白蛇の池の村「2」
暗闇の森を歩き続けている
四人は、無言のまま歩き続けていた。
最初のうちだけ笑い話もあったが…
だんだん淀んでくる空気に、恐怖感を抱き始めたのかもしれない…
孝平と茜は、先頭を歩きながらGPS機能の小型なディスプレイの地図を見ながら道なき道を歩きながら茜の知り合いが、ジェイソンに襲われ死ぬ思いをしたという人から地図にマジックでしるされた白蛇の池の村へ行く道のりを歩いていた。
俺と如月先輩は、孝平と茜の背中を見ながら歩いていた。
「陽さん、ごめなさい。子供の遊びのような事に付き合わせてしまって…」
「気にしなくていいよ。何となく興味があったからね。」
「やっぱり一人で来るべきだったかな?」
「女一人では、さすがに危ないよ それに気にしなくていいよ」
「ありがとう 実は、あの夢がどうしても気になって…」
「実は、俺もそれが気になったんだよね…何となく何かの予知…呼ばれているような気がするんだよね。廃村にある何かに…。」
「陽さんも、そう感じますか?」
「なんとなくだけどね。」
「お二人さん!何話してるのかな?」
突然陽気な声が聞こえてくる
茜は、微笑みながら俺と如月先輩に手招きしていた。
「目的に着いたよ!夕美ちゃん」
「本当ですか?」
「まさか、こんな夜の時間に来る事になると思わなかったわ…」
茜は、少し溜め息をつきながら
如月先輩と歩き始める
「あれ、孝平さんは?」
「彼?彼なら先に行ってライトアップを頼んだわよ」
「ライトアップですか?」
「そう、こんな視界が暗いと怪我とかすると危ないから巨大ライトを用意していたのよ…ほらアレ!」
ほんの少し先に明かりが灯るように輝いていた。
遠くに湖面らしきものが見える
いつしか、月は雲に隠れて
辺りは暗闇の世界が広がっていた。
俺は、なぜか違和感を感じていた…
誰かに見られてる感覚を感じ不気味な雰囲気よりもなんとも言えない違和感を感じていた。
しばらくするとレンガ造りの塀が見えてくる恐らく明治時代のものだろうか?
門らしきものが見えてくる門の上に何かのシンボルらしきものが見えた。
「なんのシンボルですかね?」
俺は懐中電灯で、そのシンボルを照らしながらそう言うと茜と如月先輩も見上げる
「なんだろう?この村のシンボルじゃない?家紋じゃなさそうだし…夕美ちゃん分かる?」
「私も分からないです。こんなの見た事ないですよ」
四人は門をくぐるとレンガ造りの街並みが広がっていた。
「廃村っていうよりレトロな村?って感じだね。」
茜は、少し驚くようにそう言うと
俺と如月先輩は、うなずきなから辺りを見回してみると…
少しイメージと違う事に違和感を感じていた。
噂と現実と違う事があるものだ。
現実には、どんなものでも法則がある
誰もが、その法則に従い生きている
自分らしい生き方をしている者も居るだろう
でも…人は、それぞれの法則に従い生きているもので、知らず知らず誰もが自分が思い描く自分になれずに生きている
この人生の物語は、法則に従い進んで行く
未来の何かを築く為?
世界を構築し進化させる為に?
