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新世紀二〇年

 日本がこの世界に移転して二〇年、当初、予想することすらできなかったが、この世界は一部を除いてそれなりに安定しているといえただろう。少なくとも、日本系国家(ここでは日本から移民して誕生した各国をいう)は程度の差こそあれ、いずれも先進国たりえた。さらに、経済的にもかなり発展しているといえただろう。また、各国とも多産政策を打ち出し、移転直後とは人口も大きく変わっていた。日本についてはたびたび触れているので今回は割愛する。


 まず、フィリピンであるが、人口が四〇〇万人に増え、地下資源の輸出により、移転前のそれよりも安定し、地域格差が少ない、つまり、貧困の格差が少なかったのである。少なくとも、日本の地方県ほどにあり、各種日本製品、自動車や家電製品が多少時間がかかるとはいえ、入手可能であった。政治的には共和制をとり、国家元首は大統領であり、任期は四年、二期以上継続しての就任は許されない。


 インドネシア大陸には二つの国家が誕生している。北部にブラジル系を中心としたブラジル共和国、南部に東南アジア系を中心としたマラヤ連邦共和国である。ブラジルでは珈琲など農作物の栽培、香辛料の輸出により外貨を得ている。人口は八〇〇万人、フィリピンと同程度である。マラヤは一時期、内部紛争が多発するも、現在ではそういった混乱はない。香辛料や固有の農産物などによって外貨を得ている。人口は九〇〇万人に達していた。経済的には内紛が続いたことで、ブラジルやフィリピンよりも若干劣る。それでも、移転前に比べれば、遥かに安定していたといえるだろう。


 ソロモン諸島はどうかといえば、英連邦共和国となっていた。移転により、王国制から共和制に移行せざるを得なかった。国土はソロモン諸島とニューギニア島、その他オセニア圏の島嶼が含まれる。人口は約三〇〇万人、この中には欧州西部の各国人が含まれている。産業基盤はライセンス料と木材などであるが、限りなく日本に近いといえる環境であった。その他に、インド洋の島嶼、さらにセイロン島の領有を宣言している。近年はローレシアと日本との中継貿易が活発化しているといえた。


 一時、アメリカ合衆国とされたグアム島であるが、現在ではその中の一州とされ、北米の開発に傾注している。とはいえ、北米がまだ開発途上であるため、首都機能は当分の間、グアムに置かれるようである。人口は約一六〇〇万人を数える。経済的には日本が製造する武器弾薬のライセンス料が主であったが、近年は北米からの資源も外貨獲得に当てられるようになってきたといえる。移転前と同じく、移民国家であり、在日外国人だけではなく、この世界に現れた各国、シナーイ大陸各国からの移民も多い。


 在日フランス人は少なかったが、フランス共和国がニューカレドニアに誕生している。また、フレンチポリネシアなどの領土も持つ。人口は五〇万人を数えるが、その多くはロンデリアに在住していたフローレンスというよく似た国家との連合によるものと思われた。話す言葉も似ており、ほぼフランス語といえるものであったようだ。観光や農産物の輸出によって外貨を獲得している。


 シナーイ大陸に目を向けてみよう。まず、朝鮮民国である。人口は約三〇〇万人を数える。交通網の整備に若干の遅れがあるものの、順調に発展していたといえる。地下資源の輸出が唯一の外貨獲得の手段であるが、近年は工業育成の兆しをみせていた。その多くは軽工業であったが、日本への輸出が強化されているようである。珍しく、ほぼ同一民族だけの国家であるといえ、移民は少ない。


 中華民国においては、朝鮮民国に比べると遅れが目立ち始めている。当初の計画とは異なり、若干、無計画的になりつつあるようだ。その最大の原因ともいえるのが、シナーイ民国からの移民を多数受け入れたことにあったかもしれない。人口は約一八〇〇万人を数えているが、そのうちの半数が移民であった。農作物の輸出が外貨獲得の手段であったが、近年は工業化を重視しており、軽工業の充実振りが目立つようである。


 ウェーダン共和国は人口七〇〇〇万人、日本が最初に出会った隣国であり、多くの面で日本の影響を受けているといえた。農業や地下資源の輸出によって外貨を得ている。大陸横断鉄道の起点でもあり、日本人が多く進出している。近年、日本からの工場進出も増え、工業化が進んでいた。未だ、都市部と地方では経済格差が存在するが、自家用車や自動二輪など浸透しつつある。移転前の一九六〇年代初期の日本程度までになっているといえた。


 その隣国たるキリール国は、ウェーダン以上の発展振りであったといえるだろう。人口は約八〇〇〇万人を数え、経済的には貴金属系レアメタル資源の輸出、農産物などが主な外獲得手段であった。交通網の整備に力をいれており、陸路の整備振りは波実来に近いといえるまでになっていた。また、教育にも熱心で、瑠都瑠伊へは多くの留学生を派遣し、国内四箇所に高等教育機関である大学を有する。日本本土へも毎年数人ほどを留学させていた。日本で言えば、一九六〇年代中頃までになっていたといわれる。


