 啓へと迫ってきた機獣たちだが、そのいくつかが打ち落とされる。

 アリリアの銃撃だ。彼女の正確無比な一撃は、すべて機獣たちの翼の根元をとらえている。


 間接部分がそれでいかれたようで、再度跳ぶことができなくなっているのもいる。

 迫ってきた敵の攻撃をかわし、大剣を振りぬく。

 一瞬の抵抗のあと、すっと剣が体を切り裂く。

 

 バチバチと音をあげて、機獣が爆発する。

 同時に二体が迫る。それでも、止まらずに進む。

 襲い掛かってきた攻撃を大剣で受け流し、振り向き様に別のを切りつける。

 

 その場で回るようにして剣を戻し、残りの一体へと切りつける。

 爆発した機獣たちをちらと見てから、機獣の群れをぬける。

 底からは魔力を最低限だけの運用につとめて、真っ直ぐに移動する。


 現場は地図で確認することもなく、すぐにわかった。

 青色の魔法陣が展開されていて、暗い中でも目立っている。

 何より、その周囲では魔導士たちが倒れていた。


「大丈夫か!」


 急いで地上に降りて声をかける。

 返事はないが、外傷はない。

 バリアを削られて、そのまま気を失った、というのが正しいか。

 

「……ぼろぼろじゃねぇか」

『オリフェルなら、このくらいはどうにでもなるってわけだな』

「エフィの姿がねぇな。……まさか、遺跡の中か?」

『だろうな』


 急いだほうがよさそうだ。

 啓はすぐに魔法陣へと載る。

 一瞬のうちに体が転移すると、すぐにうめき声が聞こえた。


 魔導士だ。近くに二人が転がって、苦しそうな息をしている。

 まだ息はあるが、彼女らの保護をしている余裕もなかった。

 遺跡内部の造りはいつもと同じだ。


 すべて同じ時代に作られたのだから、似ているのは当然だ。

 何より、作った理由もすべて同じだなのだ。

 すべてはオリフェルを騙すためのものなのだから、同じ造りでもなんら問題はないのだろう。


 細い道は、魔導人機のフルモードでは移動ができない。

 仕方なく一度大剣に戻して、道を走っていく。

 激しい音が届いた。

 

 一気に道を駆け抜けると、ばちばちと明るい色がとびかうのがわかった。

 一つは黄色の雷撃だ。

 もう見慣れた遺跡の広間。


 魔石の明かりがあるにはあるが、とてもではないが補えきれていない薄暗い広間は、二人の女性がぶつかりあっていて、明るい。、

 エフィの表情は険しい。見るからに傷ついている。


 大して、女性――オリフェルの顔は好戦的に歪んでいる。

 まるで、この戦闘を楽しむかのような彼女の姿に、自分とは別種の人間であることが伺える。

 急いで魔導人機を展開した瞬間だった、オリフェルと視線がぶつかる。


 同時に、彼女の顔は憎しみで歪んだ。

 ありったけの魔力をこめたのか、今までの雷撃とは音も威力も違う。

 エフィがその一撃を剣で受けるが、威力を殺しきることはできない。


 大きく彼女の体へとぶち当たり、魔導人機が消失する。


「エフィ!」


 彼女のまとっていたバリアが砕け散り、身を守るものが何もないその体が空を舞う。

 啓はすぐに落下点へとかけこみ、エフィを抱える。

 受け止め、腕の中で荒い呼吸を繰り返しているエフィをみて、かっと頭に熱が集まる。


「……オリフェル!」

「ほう、余の名前をつきとめたか、現代の英雄よ」


 憎憎しげに、彼女が吐き捨てるようにいう。


「……ケイ」

「……エフィ。その……色々と話したいことがあるけどとりあえずは、あいつを倒してからにしてくれないか?」

「……あたしも、よ。だから、絶対倒して――おねえちゃんを助けて。あたしには……できなかった。あたしじゃ無理だった……お願い、ケイ」

「任せろって!」


 啓は大剣を構え、オリフェルをにらみつけた。

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