レンガ造りの町並みは、まるで映画のセットのようなものだろうか
誰か居てもおかしくないような雰囲気の中に眩しく輝くライトを持つ孝平の姿が見えた。
「茜さん、凄いライト用意しましたね。」
「そのライト、車のヘッドライトを改造して作ったのよ。陽君の分もあるから夕美ちゃんと探索する時に使うといいよ!私は、孝平君と探索するから」
「そうなんですか?車のヘッドライトを…えっ?俺が如月先輩とですか?」
「そう、陽君と夕美ちゃんとパートナーで宜しくね!!」
茜は、孝平の所に駆けよりタックルする姿が見えた。
俺は、如月先輩と歩きながら二人の所に近づいていく
「陽さん、私少し調べたい事があるんですけど…」
「調べたい事?」
「ええ、この村の情報を集めた時には、レンガ造りだと聞いた事ないので…」
「確かに…もしかすると違う場所とかするかもしれないね。」
「……陽さん、私…少し違和感を感じるんですよ。あの不思議な夢のせいかもしれないけど…」
「先輩…分かった調べるの手伝うよ」
俺は、そう言うと如月先輩は、困惑した表情が消えていつものように穏やかな表情で笑った。
俺もなぜか…このレンガ造りの町のような村に違和感を抱いていた。
もしも、四人がここに来る事が何かの法則によって導かれたのなら
どんな法則と運命が隠されているのだろうか…
この場所に導かれたのなら
どんな意図が隠されているのだろうか?
如月先輩のように俺も不自然な疑問を抱いていたのかもしれない
その不自然な疑問の意味の謎を解けたなら
この奇妙な違和感の意味を知る事ができるのだろうか?
四人は、町の中央の広場の所にある噴水の所に居た。
孝平は、茜と何やら話をしながら地図を見ていた。
茜も孝平もこのレンガ造りの町に違和感を抱いているようだった。
俺は、背負っていたリュックの中身を出してレンガ造りの地面に並べていた。
白蛇の池の村の地図2枚
小型高性能GPS2つ
携帯無線機2つ
小型ナイフ2つ
工具セット2つ
LEDライト2つ
救急箱セットの2つ
車のヘッドライトを改造した巨大ライト2つ
それらを並べて置きながら辺りを見回してみるとレンガ造り町は、不気味なぐらい音がない世界みたいに広がっていた。
如月先輩を見ると噴水の側の小さな壁を見ていた。
「陽?如月先輩のボディーガード頼むよ!でも…変な村?町?と言うべきかな…本当に無人だろうか?」
「ボディーガードか…本当は、孝平の恋を成就させようと思ったんだけど」
俺は、笑いながらそう言うと孝平は、照れながら俺の肩を叩いた。
「余計な気遣い無用だって!陽もジョーダンキツい!でも凄い備品だよな!あのビッグライトには、マジびっくりしたわ」
「おや、何をひそひそ話してる男子諸君!?イヤらしい話かな?」
茜は、俺と孝平を見下ろすようにニヤリとした表情で見ていた。
「違いますよ茜先生!陽と備品が凄いなって話をしてたんですよ」
「本当?私の胸を見てばかりの孝平君が言うと説得力ないな…まぁ、備えあればなんとやらでしょ!!あと武器があればジェイソンが現れても戦えるんだけど…」
「………マジっすか?茜先生!胸見てないですよ俺…」
「でも、茜さん武器ならナイフありますよ」
「それは、護身用じゃなくて緊急の時に使うのよ」
「緊急って?」
「ほら、紐に絡まったり色々とね…ジェイソンに会った時にね。」
「………」
「…茜先生闘う気ですか?…一応武器スッね…このナイフ…レベル1の短剣みたいなものだね。」
「ふふふっ…その時は孝平君も戦うのよ」
茜が不気味に笑いながら如月先輩の所に歩いていく
俺と孝平は、無言のまま茜の後ろ姿を見ていた。
そして、如月先輩は茜の不意の大声に驚くと如月先輩と茜は笑いながらなぜか噴水の小さな壁を見ていた。
「陽…茜先生…なんかムードメーカだよな」
「うむ、確かに…なんか気分的に楽かもしれないな…こんな場所に居る時は」
夜空に浮かぶ月明かりを見上げながら
俺は、ゆっくり瞳を閉じた。
まるで、穏やかな光に照らされているような
神秘的に美しく輝く月を穏やかな心の瞳で見つめられているような気がした。
手を伸ばせば届きそうなぐらい月は優しく輝いていた。
恐らくこの時までは、俺も皆は、これから起きる不可解な出来事の事を予知する事も想像する事もできなかっただろう
あの奇妙な出来事が起きるまでは…。
高鳴る鼓動は激しく高鳴り続ける
走り続ける闇の中は、何も見えないまま
誰かの気配が迫ってくる感覚に違和感と恐怖感を抱きながら
何も分からないまま走り続けていた。
呼吸を求めるように肺が酸素を求めているのが分かるぐらい息苦しく
意識が朦朧として頭の中は真っ白だった。
倒れてしまいそうな猛烈な疲労感を忘れるように走り続けている
ただ何も目的のないまま暗闇を走っていた。
茜と孝平と如月先輩は、どうしたのだろうか?