 ウゼル国はウェーダンに近い発展振りを見せていた。内陸国家であるがゆえに、若干の発展の遅れは目立つものの、それでも日本との接触後は急激な勢いで発展していた。人口は約七〇〇〇万人を数え、地下資源や農産物で外貨の獲得をしていた。瑠都瑠伊よりも波実来への指向が目立つといえた。地理的に見て、大陸横断鉄道の中継地として発展していた。日本からの技術導入に積極的で、いくつかの企業の誘致に成功している。


 カザル王国は内陸部にあるが故に、その発展振りはかなり緩やかであった。それでも、日本と接触したころに比べれば、遥かに発展していたといえるだろう。人口は約五〇〇〇万人を数える。農産物、特に小麦が主力であるが、近年はいくつかの新しい作物の栽培に取り組んでいるようだ。また、都市部では自家用車、特に大小トラックの普及が進んでいる。


 トルシャール国については、一時期、日本と距離を置く政策を取っていたが故に、発展振りは遅れていたといえる。それでも、政権交代後は積極的に日本、というよりも瑠都瑠伊との交流が進み、域内開発も進んでいるとされる。人口は二〇〇〇万人を数える。水産物やその加工品の輸出が外貨獲得の方法であった。交通網の整備が急ピッチで進められており、徐々に隣国であるウゼルに追いつきつつあった。


 シナ民国はウェーダンの隣国であるが、シナーイ帝国から独立を勝ち得て興った。今のところ、シナーイ帝国支配時期に荒れた国土整備が進められている状態であった。それでも、日本からの支援を受け、順調に発展しつつあった。人口は約五〇〇〇万人を数えるが、まだ国内が安定化しているとはいいがたい状態であった。それでも、日本には畜産物の輸出により、発展の兆しをみせている。ウェーダンとは国交を回復し、友好条約をも締結している。国内交通網の整備を急いでいるといえた。


 シナーイ民国はシナーイ帝国を滅ぼして興った国である。長い間の帝国支配により、国内は荒れているといえた。それでも、人口は近隣でもっとも多く、二億人は超えているとされるが、実態は不明だといえる。今は国内整備が急がれているが、国土があまりにも広いため、東南部を除いてあまり進んでいない状態であった。西部では旧帝国派との紛争が起きているが、徐々に追い出しつつあるといえた。


 トルトイであるが、結局のところ、トルシャールとは袂を分かつこととなった。現在のトルシャールとは友好的であるが、それ以前の関係の疎遠さを引きずっているといえた。人口は約一〇〇〇万人を数えるが、この中にはトルシャールからの移民も含まれている。隣接国家が瑠都瑠伊であるため、その発展振りは目を見張るものがあった。地下資源、特にウラン鉱脈と精製プラント、処理工場を持つことで、十分な外貨を獲得している。近年、瑠都瑠伊との統合などの意見が多く出ているとされる。


 ナトル共和国はトルシャールに取り残されたグルシャ人の国家として興ったが、その多くは開発が進んでいないといえた。というのも、あえてナトル国内開発というよりも、瑠都瑠伊での出稼ぎという住民が多いからである。瑠都瑠伊側も問題視しており、ナトル国土開発を進めている。人口は一二〇〇万人であるが、瑠都瑠伊に二〇〇万人が非合法で入国しているとも言われるため、実態は不明である。水産物やその加工品、農産物の輸出が外貨獲得の手段とされている。本家のグルシャとは関係改善が進んでいるものの、完全ではないようである。


 この世界に出現した国家の中で、日本ともっとも友好的なのがローレシアであっただろう。もっとも、ローレシア側としては日本というよりも瑠都瑠伊との関係であったとされる。それが現れているのが、日本には領事館しか置かなかったが、瑠都瑠伊には大使館をおいていることにあった。一般国民も、日本に出かけるよりも、瑠都瑠伊に出かけるほうが多いといえた。対イスパイア戦争が終結した今はよりその傾向が強いといえた。もっとも、瑠都瑠伊を訪れる目的はほとんどが留学であったとされる。人口は二億人を超え、瑠都瑠伊からの工業機械導入も進み、国内産業の再編が進められているといえた。特に瑠都瑠伊をあっといわせたのが、規格の変更であった。それまでの工業規格を日本工業規格へとあっさり変更してしまったのである。もっとも、移転前とはあまりにも環境が違いすぎるため、それまでの工業規格ではこの世界で取り残される可能性が高いという要因もあっただろうと思われた。


加筆修正が一向に進みません。文筆家向いてないと実感させられます。気長にやっていきます。

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