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一日目 Ⅱ 未来からの訪問者

やっと、やっと出せた……!

頑張って書きました。

「お願いだ、俺と一緒に、時空犯罪者と戦ってくれ」


「時空…、犯罪者……?」


キリトは男の言ったことを繰り返す。

…長い沈黙が走る。


「ちょっと、二、三個、…質問していいっすか?」


キリトとは険悪な表情を浮かべ、男を見つめる。


「何だ、言ってみろ」


キリトは男に、もう少しでキスしそうなくらい詰め寄り、ドスのきいた声で質問を投げかける。


「一つ、お前は誰だ?

一つ、時空犯罪者って何だ?自作小説のネタか?

一つ、仮にそんな物があったとして、なんで俺が力を貸さなきゃいけないんだ?

一つ、なんで人ん家に上がりこんで飯食ってんだ?

一つ、なんで夏なのにロングコート着てんだ?

一つ、何どさくさまぎれに人の義母親ははおや口説こうとしてんだぁ!?」


キリトの質問に、男はしれっとした顔で答える。


「おーいキリトくーん、質問二、三個じゃなくて五、六個あるじゃないか、それに後半は関係ない事っぽいけど気のせいかなー?あともう口説いたぞ」


「何だとコラァ!シバくぞ!!張っ倒すぞ!!!」


怒りのあまり男の襟首を掴んだキリトに男は逆ギレ。


「いや俺一応命の恩人だぞ!少しは敬意を払え!お前こそシバくぞ!!張っ倒すぞ!!!」


「そうよキリト、私の夫候補でもあるのよ?」


「もうそこまで話が進んでるの!?」


男の隣で突っ立っていたアリアからの突然の爆弾発言にキリトは露骨に驚く。

するとそんなキリトの姿を見たアリアが突然吹き出した。


「?」


「うふっ、冗談よ、」


「……ハイッ?」


眼を丸くするキリトの前で、男とアリアは吹き出しそうになるのを必死で堪え、


「やっぱ青臭いガキをからかうのは楽しいですねぇ、アリアさん」


「そうですねぇ、『キリト』さん」


と言葉を交わす。


畜生、グルだったか……。今度、絶対二人ともシバく……!


そう心に誓ったキリト。


ちょっと待て。


「か、かあさん、今、この変体ひとの事、『キリト』って……」


キリトは男の襟首を離し、アリアに問いかける。


「オイ、変体とは何だ変体とは。何も変なことしてねーぞ」


「そうよ、この変体ひとの名前も、あなたと同じ『キリト』よ」


「だから変体ってどう言うイミだ!」


「そ、そうなんだ……」


「無視するな!!」


キリトは改めて、目の前で騒いでる、自分と同じ名前を持つ変体おとこ、『キリト』に汚い雑巾を見るような視線を投げ掛けた。

キリトは心の中で、(あ〜イヤだな〜こんなのと一緒の名前だなんて。生きる気が滅入めいるわ〜)などといった、自分の思いつくかぎりの罵詈雑言ばりぞうごんを男に向かって投げかけまくる。

