夕焼け
初投稿です。
Twitterの診断ネタでSSを書きました。
歪んだ心理が好きで自分の趣向の思うままに書いてしまいましたが、ちょっと歪な愛情を感じていただけたらと思います。
気付いた時から僕は君と一緒だった。あまりにも長い間一緒に居たから、必然的に"そんなものなのかな"と思っていたし、君もそうだと思っていた。でも違った。僕の気持ちはずっと一方通行で、この先も君の歩く道が僕の道に繋がる事はない。
どうしてだろう、と考えてはみたけれど何もわからなかった。僕は自然と君を好きになっていたから、どうやって惹かれていったのか、とか、何時から想っていた、とかそういう事は何もわからない。本当に、本当に自然と生まれた時から決まっていた道を、当然の事と歩んでいた。
「ごめん。」
俯く君の姿はとても苦しそうだ。あまりに苦しそうで僕の胸まで締め付けられた。ごめん、と君はもう一度言った。僕の言葉に怯えながらもそれを待っている。
「僕の方こそ、ごめん。」
何に対しての謝罪なのかわからないけれど、それが今君を安心させられる唯一の言葉の様な気がした。予想通り君は顔を上げ、強張った身体から力を抜いた。泣き出しそうな顔を緩ませられる事は出来なかったけれど。
「これからも一緒に出掛けよう?今度はさ、ほら、あそこのカフェに行こうよ」
君は少し恥ずかしそうに、申し訳なさそうに言う。今までと何ら変わりのない愛しさに泣きたくなる。どれだけ愛しても、どれだけ想っても、君は受け取る事は出来ても、僕と同じ気持ちを返してはくれない。これまでも、これからも、ずっと。
「そろそろ帰ろっか。」
茜色に染まった空を写しキラキラと輝く川面を泳いでいた二羽の鳥が飛び立つ。もうすぐ日は暮れ夜がやって来る。朝になって明日が来ても、君とこの橋の上で夕陽を眺めた昨日はもう来ない。
「すぐに追い付くから、先に行ってて。」
僕は君に、躊躇いながら最後の嘘を吐いた。それは君の笑顔の為の嘘。
君は小さく手を上げゆっくりと歩き出す。離れるのは名残惜しいと思った。それでも、一緒には居られない。君が好きになってくれる僕じゃなきゃ、僕の存在に意味はない。君が僕を好きじゃないならば…。
いつの間にか溢れていた涙で足元すら見えなかったが、足取りは確かだった。
──だってもう、仕方がないだろう?
僕は橋の手摺に手を掛け強く地面を蹴った。懐かしい思い出がふと脳裏を過り微笑む。霞む視界の中で茜色だけがはっきりと見えていた。