§パン屋の娘 共通①
魔法世界ミーゲンヴェルドは、魔法の無い地球とは対極にある。
魔法の無い人間界では地球にのみ人間は存在しているが、魔法のあるこちらでは幾つもの星に人間が住む。
そして赤、青、黄、緑、白、黒、紫の七つの国には神に人間界の魔力の調和を任された盟約の魔導師という稀有な人間が一人ずつ配置されている。
「テュアビュラ様だ!」
紫の星=プルテノを管理している魔導師は今世紀で唯一の女性。
彼女はプルテノの主星地から外れ、田舎のパン屋に生まれた。
魔導師は神に選ばれるが故に王からも一目置かれ、貴賤無しに民から崇拝されるものだ。
「というのが理想なのだけど、この星の民や貴族は富至上主義者ばかりだからね……」
「王が悪人であればテュアヴュラ様を良く思わないでしょう」
金汚く浅ましい王族や貴族を女官達は蔑んだ。
「でも女王アディーラ様はいい方よ。たとえどんな人でも私は奴より悪人、いえ……個人的に嫌悪する相手はいないわ」
――私が嫌悪する相手とは、己が父の事である。
「明日は七魔の会議ですね」
七年に一度、中心の緑星ジュプスにて魔導師の七名が集うのである。
「会議は初めてで緊張するわ」
「テュアヴュラ様なら大丈夫ですわ」