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北米統一なる

 北米大陸は前にも述べたように、太平洋側にアメリカ合衆国からの移民が、大西洋側にアメリカ連合国の移民と分かれていた。人口比率で見れば、一〇〇万人と七〇万人と合衆国側が多い。しかし、生粋の合衆国人はといえば、僅かに一五万人、後はアーメリアからの移民やシナーイ大陸北部各国からの移民であり、思想の若干の違いも表面化していたといえるだろう。しかし、対イスパイア戦後、ロンデリアは北米に関して政治的介入を強化することとなった。


 もちろん、これには理由があって、北米大陸には各種の地下資源が豊富に存在すると考えていたからだといわれる。しかし、双方の移転前には存在しなかった巨大な湖が存在し、各種資源の存在が危ぶまれてもいた。さらに、アメリカ連合国移民の内政にすら干渉し始めたことで、双方が対立、関係が悪化することとなった。そして、合衆国側も移民の間での思想の若干の相違があり、いわば、人種だけではなく、思想においても坩堝と化していたといえた。


 そういう状況で、北米統一会議なるものが再三開催されていたようで、三大勢力、合衆国系、アーメリア国系、連合国系との間で合議が進めれていた。そうして、民意による新憲法の制定と連邦制国家の制定がなされることとなった。基本的にはアメリカ合衆国憲法に準じるものであり、国策もそれに準じるが、細かな点で若干の違いを見せることとなった。これは、合衆国系とアーメリア系が思想的に非常に似通っていたという点もあり、双方あわせた勢力が連合国系を凌いでいたという理由もある。さらに、連合国系がロンデリアの介入を嫌ったことで双方の歩み寄りが加速することとなった。


 そうして、新世紀二〇年一月一〇日、アメリカ合衆国として再出発することとなった。そして、改めて独立がうたわれ、ロンデリアの介入を拒否することとなった。合衆国の勢力が少なかったため、合議による成立となったが、これが逆の勢力図であれば、合衆国は武力による統一を図ったかもしれない。それが、日本の考えであったといえるだろう。これに対して、ロンデリアは武力による介入を宣言するも、日本の、独立国に対する介入は許されず、日本は独立を守るために支援するだろう、との宣言により、それを撤回することとなった。ロンデリアとしても、日本の技術力の高さをイスパイア占領で改めて知らされており、日本との関係悪化は得策ではない、と考えたからであろうと思われた。


 こうして、日本はこれまでのグアム島に対する支援集中を改め、北米大陸へと支援を広げることとなった。アメリカ合衆国では、首都を太平洋側のサンフランシスコに置くこととされ、政治の中枢が置かれることとなった。これは、日本よりも遠い大西洋側に置くよりも、近い太平洋側に置く方がよいとされたのが最大の理由であったかもしれない。移転前とは異なり、欧州よりもアジアのほうが人口が多く、天然資源も入手しやすいという理由があったのも影響していたといえる。


 しかし、これによってロンデリアとアメリカとの関係は悪化することとなった。これまでアメリカ連合国移民にしてきた支援を打ち切り、あまつさえ、代償の支払いを要求してきたのである。こうして、ローレシアやイスパイアに対する政策により、ロンデリア王国という国家の実情が改めて日本に認知されることとなったといえる。日本においては、移転前の英国とアメリカ合衆国との関係と同様に考えていたといえるが、彼らの世界ではアメリカ連合との関係は対等かロンデリアの方が若干強いものであったようである。


 そういうこともあって、日本は改めて調査することとなったのである。アメリカ連合国系住民や瑞穂国人に対する聞き取り調査という形で行われた。瑞穂国側は当初はあまり情報を発することはなかったが、アメリカ合衆国として北米が統一されたことにより、それまで封印していたと思われる情報を瑠地瑠伊を通じて日本に公開することとなった。


 そうした結果、ロンデリア王国の移転前の状況は日本の予想していたよりも遥かに強く、ほぼ世界の半分を実効的に支配していたことが判明した。つまり、ロンデリアのそれは一九世紀の英国のそれと同様であったわけで、対抗できる勢力は存在せず、彼らに敵対していた勢力はすべてが、滅ぼされるか、その支配下に置かれていたようであった。ちなみに、瑞穂国の場合、直接の支配は何とか免れていたようであるが、政治的にも経済的にもかなりの影響力があったという。