彼等からうまく逃げる事ができただろうか?
朦朧とした意識の中で視界にはいるものは、草、土、木だけだった。
精一杯走り続ける身体は、悲鳴をあげるように疲労感を感じる
棒状の木の棒を一本拾いながら力一杯に走り続ける
背後から迫る者の息づかいとも言えない獣のような唸り声が迫ってくる
その距離は、だんだんと近づいてくるのを感じていた。
俺は、その背後に迫る者の気配が数歩まで近づいて来る
その瞬間…身体を反転して背後から迫る者と激しくぶつかる衝撃で吹き飛ばされて転がり
力尽きたようにぐったりと倒れたまま
何かにぶつかった方向を見た。
黒い影は、ゆっくり俺の方へ歩いてくる
と…黒い影がゆっくり崩れ落ちるように倒れた…。
先ほど拾った棒状の木が黒い影に刺さっていた。
しばらくの間…沈黙の時間が流れてた…
俺は、ゆっくりと立ち上がり黒い影の近くまで行くと獣のようなどくどくな生臭い異臭が漂っていた。
「人間?ジェイソン?化け物?」
月明かりに照らされた黒い物体は、人らしきものに見えるが…どうしても人間だとは思えないほど、異様な姿形をしていた。
「確かに…ジェイソンだと言われたらそうだと言えそうだな…アイスホッケーのマスクがあれば、なおさらジェイソンだけど…狼男とも言えそうだな…」
黒い物体の顔は、人らしき顔つきだが大きく歪み口から獣のような牙が見える
荒くなっていた呼吸も落ち着き冷静になっていく意識で、この出来事は、現実なのか夢なのか疑いだすように自分自身に問いかけいた。
ゆっくりとその場から離れていく
やがてレンガ造りの異様な町が見えてくる…
レンガ造りの異様な町に、いつの間にか無数のたいまつが燃えているのが見える
広場の噴水の辺りには、2つの黒い物体が見える…
もしかしたら…茜、孝平、如月先輩を探しているのかもしれない。
俺は、疲れ果てた足を引きずるように歩き出す
ほんの二時間前までは、こうなると思わなかっただろう
四人で、あの噴水の側で冗談混じりに雑談をしていたのが過去のように感じる
レンガ造りの異様な町の外れに、小さな小屋があるのが見えた。
その小屋から光が漏れてるのが見える
このまま、あのレンガ造りの町に戻っても
何が起きるか分からないし
先ほどの黒い物体の人間とも獣のような生き物を相手にしたら
とても俺の力では勝ち目がない
おそらく簡単に殺されてしまうだろう
ゆっくりと慎重に気配を消すように、ゆっくりと小屋に向かう
遠くから獣のような雄叫びが聞こえてくる
あの黒い獣ような人のような生き物は、一体なんなんだろうか?