心の中だから大丈夫。キリトはそう思っているようだが、その言葉が全部口からだだ漏れしていることを、キリトはまだ知らない……。


男は、どいつもこいつも、とぶつぶつ言いながら、キリトのほうに顔を向ける。


「なっ、何だよ……?」


「お前は今日、学校の帰り道に、夏休みをどう過ごすか考えていた」


「ッ!」


突然の男の言葉に、キリトは身体を硬直させる。


「貯めていた小遣いで、友達とカラオケに行く、新しいヘッドフォンと、もうすぐ発売される『青空のルーチェ』のコミックを買おうと思っていた。違うか?」


「ど、どうしてそれを……」


「決まってるだろ、お前と俺が、『同じ』だからだよ」


男は震えているキリトの頬を撫で、耳元で呟く。


「俺はお前らで言う、『十年後の未来から来た神田キリト』だ。つまり、俺は大人になったお前だ」


「ッ!!」


キリトは眼を見開く。男はキリトから顔を遠ざけ、キリトに微笑みかける。


「始めまして、だな。十年前の俺、」


会えて嬉しいよ、そう言おうとした刹那、男のほおに、キリトの右フックが炸裂。男は真横に吹っ飛び、顔からフローリングの床に激突した。


かあさん、縄とケータイ持って来て。コイツ縛って精神科の病院に連れてこう」


「アイサーッ!」


キリトにそう指令されたアリアは、すぐに縄の準備を始める。


「いやちょっと待て!俺の言ってる事は本当だっ!」


喚き始めた男にキリトは、


「え?逝ってることは本当だ?」


と、オウム返しをして面白がる。


「ふざけてんじゃねえっ!何が『逝く』だ!!ていうかアリア!お前には事情話しただろ!ノらねーでフォローしろフォロー!!」


「えっ?説明されてんのかあさん?」


「うん、重度の精神異常だって」


「んなわけあるかっ!!!」


男の悲鳴にも似た声を聞き、アリアとキリトはふざけるのを止めた。


「ハァ、ハァ。……畜生ちくしょう、大人をバカにしやがって……!」


アリアとキリトは、すぐに二人同時に、


「「テヘッ、」」


「テヘッ、じゃねえよボケッ!!………ハァ、とりあえず、事情を話させろ……」



             +        +        +



「タイムマシンだ」


「タイムマシン?」


改めて、椅子に座りコーヒーを飲んでいたキリトは、『キリト』の言葉に疑問に思い、同じ言葉を繰り返す。

隣でアリアはつまらなそうに爪の手入れを行っており、時折そのゴミをキリトに吹き掛け、キリトが嫌そうな顔をして払い落とすのを楽しそうに見ていた。

そんなアリアのことを気にも止めず、男は淡々と説明を続ける。


「ああ、今から約十年後。つまり俺の住む未来世界では、発達した科学技術によって、様々な発明品が造られた」


「で、その中の一つが、タイムマシンって訳だね?」


「まぁ、そんな所だ」


そう言って『キリト』は、カップに容れられたコーヒーを一気に飲み干す。


「だが、そんな世紀の大発明も、使い方を間違えれば、災厄さいやくの兵器に成り下がるんだがな……」


男の呆れたような物言いに、キリトはすかさず反応する。


「え?それってまさか……」


「あぁ、その『まさか』だよ……」


キリトは絶句して、椅子を蹴倒して立ち上がる。


「そっ、そんな……!まさか、タイムマシンを使って………!期間限定発売の高級苺パフェを買い占めているなんて!!宝くじで三億円当てまくってるなんて!!な、なんて最悪なことをしてるんだ未来人はっ!!!」


未来人おれたちがそんなセコい真似するかっ!!!」


「あぐわっ!!」


キリトの発言に思いっきりキレた男は、キリトに鉄拳制裁。

キリトは頭を押さえて辺りを転げ回った。


「はぁ、はぁ。……ひ、人がこんなに真剣な話をしてるのに、……なんてヤツだ……」


隣でアリアが、それが貴方キリトでーす、と元気に叫んだが、それを男は黙殺し、コーヒーのお代わりを容れ、椅子に座り直す。


「そんな小さいことだったら、こんな真剣に話す訳ないだろう。もっとデカイ事だよ、これは」


「イテテ……。もっと、デカイ?」


どうにか復活したキリトが、ゆっくりとコーヒーを飲んでいる男に聞き返す。

ふぅ、と一息ついた男は、また神妙しんみょう面持おももちで話し込んだ。


「近年、タイムマシンを悪用して、有るべき未来を、災厄の未来に変えようとするテロリストが現れてな。そいつらが各時代で過激な行動を起こしている」


「未来を変えるため、過去の時代に?」


「ああ。過去を変えたら、おのずと未来も変わる。ヤツらは自分達にとって都合のいい未来に変えるため、過去コッチにやって来る」


未来の兵器(オモチャ)を、引っ提げてな……。男はそう言ってコーヒーをすすった。


「それで一度未来はヤバイ事になってな、もうそんな事が起きないようにって事で、時空を越えて悪事を働くテロリストをとっ捕まえる警察組織、『Chronosクロノス』が設立されたんだ。で、俺もそこに所属しててな、その仕事の都合で、お前らん所に来たんだ」


自称未来人の男の、なんとも軽い説明を聞き終えたキリトは、突然ふっ、と鼻で笑い、男を盛大にほくそ笑んだ。


「未来から来たテロリスト『Chronosクロノス』?ハッ!!そんな夢物語、誰が信じるって言うのさ?あんた本当に病院行った方がいいんじゃないか?」


「はーい、私信じたわよぉ!」


何故ナゼにっ!!?」


アリアの発言にまたまた飛び上がるキリト。一応、嘘かどうか聞いてみる―キリトは嘘であって欲しい―と、本当よ~、と返され二度びっくり。なぜかと聞くと、あんなの見せられたらね~、と言って、アリアは両手を横に広げた。


……一体、何を見せられたんだ?


