白蛇の池の村「11」
何気ない優しさが大切な事かもしれない
消えない優しさを抱き締めながら生きる心
言葉は大切だけど言葉よりも大切なものもある
幻は、いつか現実なる事もあるのかもしれない
そんな、不確かな願いなのかもしれない
それを知りながら人は願い続ける
叶わない願いを
もう、記憶にないあの日の思い出を求めているのかもしれない
あの何気ない優しさを求めて
輝く池の中央まで水面の上を歩く女性は、白く輝く丸い発光体に触れると輝きを増していく
池の側の祭壇の前に立つ男性は、祭壇に魔方陣のような模様を装飾に触れていた。
男性は、微かに何かを囁くと…何かの気配を感じて振り向くと手招きをした。
「さぁ、終わりにしよう…愚かな罪を裁く者よ」
男性は、暗闇の道の向こうの青年を見つめていた。
「私は、ただ逢いたかったのかもしれない…あの無邪気微笑みに…もう一度だけ…私の罪を許してくれ…。」
男性の姿は、だんだん変異していく
獣のような唸り声をあげはじめて鋭い瞳で青年を睨み付ける。
「呪われた血は、永遠をくれるが…幸せはくれない…だから私は、その呪われた血の宿命を変えてみせる…」
やがて、静寂の夜空に獣のような激しい雄叫びが響き渡る
黒い化け物の姿に変貌した男性は、静かに瞳を閉じると古めかしい日本刀を握り閉め
1つの命の光を見つめていた。
「私は、間違っていた…だから…狂った運命の歯車を一つにするだけ…それだけが…せめての二人への償いになるだろう」
黒い化け物は、ゆっくりと身構えると
青年は、鋭い瞳で黒い化け物を見つめていた。
「あなたは、許される事はない」
青年は、そう呟くと刃を光が走る
刃と刃がぶつかる音が響く
鋭い瞳の視線がぶつかる度に、鳴り響く刃のぶつかり合う音は、まるで戒めを背負う者の泣き声のように
いつか、幸せになれると思いながら
ほんの少しだけ愛に身を寄せていたのかもしれない
報われない認められない愛だと二人は知っていた。
でも、止めない心を互いに抱き締めていたのかもしれない
そんな二人の姿を見て…許せなかったのかもしれない…私は…。
大切に思う気持ちは、彼とは違っていたのかもしれない…彼は娘を愛していた。
私も大きな愛で娘を愛するように大切に思っていた…。
やがて激しい怒りのような激情は、全てを壊していく
心も身体も全てを
獣のような激しい雄叫び響き渡る異様な村で、獣が娘と若者を守るように我々の歩みの邪魔をした。
私は、怒りに我を忘れていた…。
私は、獣の首を全て切り落とし村を炎で焼き払う
全てが嘘だったように、大きな悲しみを隠すように
私は、若者の首を斬り落とすと娘は泣いた。
私に罵声をあげながら自害する我が子の姿を見て私は、大きな過ちを犯した事に気づいたのは、惨状の後だった。
私は、何故か娘の亡骸と青年の亡骸を池の奥底に沈めた。
獣の頭部を全てを池に沈めた後
私は、多くの兵と無言のまま暗い森を歩いていた。
まるで、無機質なほど戦意もなく心は脱け殻のように…。
やがて…声がしたような気がして振り返ると
暗闇の森の向こうに炎が見える
村は、3日3晩燃え続けた…やがて山一つ炎で丸焼けになった。
私は、それから眠れない日々が続いていた。
夢には、亡き娘が現れては私に囁き続けていた。
とても悲しい声で、何かの歌を歌っていた。
私は、彼と娘の愛を認めなかった…。
娘が不幸に苦しむのが分かっていたからかもしれない…。
私の気持ちは、娘に伝わる事はないだろう
私が、なぜ彼を拒絶して娘と引き離そうとしたのかを…。




