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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

短編集

怒り

作者: カバン
掲載日:2015/05/19

憎い。

腹の内側を蠢く黒い塊は臓器を埋めつくし、脳を支配する。

指令を送れない脳は困惑し、指導権を闇雲に譲る。

失われた指導権は二度と返ってこない。

黒い塊は体全体を埋めつくし、私は体の所有権を放棄した。

黒い塊は渦を巻き、一寸の光りも残さない。

それを私は憎悪だと知る。

黒い塊は体に収まることをしらず、排出される。

それは穢れとなる。

周りの人にも移りこむ。黒い芽が別の人の腹の内側に芽生える。

本人が気づかぬ内に。

憎しみは蔓延する病原体だ。

私はその病原体の根元なのだろう。

私の憎しみはやがて赤みを帯びた赤黒い色に変化する。

それは怒りなのだろうか。

いや、これは殺意なのだ。

憎悪は熟成して、殺意へと変化した。

殺意は伝染しない。殺意は個体のみだ。自ら進化をとげる。

赤黒い塊は常に体のなかを循環する。

止まらない時間のように駆け巡る。

段々強くなる思いに体が反応する。

アドレナリンは放出し目は血走る。


「殺してやる」


まるで私の体が自身の体ではないように錯覚する。

赤黒い色は鬼を思わせる。

そう。私は鬼だ。

鬼は真っ赤な腕を伸ばし、先端の尖った長方形を手に取る。

鋭利な刃物は殺意の象徴のようだ。

私は憎き獲物を捕らえた。


「逃がさない」


獲物を掴んだその手は強く、表皮を割き、肉が剥き出し、赤い液体をながしだす。

獲物を逃がさないよう卓上に乗せる。

そして、手に持った刃物を構える。


「サヨウナラ」


刃物は獲物の肉体をいとも簡単に切り裂く。

弾ける肉片、赤い渋きがあがり鬼の顔には歪んだ笑みが浮かんだ。

獲物の内側が露になる。

その時私のなかに詰まっていた殺意は溶けて消えていった。

残ったのは悔恨。

服を見ると赤く汚れていた。


「由美ちゃんご飯できた?」


「今トマト切ったところだよ。」


「え!まだトマト切ってたの?」


「だってこの子コロコロ逃げるんだもん」

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― 新着の感想 ―
[一言] いちいちこんな思いをしながら料理をするなんて大変ですね
2015/05/21 08:22 退会済み
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