「……さてと、大人の話を信じない頭の固いどこぞのガキにも、証拠ってのを見せてやろうじゃねーか!」


椅子から立ち上がりながらそう言った男に、どこぞの頭の固いガキ、じゃなくてキリトが噛み付く。


「誰が『頭の固いガキ』だ!……って、え?……証拠?」


「おう!俺が十年後の未来のキリトっていう証拠をなッ!」


そしてはしゃいだような声で証拠っ、証拠っ、と口ずさむ何故かノリノリのアリアと、よしっ、やるか、と袖を捲って意気込んだ男を見て、テンションについて行けないキリトはどんな物かと尋ねる。


「決まってんだろぉ!未来の発明と言えばタイムマ――――」


刹那、激しい爆発音。甲高かんだかく響く硝子ガラスの割れる音。爆風。


その巨大な衝撃を受け、キリトは頭を腕で覆い隠し、悲鳴を上げて床に身を伏せる。

不運な事にアリアは爆風に吹き飛ばされ、


「ひでぶっ!!」


頭を撃って失神してしまった。


「ああ母さん!……何やってんだか」


しばらくして爆風が収まり、辺りが土煙に覆われる。


「な、何だよ……、今の………!」


キリトが掠れた声でそう呟くと、呑気のんき煙草タバコに火を付けていた男が真顔で、


「あ~、スマン。ホントはお前にはタイムマシンを見せてやりたかったんだが……。チッ、もう奴ら見つかったか」


と吐き捨てる。


「えっ?『奴ら』って?」


そう男に問いかけたキリトは、窓の向こうにたたずむ『奴ら』の姿をを目視した。

『奴ら』は全員が迷彩柄のズボンやベストをきており、銃器で武装し、銃口は勿論もちろんこちらに向けている。

風貌ふうぼうはデパートを襲ったスキンヘッドと似ていたためか、キリトはデパートでの惨劇さんげきを思い出して吐き気をもよおしてしまった。


「よく見えねーが、数は三百ってトコか。全員持ってる武器からして下っ端の下っ端、デパートで暴れた雑魚ザコおんなじ奴らだな……」


アイツ雑魚ザコだったんだ......。


それを聞いてキリトの吐き気が治まった。

何でだろう、……一種の安心感?


「一応、ここ結界バリア展開して正解だったな。爆風防げないけど。まあロケット弾(あんな物)ブチ込まれたらひとたまりもねーし、それを防げたからよしとするか」


結界バリア……。よくよく見ると、家の周りには薄く、蒼い光を放ったドーム状の何かが張り巡らされていた。

それが男の言ってた結界バリアなのだろう。おかげで家には傷一つついていない。爆風で家の中メチャクチャだけど。


「……すっげぇ」


キリトは不覚にも感嘆してしまった。

隣で男が煙草タバコ片手に、すごいだろ、と自慢げに答える。


「これが未来の技術だ。これで俺の事も信じてくれるな?」


キリトはえっ、いやっ、と狼狽し、しばらくして、


「いいやまだだ!これ位では信じきれるわけないだろっ!!」


と言って、


「頭の固いガキだなー。十年前むかしの俺はこんな奴だったのか」


と呆れられた。そして、


「まあいいや。それなら後でタイムマシン見せてやる」


「ホントかッ!!」


「ああ、そーでもしねーとお前信じねーだろ?」


と優男風な顔をして答えた。

ちなみに心の中では、(うわめっちゃはしゃいでやがるよ、やっぱガキだなぁ)と思っているのだが、例によって例のごとく、口からダダ漏れしている事を本人は知らない……。


「とりあえずアリアさんつれて下がってろ。え?失神してる?それなら引っ張るなり何なりしろ」


男はキリトに指示を飛ばし、腰のベルトから手の平サイズの棒状の機械を取り出した。


「(これって確か……)お、お前はどうするんだよ!」


「ああ、決まってんだろ。仕事だよ仕事。テロリスト共ぶっ潰すんだよ」


「一人でか!?アイツら、銃持ってんだぞ!!」


「あんな古臭い銃で、俺は殺せねーよ。いいから隠れてろ」


そう言って男はリビングを通って外に出ると、家を取り囲むテロリストに向かって歩き出した。


「見てろや、キリト様の勇姿をよ……」


男は手に持つ機械の電源スイッチをいれる。すると機械から棒状の長い光線が放出し、刀の様な物を造り出した。


「来いよ、雑魚ざこ共ッ!!」

かんそーお待ちしてまーす!

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