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◇林檎の王女 共通①


果物の国フルーテアの女王の孫にあたる姉弟は両親を早くに亡くした。


姉弟は女王の兄の息子である伯父が後見人となり、静かな森の小さな屋敷で家令や使用人等と暮らしていた。


姉弟はいつまでも幸せに暮らせることを願っていたが――


『え!?』

『おばあさ……陛下が!?』


女王アプリアの病による退位にて、姉プシケは後を継ぐ事になった。


■■


「はあ……」


女王となる重圧にプシケは浮かない顔でため息ばかりついている。


「どうしたの姉様、もしかしなくても――」


城からプシケとマルベリオを迎える馬車が明日来るからだろう。


「フルーテアの女王になったら毎日果物を食べなくちゃいけないらしいのよ……」

「え、落ち込むとこそこなの?」


驚くマルベリオにプシケ口を尖らせた。


「なによ、林檎ぎらいの私にとっては大問題よ!!」

「たしかに果物の国の次期女王が果物嫌いじゃあね」


マルベリオがうんうんとうなずく。


「魔法学園に通っていたとき、幼稚クラスで知らない男から林檎をもらったんだけれど」

「え、知らない男……前から思ってたけど魔法学園の警備って杜撰だよね?」


たしかにね、とプシケは苦笑いする。


「そういえば女王になったら隣国のヤサヌイから王子を貰うのよね」

「……もしくは僕がヤサヌイの王女と結婚かな」


プシケは部屋に戻り、寝台に乗るも寝付けないまま朝を明かす。


「うわあああああ!!」


そのまま早朝になり森から叫び声が聞こえると、プシケは寝台から飛び起きた。


「なにごと!?」


辺りの木々は薙ぎ倒され、紫の炎の中で佇む男のそばでマルベリオが倒れていた。


「しっかりしてマルベリオ!」

「姉様……きちゃだめだ!」


全身ボロボロの彼はプシケを止める。


「お前!よくもマルベリオに!」


男はプシケなど眼中に無いと云わんばかりの態度で上がる黒煙を見上げる。


「よくも弟を……!」

「この男は人間には治せまい。私が連れていこう」


男は魔法でマルベリオを浮かせるとゲートに放り込んだ。


「待て!私はプシケ・ティーコレット、貴様の名はなんという!?」


男はようやくプシケに気がついたようで、そこで初めて彼女に視線を合わせる。


「ジェッギー。俺はお前たち人間が魔王と呼ぶ存在だ」

「なぜマルベリオを!」


頭に血がのぼるプシケはジェッギーを強く睨む。


「偶々そこに倒れていたからだ。一月もあれば癒えよう――迎えにくるといい」


彼はそう言ってゲートへと消える。


「魔王が迎えに来いと言った。つまりは宣戦布告よね……私は弟を助けに行くわ」


フルーテア王には覚悟のない自分より然るべき者がなればいい。

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