俺は、混乱する思考を落ち落ち着かせるように軽く深呼吸をしながらゆっくりと歩きだす
暗闇の中に何が潜んでいるかが分からない恐怖感に怯えながら
あれからどのぐらいの時間が過ぎただろうか
茜はレンガ造りの建物の窓から外を覗きながら暗闇のレンガ造りの異様な町みを見ていた。
「孝平君、大丈夫?」
「大丈夫ですよ。擦り傷ですから救急箱の中にあるデカイ絆創膏みたいので応急処置したから茜先生は大丈夫?」
「私は、大丈夫だけどアレはなんだったのだろうか?」
「ジェイソンでは?」
「孝平君、そんなの映画の話で冗談で言ってただけよ…」
茜は、かなり真剣な顔をしながらスマートフォンを片手に画面を見ると
「電波ゼロだわ警察も呼べないわね。」
「マジっすか?!」
孝平もポケットからスマートフォンを取りだし画面を見る
「俺のも電波なしですね。」
「無線機で陽君にさっきの事を伝えとかないと危ないわね」
茜は、小さなカバンから高性能小型無線機を取り出す
「携帯の電波も入らないのに使えるんですか?」
「米軍使用の無線機よ電波が悪くても 半径300メートルなら問題なく繋がるわよ」
「そうなんですか?」
「携帯の電波とは違うからね」
ほんの一時間ぐらい前だった
俺と茜は、陽と如月先輩と別れて
レンガ造りの異様な雰囲気の町を探索するように歩きながら
レンガ造りの町並みをデジカメに撮りながら
茜と俺は、とりあえず心霊スポット探索だから心霊ぽい場所を探索する事にした。
白蛇の池の村の地図があるが、このレンガ造りの町になる前の村の見取り図だから
どこに何があるのか…何の建物なのか分からないまま歩いていると
「誰か居ますか??」
茜は、大声で言うのに俺は、少しびっくりしながら辺りを見回してみると人の気配もなく返答もないままだった。
「どうしたんですか?茜先生?」
「誰か居るのかなと思って、誰か居ますか?って叫んだだけよ」
「そうなんだ、いきなり大声で叫ぶからびっくりしましたよ…茜先生!」
「でも、こんな建物が並んでいたら誰か住んでいてもおかしくないと思わない?」
「確かに…」
「それに、この場所には浮浪者も住んでいるという噂があるからね。」
「マジっすか?幽霊より怖そうですね。」
「まぁ、幽霊より人間の方が怖いとよく言うからね。」
茜は、懐中電灯でレンガ造りの町を照らしながらあっちこっち見回して見ていた。
不意に、立ち止まりレンガ造りの建物の壁に書かれている看板のようなものを見ている
「孝平君、ここ病院じゃない?」
「えっ?病院ですか?確かに…他の建物より大きいですね。」
「木の看板に日向治療所って書いてるわ」
「日向治療所ですか…なんか古そうな看板ですが、でも…廃業町だと思えないぐらいなんか綺麗な町ですよね…。」
「孝平君もそう思ったの?私もそんな違和感を感じて 誰か居ますかって?叫んだのよ」
「茜先生じゃなくても俺でも そう叫んだかも」
俺と茜は、日向治療所の建物の中に入っていく
急激に気温が下がったように寒気を感じていた。
茜先輩は、先ほどのおどけた表情もなく少し真剣な表情で建物の中を懐中電灯で照しながら見回していた。
「確かに…昔の病院だね…最先端の医療器具のない時代の病院ってなんか雑然としたものなのね。」
「なんか病院みたいな感じしないですね。」
「でも、ほらアレを見たら病院って感じしない?」
茜は、木の机の上を懐中電灯の明かりで照らすと
そこには、聴診器が置かれていた。
カルテらしきものも見える…
一冊の古びれた大学ノートを手に取る茜は、ページを捲るとどうやら医師の日記帳らしきものだと孝平に語りかけながらノートに書かれた文字を見ると日向一郎っと書かれていた。
「日記帳か…懐かしい私も高校の頃書いてたな日記」
「そうなんですか?俺は、小学校の夏休みの宿題でしか書いた事ないな…」
微かに物音がしたような気がしてドアの向こうの廊下を懐中電灯で照らして見てみると無機質な廊下の向こうの白い扉が見えた。
「風の音かな?」
「どうしたの?孝平君?」
「いや…なんか物音がしたような気がして…」
「もしかしてポルターガイスト?この日記後で夕美ちゃんと陽君と合流してから読んでみるわ」
「えっ?勝手に持って行ったら呪われるんじゃないですか?真夜中ノートを返せとか怪奇現象が起きたりしたらどうするんですか?」
「大丈夫!大丈夫!後で、ちゃんと返すから」
「それならいいと思うけど……。」