 瑞穂国がここまで情報を公開したということは、かの国も脱ロンデリアを決意したものと思われた。移転前のマルタ島とは比較にならない大きさで、人口も少ないため、これまでロンデリアの影響を逃れることを考えられなかったと思われていた。しかし、オーレリアの一件から日本、というよりも瑠都瑠伊の対応をみて、脱ロンデリアを決意したもののようであった。そうして、こちらは瑠都瑠伊からの支援が増大、瑞穂国もこれまで以上に支援を受け入れることとなった。ちなみに、これまで瑠都瑠伊が支援していたものの、その多くがロンデリアに流れていたともいわれる。


 とにかく、対ロンデリア関係という負の面はあったものの、北米大陸北部は改めてアメリカ合衆国として、日本や日本からの移民国家に承認されることとなり、経済的にも関係を深めることとなった。これまで、日本からあまり導入されなかった製造系機械が多数北米に流れることとなった。これまでは日本の近隣であるグアム島がアメリカの中心であったため、製造系機械の導入よりも、製品の購入がのほうが多かったといえる。北米大陸にも若干流れていたが、それとて、それほどたいしたものではなかったようである。


 以後、北米大陸北部の開発は急ピッチで進むこととなる。航空機の便数も増加し、北太平洋航路は船舶量が増大することとなった。移民はあまりなかったため、人口の増加はそう望めなかったが、確実に増加傾向にあった。それは多産制度もあるが、戦乱で内政が荒れているイスパイアからの移民を多量に受け入れているという理由もあった。また、原住民やシナーイ民国などからも少ないが移民を受け入れている。それらを知った日本は、やはり、アメリカは移民国家である、ということを再認識したといえる。


 もっとも、日本としても手放しで喜べるものではないことを知るのは瑠都瑠伊の人間たちであったかもしれない。これまで、アメリカは沖縄や佐世保、横須賀といったかっての在日米軍基地に保存されていたであろう、あるいは艦艇に積載されていたであろう核兵器の存在がそれであった。つまり、ロシアでは確認されていない以上、この世界で核兵器を所有するのはアメリカだけであろうと思われている。可能性としては、ロンデリアとオーレリアも考えられるが、現状では確認されていない以上、取れる対応を取るしかないという状況だろう。つまり、アメリカの脅威に屈しないためにも対応する装備が必要であるといえるのである。


 とはいうものの、これまで衝突が起こる可能性のあった地域が減るのは歓迎すべきことであったといえるだろう。少なくとも、両米国間で戦争が発生した場合、直接間接問わず、日本とロンデリアとの激突が避けられないものであったからである。少なくとも、太平洋は安全と考える日本にとって、太平洋にロンデリアの戦闘艦が入ることは避けたいところであった。ちなみに、ロンデリアの潜水艦については、これまで確認されているだけで、四度あったといわれる。一度はパナマ海峡で、一度はハワイ諸島近海、一度は北米太平洋岸、そして南米大陸太平洋岸である。これらすべてが、日本およびアメリカの原子力潜水艦によって確認されたものであった。


 この時点で、日米の原子力潜水艦は極秘中の極秘であり、これまでのところ、日米英仏にしか知られていないはずであった。そう、中華民国や大韓民国、ロンデリア、ローレシアにすら知られていないものであった。原子力機関については情報は制限していない、その理由は原子力発電所にあった、ため知られて入るが、その製造ノウハウも今のところ、日本からの移民国家以外には知られていないといえた。もっとも、新たに出現したオーレリアについては何の情報も得られていなかった。


 いずれにしろ、太平洋では今しばらく安全が確認されたといえるだろう。将来においては不明であるが、この時点ではそれなりの努力がなされているといえた。そう、ベーネラに進出した理由もそこにあったといえるだろう。大西洋から太平洋に入るにはベーネラをひいてはパナマ海峡を通過しなければならないからである。イスパイアにおいては太平洋側にも港湾はあるものの、先の戦いにおいて潜水艦は制限しているから当面はその心配はないものと思われていた。


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